自転車


「おーい、みすずー」

僕は自転車をみすずの元へと走らせる。

先日、母さんに頼まれて買い物に出掛けた時に、自転車を使った。荷物もカゴの中に入れられるし、何より歩くよりも便利だ。
買い物を済ませ、そのまま帰るのも味気ないので、見晴らしの良い土手を走っていたらみすずが歩いているのをたまたま見つけたから声を掛け、その時は彼女を後ろに乗せて帰った。途中でパトカーに見つかって怒られたけど……。

それから休みの日なんかは、みすずと一緒に自転車に乗って走っている。これが結構楽しくて、今は二人ではまっているのだ。



「省吾、おそーい」

「ごめんごめん。お待たせ」

よっぽど待ち遠しかったのか、早く来ていたみすずは、僕が来るなり待ちくたびれたようにせかす。
僕は彼女に謝ってから、みすずを後ろの荷台に乗るように促した。

「じゃあ乗って」

「うん」

みすずは嬉しそうに荷台に腰をおろした。そして、僕の腰にしっかりと掴まる。

「いいわよ〜」

「じゃあいくよ」

僕はハンドルを掴むとペダルを漕いで走らせた。みすずを乗せたから少し重みはあるが、難なく漕ぎ続ける。
この前と同じで、今日も天気が良くて風が気持ちいい。

「今日もいい天気だね」

「そうね〜」

みすずと会話を挟みながら僕はペダルを漕ぐ。
そしてしばらく走ってから、見晴らしのいい場所で自転車を止め、近くにあるベンチに二人で腰掛け休んだ。

「ねえ、今度私が運転したい」

「え、僕重いよ」

「何言ってんのよ、その体型で 」

後ろに乗ってばかりいるのが退屈なのか、みすずは運転を代わりたいらしい。ついでに体型の事までからかわれてしまった。一応男だし、みすずより体重あるんですけど……。

「……いや、みすずよりは重いというか…」

「何言ってんのよ、そんなの当たり前でしょ。あんた私の体重いくつだと思ってるのよ!?」

「…………」

何だか話が噛み合わないので、彼女の言い分通り、とりあえず今度はみすずに運転を任せることにした。
少し休んでから再び自転車に乗る。みすずは前に乗り、僕は荷台に座る。

「ちゃんと掴まってなさいよ、でも変なとこ掴んじゃだめよ」

何だそれはと心の中でつっこみながら、僕は彼女の腰辺りに抱き着いた。
僕が彼女の身体に掴まったのを確認すると、みすずは自転車のペダルを漕ぎはじめる。

「行くわよ〜!」



少し不安定になる事もあるが、みすずはきちんと運転している。やっぱり僕は体重が少なめなのかなと思いつつ、彼女の背中に身を預ける。

「大丈夫かい?」

「うん、平気。……でも思ってたよりちょっとふらつくかな」

逆にみすずは予想していたよりも、僕の体重が負担になっているみたいだ。……でもそれって、どれだけ僕が軽いと思われていたのだろう…?


それから少しだけ自転車を走らせてから、再び運転を交代した。いつまでも女の子に運転させるのは忍びない気がしたので。


「ねえ、お腹すいた〜」

「じゃあお昼食べに行こうか」

「うん」

「どこにする? 牛丼屋とか? あ、駅前にあるラーメン屋はどう?」

「やあよ! もっと入りやすいとこがいい!」

「そ、そう…」

……みすずってそんな事気にするような子だったっけ…? 少し女の子らしくなったのかな……??



自転車を走らせながら話し合った結果、近くのファミレスに決まった。まあ入りやすいと言えば入りやすいかな。
ファミレスで昼食をとり、その後はしばらく店でお茶を飲みながらのんびりと過ごしていた。
最近のファミレスは、ドリンクバーという飲み放題のシステムがあって、平気で2〜3時間は長居してしまいそうだ。今もみすずがやたらとお代わりをしながら、店を出ようという気配を感じさせない。
…まあいいか、特に混んでる訳でもないし。
そんな事を考えてると、みすずが話し掛けてくる。

「ねえ、今度はまた私が運転したい」

みすずの言葉に僕は何かと首を傾げるがすぐに気付く。恐らく自転車の事だろう。

「ん? 自転車の事?」

「そうよ、いいでしょ?」

尋ねてみると、やはりその通りでみすずは頷いた。
正直二人乗りの女の子の運転は不安定で心配なんだけど、まあそんな長時間でもないし大丈夫かな。
……そもそも、学生の二人乗り自体違反なんだけど、まあ今さらだし……それは追及しないでおこう。

「いいよ。じゃあ長居しちゃったしそろそろ出ようか」

「もう少しいたいけど……そうね、出ましょうか」

僕が出るのを促すと、みすずも素直に頷きそう口にする。僕たちは席を立ち、会計をすますと店を出た。
時刻は午後の3時半を過ぎようとしている。





店を出てからみすずの運転で自転車を走らせる。今度は一般道路を走っている訳だが、何だか危なっかしくて不安になる。

「大丈夫かい?」

「大丈夫よ〜、あんた心配しすぎよ。ねえ、それよりさ」

「ん〜?」

「今度は二人乗りで学校行かない?」

「え? 嫌だよ、何か目立つし恥ずかしいよ」

「そんな事ないわよ。来週あたりにどお? …そうね、月曜日にしましょ、決まり」

「えー、勝手に決めないでくれよ……」

……何か勝手に決まってしまった。本当にみすずは強引すぎて困る。
自転車二人乗りで登校か、きっとクラスメイトに見られたら冷やかされそうな気がしてならない。恥ずかしいな……。

僕は当日の事を考えながら、みすずが運転する自転車の荷台の上で揺られていた。


End

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何か話がグダグダになってしまいました。この話は8話目の続きになります。
最近、女子の方が前で運転して男子が後ろに座ってるのをよく目にしますが(しかも運転が安定してる)、あれは運転してる方はきつくないのだろうか? それとも女子の方が重
おや、誰かが来たようなのでこの辺でおひらきにします。



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