あいつとは省吾の事だ。省吾は私の幼なじみで、気付けば今までずっと一緒にいた。
省吾は頼りない奴だと思ってたけど、実は意外にもそうでもないのかもしれない。
側にいすぎて気付かなかっただけなのかもしれない。
何故なら、スミレさんを助けたのは省吾だから。
ツブレビルに真夜中忍び込もうと誘ったのは私だが、あの薄暗いビルの中で一人になってみて、省吾の存在がいかに大きいものかが分かった。
怪物になり理性を失い暴走するスミレさんに、私はパニックに陥っていた。それを省吾は冷静な判断で回避しただけでなく、彼女を人間の姿に戻すという事までやってのけた。
もし、あの時省吾を誘わなかったら、私はどうなっていたかも分からない。
それ以来だ、省吾が気になりだしたのは。
……いや、気になっていたのは前からだ。だって私は省吾の事が昔から好きだったから。
小学生の時に出会ってからずっと、好きだった。
でもツブレビルでの事件以来、もっと、今まで以上に気になっていった。そして一旦気になりだしたら、気付けばそれはもう抑え切れない程の想いになっていた。
省吾は今でも私の側にいてくれる。今までと同じように。
そう、今までと同じように、だ。
あの事件の後も特に変わる事なく私に接してくれている。まあ、私も表には出さないように意識しているから、特別省吾への態度が変化した訳ではないけれど、正直……省吾は私の事をどう思っているのだろう?
今までと同じように、幼なじみのクラスメイトとしてしか見てくれてないのだろうか? それとも、私のように何かしらの想いを内に押し込めて平静を装っているのだろうか?
それはもう本人じゃないと分からない事だ。私では分かり得る事はできない。
私は省吾じゃないから。
でも、知りたい。省吾の気持ちが。省吾が私の事をどう想っているかを。
いつか私の気持ちがあいつに届き、そして省吾の私への想いが私と同じものである事を願う。
そんな想いを募らせ、私は今を生きている。
End
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みすずさん独白です。
何となく連載小説(10話完結の方)の1話目とリンクしてるというか、みすずサイドの話という感じになりました。
書いてて、お互い同じ事考えてんだろうなーって思ったわけです。
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