クソループ野郎廻天くん

TUTORIAL


「おに゙い゙ちゃ、たす、」


 ぐちゃり。

 妹が、文香が、胴体と頭を握り締められて目の前で潰された。


「は?」


 は?

 ……………………は?



暗転。



「おに゙い゙ちゃ、たす、」


 ぐちゃり。

 妹が、文香が、胴体と頭を握り締められて目の前で潰さた。


「おい」


 嘘だ。 何で家に戻らない。



暗転。



「おに゙い゙ちゃ、たす、」


 ぐちゃり。

 妹が、文香が、胴体と頭を握り締められて目の前で潰さた。


「なんで……」


 なんでなんだよ。



暗転。



「おに゙い゙ちゃ、たす、」


 ぐちゃり。

 妹が、文香が、胴体と頭を握り締められて目の前で潰さた。


「戻れよ」


 戻れよ!!!!!
 家に戻せよ!!!!!



暗転。



「おに゙い゙ちゃ、たす、」


 ぐちゃり。

 妹が、文香が、胴体と頭を握り締められて目の前で潰さた。

 ふざけんじゃねえ。なんでここからなんだよ。なんで文香が殺されてる所からなんだよ……!!!!



暗転。



「おに゙い゙ちゃ、たす、」


 ぐちゃり。

 妹が、文香が、胴体と頭を握り締められて目の前で潰さた。



暗転。

「おに゙い゙ちゃ、たす、」

暗転。

「おに゙い゙ちゃ、たす、」

暗転。

「おに゙い゙ちゃ、たす、」
暗転。
「おに゙い゙ちゃ、たす、」
暗転。
「おに゙い゙ちゃ、たす、」
暗転。
「おに゙い゙ちゃ、たす、」
暗転。
暗転。
暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転。暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転暗転。


暗転。



「おに゙い゙ちゃ、たす、」


 ぐちゃり。

 妹が、文香が、胴体と頭を握り締められて目の前で潰さた。


「殺す」


 絶対に殺してやる。必ず殺す。何がなんでも殺す。

 もう逃げるだとかどうだって良い。何があろうともこの怪物どもを殺さないと気が済まなかった。何度繰り返そうが、何度死のうが関係ない。絶対に殺す。



暗転。


「おに゙い゙ちゃ───」


 手っ取り早く殴りかかる。殴ったところで図体のデカさからして効きそうに無いが関係ない。
 急所を狙え。無駄にデカい目玉に向けて拳を振るうも、しかし怪物の方が動きが早かった。ボディブローをモロに受け、骨が折れた感覚。


「ご、あ゙ッ」


 吹っ飛んだ先の塀に叩きつけられ、地面にずり落ちる。クソ、こいつも早い。
 恐らく今回はもう動けないから、出来るだけ最後まであいつの動きを───


暗転。


「おに゙い゙ちゃ───」


 クソ、母さんを殺した方に首を切られた。アイツの動きにも気をつけなきゃならねえなんて、ふざけんなよ。

 この赤のクソ野郎も俺より動きが早いから、また死にながら動きを覚えて反撃のチャンスを見つけないと。大振りに振われた腕をぎりぎり避けて、しかし蹴りが避けられなかった。
 またもや塀に叩きつけられて動けなくなる。短い足で蹴るんじゃねえよクソ。血反吐を吐き、何とか立ちあがろうと───


暗転。


「おに゙い゙ちゃ───」


 痛みで緑色のアレからの横薙ぎを忘れていた。2匹の動きを考えて動かねえとだめだろ、俺。
 赤色のヤツは殴った後に蹴ってくるから、距離をとって回避しないと。右腕の動きをどうにか見切り、蹴りも避ける。が、少し体勢を崩してしまった。クソ。このままじゃまた死ぬ。
 けど、だったらむしろ転がって避けりゃいい。地面に倒れ込む様にして転がり、赤色から距離を取って立ち上がる。しかし次の瞬間、首筋にゾワリとした悪寒が走った。

 ───横薙ぎ。

 よく分からないまま咄嗟にしゃがみ込めば、頭上を緑色の横薙ぎが通り過ぎていく。そしてその横薙ぎの攻撃は赤色にぶち当たり、そいつに血飛沫を上げさせた。

 そうか。そうすればいいのか。俺の攻撃が当たらないのなら、アイツらの攻撃を互いに当てさせればいい。
 またもや悪寒を感じたものの、今度はどの攻撃が来るか一切わからなかった。袈裟斬りかな───


