実習棟を歩く
さっき絡まれた奴らと殴り合いの喧嘩をしてきて顔中傷だらけだった
そんな俺をみてこそこそと話をしだす女子生徒に苛ついて舌打ちをかませば走って逃げ出す
フン、と鼻を鳴らせば会議室から出てくる人が居た
身長は180あるだろうと推測できた
「うん、20の公演に着付けね。よろしくー」
「はい!演劇部皆で御礼はします」
「えっ、じゃあオレンジジュースが良いな」
笑いながら出てくる
俺とは対局の立ち位置に居るそいつが、何故だか急に、羨ましくなった
人から疎まれる存在の俺
人から求められる存在のアイツ
同じ人間だというのにこの差を初めて目の当たりにした気がした
「えっ」
「あ"?」
つかつかと歩み寄るソイツはおもむろに近寄ったかと思えば、考えもしなかった言葉を発した
「何したの、この傷」
「はぁっ!?関係無いだろてめぇには!!」
「見てられないだろう、こんな酷い傷…手当ては?」
「…してねぇよ」
肩を掴み必死の形相で聞いてくる
質問されたから返せば、男の顔がさっと青くなる
顔の表情がころころ変わる
初めてあった印象は、羨ましい男だった