プレゼント


みすずはもうすぐ訪れる省吾の誕生日の為に、プレゼントを買いにショッピングモールへと足を運んでいた。

「何がいいかな…?」

何を買うべきか考えながら歩くみすず。
省吾は本が好きだから、新しい本でも……と思ったが、それは何だか味気ない。だいたいよくやってる手法だ、今年はもっと違うものがいいとみすずは考え直す。
ならば、省吾のもう一つの趣味のゲームはどうかと考える。無難に遊べそうなゲームソフトの一本でもやっとけば、喜ぶのではないかと思った。
……しかし、そこで再び思い止まる。あいつは今年、受験生だ(自分もだが)。今年から塾にも行くとのことだし、さらにはゲームは受験が終わるまでお預けだなと残念そうに言っていたのを思い出す。
まあ、わざと欲しがっていた大作ゲームを渡して複雑そうな顔をさせ、それを見るのもサド心をくすぐらせて面白いかもしれないが、せっかくの彼氏の誕生日なんだから思いやりのこもったプレゼントがしたいと、やはり考え直した。





「という訳で、はい」

誕生日当日、みすずは省吾にプレゼントを渡す。それは、銀の指輪にピアスに首飾り。
いわゆるシルバーアクセサリーと呼ばれる物だった。

「…な、何これ……?」

省吾はしばらくプレゼントの中身をまじまじと眺めていたが、やがてみすずにそう尋ねる。

「何これって、シルバーアクセサリーよ、あんたもさ、もう少しオシャレしないと。いつまでもそんな子供っぽい格好ばっかりしてちゃだめよ」

「…は、はあ……」

そう主張しながら指輪を手に取るみすず。省吾はどう言葉を返していいか分からず、困っていた。

「ほら、まずこれ着けてみなさいよ」

と、指輪を省吾の指にはめさせようとするみすず。しかし省吾は手を引っ込めた。

「あ、いや、指輪はちょっと………」

「何よ、どうしたの?」

「指輪は苦手というか……」

省吾が恐る恐る言うと、みすずは眉を顰める。

「苦手って何よ?」

「そういうの、こそばゆくなってだめなんだよね……」

申し訳なさそうに省吾はそう口にする。
そして省吾の言葉にみすずは落胆し、抗議した。

「そ……そういう事は先に言いなさいよ!」

「先にって言われても……何貰うか分からなかったし」

みすずが指を指しながら省吾に向かってそう言うと、省吾も困ったように言い返す。

「ああん、もう! じゃピアス!!」

指輪が駄目ならと、みすずは今度はピアスを手に取り省吾の耳元に近づいたが、省吾は再び困ったような顔をみすずに見せる。

「穴開いてないから……ピアスはもっと無理というか………」

「じゃあ開けなさいよ!!」

省吾の耳に穴が開いていない事は前から分かってはいたが、とりあえずと買ったピアス。
しかし彼の反応につい、声のトーンも高くなる。

「やだよ、耳に穴開けるなんて痛そうだし気持ち悪いよ!」

せっかく彼女がくれた誕生日プレゼントという事実はとりあえず横に置き、今は自分の気持ち優先に物を言う省吾。
確かにみすずにとっても、今まで身体に穴など開けた経験はないので、その気持ちも分からなくもないが、あまりにはっきり言うので、怒りを通り越して身につけさせる気も失せてしまった。
まあ嫌がっているし、無理矢理穴なんか開けようとしてブチ切れられても困る(普段大人しいだけにブチ切れるととても恐い)ので、最後に残った首飾りを勧めてみることにした。

「……じゃあ首飾り!!」

「……いや、首飾りも首がこそばゆ「ええい!! 黙っとけこのヘタレが!!!!」

「ひい!」

省吾のあまりの反応に、みすずの方がブチ切れてしまった。
みすずのがなり声に、お決まりの如く怯む省吾。しかしみすずはさらに続ける。

「いいかげんにしなさいよね! 人がせっかくプレゼントしたのにゴチャゴチャ文句だけ垂れて、今だけでもいいから身につけたらどうなのよ!!」

「…わ、分かりました……」

みすずの勢いに負けて、省吾はピアス以外の貰ったアクセサリーを身につけてみた。
すると……


「………………ぷっ、あははははは」

「な、何だよ……」

その省吾の姿を見るなり、みすずは吹き出した。
着けろと言われて着けたのに、それを笑われれば省吾も腑に落ちない。

「だってさ、何か変よあんた、あはは」

更にはピアスを手に持ち、省吾の両耳にあて、眺めてからまた笑う。余程おかしいのか、みすずはお腹を抱えて笑うが、当然その反応が省吾は気に入らない。

「だ、だから嫌だって言ったのに…。僕にはこういうの似合わないし」

そしてそう言い、むくれながら省吾は身につけていたアクセサリーを外した。

「あー、ごめんごめん。でもさ、いきなりだったから笑っちゃったけど、似合わないって事はないわよ」

自分の反応に省吾があんまりむくれているので、その態度が子供っぽくて可愛らしいと思いながら、みすずは省吾の頭を撫でフォローを入れる。

「……えー、そうかな…」

みすずの言葉を胡散臭げに思い、省吾は首を傾げる。

「うん。ほら、もう一度着けてみなさいよ」

「もういいよ」

そして、外したアクセサリーを再び身につけさせようとするみすずに、冷めた態度で言い放つ省吾。

「えー、もー。あんたって本当に気遣わないわね」

「……そ、そんな事ないよ」

省吾の態度に今度はみすずがむくれると、嫌がる彼に再びアクセサリーを身につけさせ、それを見てやはり吹き出す。
玩具にされた気分の省吾だが、せっかくの誕生日なのであまりごちゃごちゃ言ってまた彼女を怒らせたくないし、今度は大人しくされるがままになっていた。



【おまけ】

「ねえ、一つ聞きたいんだけど」

「え、何だい?」

「指輪こそばゆくなるから苦手だって言ってたけど、あんた結婚したらどうするの? まさか指輪着けないつもりなの?」

「えっ?!」

「私そんなの嫌よ、自分の夫が結婚指輪着けてくれないなんて」

「あ、いや、……そこまで考えてなかったよ……というか、みすずは僕と結婚したいの?」

「えっ、やだ!! そ、そういう意味じゃないわよ、バカ!!」

「だって今、自分の夫がとか言ってたじゃないか、…みすずがそう言うなら結婚指輪は着けるよ」

「えっ!? だ、だからそういう意味じゃ……」

「こそばゆいの我慢して着けるから安心して」

「そ、そう?」

「うん。嬉しい?」

「まあ、嬉しいかな。……って、調子にのるんじゃないわよ!! もう!」

「顔真っ赤だよ、ところでいつ結婚しようか(ニコニコ)」

「ちょっと! いい加減にしなさいよね!! 省吾のバカ!!!」

結婚の話をほのめかされて顔が熱いみすずと、彼女を言い籠められたのでしたり顔の省吾でした。


End

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ちょっとばかし早い省吾君の誕生日話でした。でもグダグダですみません。
身体に穴開けるの気持ち悪いというのは、実は私の意見そのままです。親から貰った身体を……と言う訳ではなく、例えですが、身体の一部から向こう側が見えるなんて、考えただけでヒィーってなります。
ちなみに、省吾君の誕生日には改めて何かやる予定です。



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