01
やっと、手に入れた。
愛しい貴方を。
「…ふふふ」
私の想い人であるヤマトは、冷静沈着、物腰が穏やかで誰にでも隔たりなく優しく接する。
そんな貴方の想い人、それは私。
実は相思相愛な二人。
だけど、私はそれだけじゃ物足りないの。
貴方の全てが欲しい。
きっと全てを捧げてくれるだろうけど、貴方が私から一生離れないという確信が欲しい。
だから私はある計画を立てた。
「今日はよろしくね、名無しさん」
「うん、こちらこそ」
「さ、行こうか!」
タイミング良くヤマトとのツーマンセル。
移動中、彼に気付かれないようにチャクラを練り印を結ぶ。
「…水遁・霧隠れの術 」
この日の為に練習した術。
チャクラを大量に練り込み、霧で視界を塞ぐ。
ここからが本番。
素早く影分身を作り、さらに変化をして見知らぬ忍に装い…殺気を放ちヤマトを目掛けて太刀を振り上げた。
案の定、濃霧で反応が遅れる貴方。
「ヤマト!!」
「…なっ…!」
私は大袈裟に声を上げて、彼の前へと飛び出る。
大きな黒目がさらに見開いていた。
分身の自分が、背中から腰辺りを切りつける。
「あぁぁぁぁっ!!!」
「…!!!うぁぁぁっ、木遁っっ!!!」
血飛沫と悲鳴がその場に舞う。
彼が覚悟していた事が、まさか私が受け止めるなんて思いもしなかったんだろう。
力が入らずに倒れる身体を受け止め、大声を上げて木遁で分身の私を瞬殺。
あぁ、ゾクゾクする。
私の為に我を見失う、その行動…
もっともっと、私だけを見て…私だけを思えば良い。
貴方の中には、私だけが存在すればいいんだ。
***
ヤマトの魘された声で意識が覚醒する。
「…ヤマト…?」
「…!」
私の姿を見て、狼狽える彼の姿。
そして壊れ物を扱うように頬に震えながら触れる手。
「…目、覚めたんだね…」
「っ、名無しさん…済まない…ボクが!!」
「謝らないで…ヤマトが無事なら…それでいい…」
「っ!ボク何かの為に君がそこまでする価値なんてないだろうっ…!?」
涙を流して懺悔される。
懺悔なんて、正直いらないの。
そんな事を思う私は、残酷なのか。
「…価値…ならあるよ、だって…私、ヤマトが大切で…死んで欲しくなかったの…」
「それなら…ボクだって…!!ボクだって、君が大切で…名無しさんを守りたかったんだ!」
「そっか…じゃあ…これからずっと私を守ってくれる?」
「ボクでいいなら…ずっと、一生君を守るさ」
「…いいの?こんな怪我して…もしかしたら…もう、前みたいに動けないかも知れないんだよ…?」
急所を避けたとはいえ、ある程度の重症だ。
下手をすれば忍生命が脅かされるかもしれなかった。
だけど、それでもいいの…
貴方の全てを手にいれられるなら。
「名無しさん、今となってはだけど…ボクは君がずっと好きだった。だからこうやって君の傍にいれる事がとても幸せなんだよ。例えもう忍が出来なくなっても…名無しさんは名無しさんだろう?何も問題ないさ」
「っ、嬉しい…一生…離れないでね…?」
「もちろんさ…」
「キス、して欲しい…な」
「喜んで」
やっと、やっと、手に入れた。
これで、貴方の全てを手に入れた。
愛する気持ちも、身体も…苦悩する罪の意識も。
永遠に私だけを見てればいいの。
命ある限り、いえ…例え死んでしまった後も。
狂っていようが、残酷であろうが関係ない。
私は全てを手に入れ、そして私に全てを捧げる貴方がいるだけの事なんだから。
罪の意識に苛まれ、私を一生愛すと事を誓った彼がいただけの事。
そう、ただそれだけ…。
fin
20150628
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