二人乗り


家の近くにある土手を歩いていると、後ろから誰かの声がするので振り向いた。すると、省吾が自転車に乗ってこちらにやってくる。

「あ、省吾じゃない。どうしたの?」

「うん、買い物。母さんに頼まれたんだ」

そう言って、省吾は籠の中に入っているビニール袋を少しだけ持ち上げて私に見せた。

「そうなの」

「うん。それにしても天気が良くて気持ちいいね」

省吾は空を見上げ、すがすがしい顔をしている。

「あんまり気持ちいいからさ、土手に来てみたんだ」

さらに省吾はそう口にする。
同じだった。私も外は気持ち良さそうだから、こうやってここを歩いている。

「私も散歩しに来たの」

「そうなんだ、じゃあ一緒に散歩しようか」

私の言葉に、省吾は嬉しそうな顔をする。そして一緒に散歩をしようと誘ってきた。

「いいの? 買い物は?」

「もう済んだから。じゃあ乗りなよ」

そう言い、省吾は自転車の荷台を指差した。

「え?」

てっきり歩くものだと思ってた私は、一瞬不思議そうな顔をして荷台を見つめたが、すぐに省吾の言葉を理解した。

「じゃあ乗るわよ」

「気をつけてね、僕の腰につかまって」

省吾の言う通り、私は荷台に腰を降ろすと、省吾の腰につかまった。少ししてから自転車が走り出す。





「しっかりつかまっててね」

「大丈夫よ。ドジっ子のあんたじゃないんだから、うっかり離したりなんかしないわよ」

「もう、一言多いよみすず」

私達はそんな他愛もない会話を重ねながら、土手を走り続けていく。これだけ天気のいい日に、省吾の腰に抱き着き、流れる景色を眺めるのは最高に気持ちがいい。


「ねえ、重くない?」

「そりゃ重いよ、自分の他にもう一人乗せてんだから」

「あんただって余計な事言ってんじゃないの! 女の子に対して失礼でしょ! こういう時は普通重くないよって言うのものなの! 分かった!?」

「分かったよ、ごめんごめん」

さらにそんな会話を重ね、省吾の運転する自転車は土手を走り切る。
土手から出て、そろそろ帰ろうと一般道路を走っていたらパトカーに見つかって「そこの二人乗り、降りなさい」なんてスピーカー越しに注意されちゃったわ。恥ずかしい。
仕方ないから歩いて帰ったわよ。


……まあでも楽しかったからいいか。また省吾に自転車乗せてもらおうっと。


End

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みすずと省吾の二人乗り書いてみたかったんですよ。
彼女らの家の近くに土手があるという設定は捏造です。因みに今連載してる話でも土手が出てきます。





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