夕焼け
学校帰り、省吾の家に寄っていたみすずは、遅くなってきたので帰宅する。いつものように、家まで自分を送ってくれる省吾がありがたい。
「いつも悪いわね」
「うん、いいよ」
夏ももうすぐ終わりだけど、まだ日は明るい方だ。
太陽が落ちそうで、しかしまだ落ちきっていない空を見ながら歩く二人。
「夕日落ちそう」
みすずは沈む夕日を見ながらそう言う。
「暗くならない内に帰った方がいいよ」
「大丈夫よ、近いし。それにあんたが送ってくれるから」
そう口にするみすずの表情は嬉しそうだ。自分を心配してくれる省吾が、彼女には嬉しくてたまらない。
「一人は心配だからね」
省吾が言うと、みすずは彼の手を取り、そして自分の指を絡める。
「手、繋いでいい?」
拒まれることなく絡み合った手はもう繋いでいるようなものだが、一応省吾に尋ねてみた。
「うん」
頷き、省吾は彼女の手を改めて握った。
夕日に染められながら仲良く歩く二人の姿は、端からも微笑ましく見える。
「ねえ」
「ん?」
「私が省吾の家に行った帰りはまた送って」
「うん、いいよ」
「いつも送ってくれる?」
「うん」
みすずが聞くと、省吾は優しく微笑みながら言葉を返した。
省吾の言葉に、自分は愛されてるなと感じ、嬉しくてみすずは自然と顔が綻んでしまう。
「ありがと」
そして、お礼を一言。
いつも隣にいてくれて、自分に優しくしてくれる省吾。
彼女はこうして二人で夕日の中歩くのが好きだ。
だから、省吾の性格上自分を送ってくれるのは分かっているけれど、つい尋ねてしまう。
これからも、ずっと。自分を送ってくれるが日が続く事を願って。
今日も一ヶ月後も一年後もその先もずっと。
End
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乙女なみすずさんとジェントルメンな省吾君のお話(笑)。
夕焼けの時間帯の話を書くと、どうもしんみりした内容になっちゃいます。
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