暗転。


「おに゙い゙ちゃ───」


 互いに攻撃を当てさせるのならば、俺は出来るだけアイツらから距離を取らない方がいい。恐らく、あくまでも狙いは人間の俺。アイツらが協力するのだけは避けないと。
 また、めちゃくちゃ死ぬだろう。だってアイツらと混戦状態になって、簡単に生き残れるはずが無い。けど、殺す為なら何回でも死んでやる。許さない。絶対に殺す。

 赤色の腕の攻撃範囲も蹴りの攻撃範囲も大体理解したから、出来るだけギリギリで避け、次の攻撃を見る。左のボディブローだった。目が慣れてきてちょっと掠った程度で避けられたが、たぶん次は足かな。
 首筋に悪寒が走る。違った、緑色の横薙ぎのが先だっ───


暗転。


「おに゙───」

 横薙ぎのタイミングが見えた。次は避けられる。
 赤色の右腕の殴りかかり、蹴り、次の左腕、とギリギリで避けて、悪寒を感じる前に思い切りしゃがみ込む。そして頭上を斬撃が通り過ぎた。


「ゴ、ゴゴゴン゙バン゙ンン」


 緑色からの横薙ぎをモロに腹に受けた赤色がよく分からない喚き声をあげる。が、俺も俺で唸る羽目になった。赤色の血が顔面に掛かって目が見えなくなったのだ。畜生、これじゃもうあの感覚に頼るしか無いじゃないか。
 ゾワゾワとした感覚の示すまま、何とか攻撃を避けようと体を動かすが、右半身が焼ける様に痛む。クソ、やられ───



暗転。


「お───」


 次は横薙ぎを避ける時には多少赤色と距離を開けないと。しかしそれにしても、俺を豆腐みたいに切り刻む緑色の斬撃でも、赤色の腹を半分も切れていなかった。……赤色の胴体じゃなく、腕や足に緑色の攻撃を当てた方がいいか?
 今までよりも余裕を持って赤色からの攻撃と緑色の横薙ぎを避け、次の攻撃に備える。どっちが来る……?

 首筋に悪寒。視界に入ってる赤色は蹴りの準備動作をしているが、これは恐らく緑色の攻撃が来る。きっと縦の斬撃だ。
 死んで覚えた攻撃パターンで、何とか緑色からの斬撃を避けるが、今度は赤色の蹴りが飛んでくる。あークソ。


暗転。

 また死に覚えだ。

暗転。

 緑色のがうざったい。赤色の攻撃を当てさせる方がいいのか?

暗転。

 もっと2匹を引きつけて攻撃を受けよう。

暗転。

 連撃すんじゃねえ。

暗転。
 そろそろパターンも覚えられた。
暗転。
 パターンを覚えても俺の息が続かない。
暗転。
 初歩的なミスをしてしまった。
暗転。
 クソ。
暗転。
 多少は慣れた。
暗転。
 あそこはもう少し距離を取った方が───
暗転。
 逆だ、距離を詰めろ。
暗転。



 クソ、またやり直しだ。

 今まで1番うまく避けられたってのに、最後の最後に回避不可能がきた。多分2つ前の攻撃を、あと半歩分右に避けなきゃならなかったんだ。
 斬撃と打撃を同時に受ける覚悟を決めて、痛みを受け止めようと歯を食いしばったところで。

 ぬいぐるみが緑色と赤色を殴り飛ばした。


「……………は?」


 片腕が欠損している赤色をボコボコにしたぬいぐるみは、脚がひしゃげている緑色もボコボコに殴る。

 なんだあれ。意味不明だ。


「君!! 大丈夫か?!」


 ぬいぐるみが母さんと妹の仇をブチ殺しているのを、地面にしゃがみ込んでただただポカンと眺めていると、誰かに肩を揺すられる。
 視線を上に向ければ、厳つい顔のヤーさんみたいな男が俺の肩を揺すっていた。……どういう状況なんだ……?


