vol.13

いきなりの出来事だった。
シズちゃんの親戚で不幸があったらしく、弟くんがヘリで迎えに来てあっという間に連れ去っていった。
ヘリから降ろされた1本のロープに掴まって、スルスルと引き上げられていくシズちゃんは格好良かったけど、問題は取り残された俺だ。
今までシズちゃんが山を降りて俺がここに残るって状況が全く無かったワケじゃない。
いや、滅多に無い事だけどね。

でも、そんな時は準備万端だ。シズちゃんに不在分だけの御飯を作っていって貰うし、ギリギリまでベタベタいちゃいちゃして貰う。シズちゃんの服だけ洗濯しないでとっておいて、不在時はぶっちゃけ「(昨日着ていた)彼T」を着る状態だったりした事もある。

でないと俺が奴らにモッフモフにされてしまうから!
言っておくけどコレは死活問題だから!


なので、今のこの状況はマズイ。めちゃくちゃマズイんだ。
よりによって昨夜はエッチしないでぐっすり寝ちゃったし、昨日着てた服は洗濯済み。
さっきシズちゃんが残していった「汗拭きタオル」だけが今の俺の守り神だ。

この効力が切れないうちにシズちゃんの寝室に食料をできるだけ運び込む。
シズちゃんの部屋だけは動物の侵入を許さないから、俺はここから出ないっていうか出れない。
きっとシズちゃんの事だから、家畜が心配で明日の夜には帰ってくるハズ。

1日くらい風呂なんか我慢できる。
トイレは…シズちゃんの服を着ていけば、用を足す時間位は効力があるだろう。
食料だってパンとかチーズとか果物があるから平気だ。

ちゃんと過ごせる自信はある。
けど…相手は獣だ。何を仕出かしてくるか判らない。
あぁ、やっぱり俺は人間が好きだ!


カリカリカリ ガタッ コトトトトト

っ!!居る!…もう奴らはすぐそこにまで来てる!!!
ベッドに潜り込んで携帯を取り出しシズちゃんにメールを送った。

『できるだけはやく帰ってこい!』


マジで早く帰ってこい!
帰ってきても「おかえり」しか言ってあげないけど。
「もっとゆっくりしてれば良かったのに」とか言っちゃうだろうけど。
「居なくても全然変わりないし」とかも言っちゃうだろうけど。

シズちゃんの香りが仄かに残るシーツに頬を摺り寄せ、切実に願った。






「…臨也がデレた…。」
通夜が終わり線香の見守り中、ふと確認した携帯を見て小さく笑った。
この分だと、おかえりのキスからそのままベッドにもち込めるかもしれない。




家に帰った静雄を臨也がどう出迎えて、その後どうなったのかは…また別のお話。




戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -