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ボクの本心-キモチ-


物腰が穏やかで、人当たりもいい。
だけど何を考えてるか分からないと、よく言われる。
 
そりゃそうさ、自分の本心なんてそう簡単に晒すわけがない。
 
でも、君に対しては別なんだけどなぁ…
 
 
「ね、名無しさん」
「えっ、なに?」
 
 
非番の日。
ボクの家で、お互いに別々の本を読みながらまったりとした時間を過ごす。
 
真剣に手元の本を読む名無しさん。
何の本を読んでいるのかと思い覗き込んでみると、忍術に関する書物だった。
休みの日まで、そんなの読んで…真面目なんだから。
 
少しだけ、おかしくなって笑いながら声を掛けた。
 
 
「いや、なんでもない」
「なんでもないのに呼んだの?」
「うん、ダメだった?」
「ダメじゃないけど…」
 

特に意味もなく声をかけられた事に、不思議な顔をする名無しさん。
 
構ってほしいわけじゃなかったけど、愛しい人の声を聞きたくなるのは至って普通の事だと思う。
 

「ダメじゃないけど…なに?」
「んーヤマトってなにを考えてるのか分かりにくいなって」
「そう?」
「うん」

 
平静を保っているけど、実は内心驚いている。
だってボクは、君に対してはストレートに気持ちを表現しているつもりだったから。

 
「…例えば、どんなところが?」
「どんなって、今みたいに意味もなく呼ぶところとか」
「イヤだったの?」
「もう、どうしてそう捉えるの…?ダメじゃないし、イヤでもないよ」
 
 
あぁ、分かった。
表現をしてるつもりでも、それが伝わりきってなかった訳だ。
つまり、あと一歩必要なんだね。
 
そうと分かれば…
 
 
「あのね、ボクは君の声が聞きたかったんだ」
「声…?」
「うん、君の声はとても心地よくて安らぐ。だからもっと聞きたいし、もっとボクの名前を呼んで欲しいんだ」
「…ヤマト」
「もっと、もっと呼んで」
「じゃあ…ヤマトも私の名前呼んで?」
「名無しさん…ボクの名無しさん」

 
頬に手を添えて微笑む。
そのまま耳元へ顔を近づけて愛しい人の名前を囁く、すると真っ赤になる耳。
 
可愛い。
 
少し意地悪をしたくなって、耳たぶを甘噛みをした。ピクっと軽く唸る身体。
そんな姿を見せられると…止まらなくなっちゃうよ。
 

「っ…ん」
「ベッドいこっか?」
「昼間からっ…しちゃうの…」
「昼間であろうが関係ないよ…名無しさんの甘い声聞きたくなったし」
「ばかっ」
 

憎まれ口でさえ愛しい。
 
ボクがここまで感情を晒すのは君だけだから…
 
 
「ボクのキモチ、受け取って」
 
 
fin
2015/7/20




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