vol.11
夜はいつもシズちゃんのベッドで寝る。
エッチする時もあれば、シズちゃんが俺をギュって抱き締めて寝るだけの時もある。
…どっちの頻度が高いかなんて聞かないでよね、いくら積まれても教えられないトップシークレットだよ。
まぁ、大抵はシズちゃんが先にベッドに入っていて後から俺が潜り込む感じだ。
その時に引きずり込まれるか、半分寝惚けながらも隣に潜り込んだ俺を当たり前のように抱きこむシズちゃんに任せる事にしている。
狭いベッドだから抵抗して落ちるのを避けたいのもあるし、シズちゃんが納まりが良いと納得する体勢は俺にとってもまぁ悪くない心地よさだからさ。
けど、たまに、本当に極稀に、シズちゃんが本格的に寝て意識も落ちて背中を向けたままピクリともしない時がある。
体力が有り余ってるシズちゃんだけど、やっぱり日々の疲れが溜まるって事があるのかもしれない。
その日の仕事がいつもより大変だったのかもしれない。
っと、理由は様々だけどシズちゃんの背中を見て触れながら眠るという日がある。
…正直に言う、俺はそれが嫌じゃない。
シズちゃんの背中は細いクセに白いクセに『頼れる男』を醸し出している。
それでいて色気もあって…何ていうのかな、あの背中を見たら誰もが縋りつきたくなるんじゃないかなって思うんだよね。
この背中に守って貰えたら、どんな敵が来ても平気だって納得できる安心感が半端ない。
(ズルイよねぇ…寝てるだけなのに包容力出しちゃってさ。)
そんな背中にそっと両手を当ててみる。
シズちゃんも俺も裸で寝るなんて趣味はないから、手を添えたところで寝着代わりのTシャツ越しになるんだけど。
それでも擦り寄って背中のラインに手を滑らせると、ナイフが刺さらないとは思えない肌の質感が伝わってくる。
ちょっと爪を立てたら跡が付きそうなものなのに、どうしてナイフは5mmも刺さってくれないんだろう。
(悔しいけど…逞しくて格好良いな……細いクセにさ。)
俺を背に庇っているような、俺がシズちゃんに縋っているような、そんなあり得なさ過ぎる体勢だから。
こっちを向いてくれなくても、抱き締めてくれなくても、俺はちっとも嫌じゃない。
ピッタリとシズちゃんの背中に寄り添って目を閉じる。
『男は背中で語る』なんていうけど、シズちゃんの背中は何を語ってくれるんだか。
きっと、暫くしたら寝返りをうったシズちゃんに抱き込まれてしまうから。
もう少し、この希少な背中を堪能しよう。