「遅くなってすまない」


 何もかもがわからない。ぬいぐるみが動くのもそうだけど、俺が今こんな事になっている状況が始めから意味不明だ。母さんと妹の為にがむしゃらにどうにかしてきたけど、そもそもあの怪物はなんなんだよ。
 全部、全部、意味がわからない。

 というか今この人、遅くなってすまないって言ったか?
 ああだめだ、わけがわからない。あの怪物共を殺す為に考えて、考えて、考えてきたからまともに何も考えられなくなっている。クソ、どうすればいい。


「……母と、妹が殺されました」


 アレは何なんだ、だとか色々聞きたいことがあったのに、俺の口から飛び出してきたのは目の前の人を責める様な言葉だった。違う、そんな事を言いたいんじゃない。
 確かにこの人がもう少し早く来てくれていれば、妹は助かったかもしれないが、そうじゃない。妹が死んだのは俺のせいだ。俺が判断を間違えて、俺が弱かったせいだからだろ。
 なのに何でこの人にあたるんだ。クソ、クソ。このクソ野郎。


「すまない」
「アレはなんなんですか。そしてあのぬいぐるみも」
「落ち着いてくれ。今の君は傷だらけで」
「そんなのはどうだっていい。アレはなんなんですか」


 確かに血塗れだし怪我も沢山しているが、どうでもいい。だって死ぬ方がもっと痛いんだ。
 目の前の男に掴みかかる様にして質問を繰り返す。アレの正体は何なんだ。俺の家族は一体何に殺された。


「あれは呪霊と言う」


 男……夜蛾さん曰く、あれは人間の負の感情"呪い"の塊だそうだ。日本国内で年平均1万人を超える行方不明者などの原因でもあるらしい。

 ……口振りからして、この人はその呪霊を退治する専門家という事だろうか。だから遅くなってすまないって言ったし、こんなにも"呪霊"とやらに詳しい。
 いや待て。年1万人以上を殺している呪霊がこの人だけで退治出来るとは思えない。多分そういう専門の組織があるはずだ。


「俺も殺せますか」
「……今まで呪霊を見た事が無いのなら、それは難しい」
「俺はあれらを殺したい」


 だって許せないだろ。


「君は今、興奮状態にある。まともな思考が出来ていないんだ。まずは傷を癒してからよく考えなさい」
「考え直しても殺したければ、殺し方を教えてくれますか」
「…………仮に、君がそれを望むならばそうしよう」


 その言葉を聞いて、一気に体の力が抜けた。嘘かもしれないが気休めにはなるし、呪霊退治の専門家が彼以外にもいそうだから、彼に断られたとしても別の人間に師事すれば良い。
 ふう、と息を吐けば、忘れていた疲労が一気に戻ってくる。それに、多少冷静になれば体の痛みも気になってきた。視界も霞んで、頭がフラつく。クソ……。


「大丈夫か?」
「……あの……妹と、母さんを……」


 ぐちゃぐちゃのままは嫌だ。




暗転。




 目を開く。

 知らない天井だ。そして何より体が痛い。
 何とか体を起き上がらせて、周囲を見渡すとカーテンに覆われている。枕の付近にはナースコール。……成る程、ここは病院か。

 夜蛾さんはどこに行ったのだろうか。あと、母さんと妹の遺体はどうしたんだろう。それにここはどこの病院なんだ。
 ……一応目を覚ましたし、ナースコールを押した方がいいかもしれない。
 そう思ってボタンに手を伸ばした瞬間、首筋に悪寒が走る。

 は? 嘘だろ。

 急いで痛む体を無理矢理動かしてベッドから退こうとするが、それよりも先に左腕が吹き飛ぶ。


「ッぐ、ぅ」


 経験上、こんなんで怯んでいられない。傷口を右手で押さえながらベッドから飛び降りて、アレ……呪霊から逃げ出す。今度は紫色だった。
 しかしながら、片腕が無くなっている状態でまともに走れる筈もなく。呆気なく俺の腹が吹き飛んだ。

 一体なんだってんだ。少しぐらい休ませろよな。

 今度の呪霊は俺を喰いたいみたいで、ケタケタ笑いながらデケエ口を開いてこっちに向かってくる。徐々に近付いてくるそいつから逃げようにも、痛いし意識があるだけ儲け物みたいな状況でどうにかできるはずが無い。
 焦らす様に、恐怖心を煽る様に涎を垂らして噛み付いてくるそいつに、言葉を漏らすだけで精一杯だ。


「クソッタレが……」



暗転。
→Next 1st STAGE…?
(無いです)



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