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今は、まだ


「イルカさんって、子供が好きですよね」
「え?」
 
 
そう言われてなんて、なんて事ない普段の日常を振り返る。
毎朝そこそこ早めに起床して食事を取り、身嗜みを整えて必要な書類を持ち家を出る。そして元気いっぱいの子供、オレの生徒達と共に一日の大半を過ごし帰宅。
帰ってからは、明日に必要な書類や授業内容の確認などなど。
 
 
「違いました?」
「…まぁ、アカデミーの教師として毎日奮闘しているのは事実ですね」
「それ、子供が好きじゃなきゃ出来ないお仕事だと思いますよ」
 
 
くすくすと口元に手を添えて微笑むのは、オレの恋人である名無しさん。別にバカにされた訳じゃないのに何故かモヤっとしたものを感じてしまい、彼女の腕を掴み自分の胸元へと引き寄せた。
唐突の出来事に目を見開き驚く名無しさん。
 
 
「確かにオレは子供が好きです、アカデミーの教師が天職だとも思っていますよ」
「はい…っと、それと、この行動にはなにか意味があるんですか…っ」
「ええ、もちろん大いにありますよ?だってオレの一番好きな人は貴女なんだから」
「っ…ん」
 
 
子供が好きなのは認める。
だけど、それはあくまで仕事上…
 
オレが本気で愛して病まないのは、名無しさんだけ。
 
腕の中で頬を染めて慌てふためく彼女の唇を奪う。自分と全く違う柔らかいソレを啄ばみ舌先で軽く舐めあげた後、唇を離した。
 
 
「オレの気持ち、伝わりました?」
「じゅ、じゅうぶん過ぎるほどに…!」
「でも、まだ伝えきれてないので…今日は名無しさんさんにオレの気持ちや想いをたくさん渡しますので受け止めて下さいね」
 
 
意図を察し、ますます顔が紅に染まる彼女を抱きかかえ寝室へと移動する。
 
 
「折角の非番、何処かに出掛けようかと思ってましたが、たまにはこういうのもありですよね…?」
「ぅ…程々にお願いします…」
 
 
拒否をせずに受け止めてくれる名無しさんさん。
 
いつか、彼女の子供が欲しい…と、心の奥底で思うが。
 
 
「今はまだ、貴女と二人で過ごしたいから…」
「イルカさん?」
「いえ、なんでも」
 
 
それはまだまだ先のお話。
 
 
fin




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