「お前が笑ったところが見てみたい!」

目の前で演劇よろしく満面の笑みで俺にそう告げる、五条鶴丸。仲良くなった覚えはない。たまたま前の席だっただけ。

「五条、今授業中」

背後に迫る化学教師には気づかなかったようだ。
教科書でひっぱたかれる五条。笑う教室内の生徒達。何が面白いのかわからなかった。
ただ、痛そうだな、と思った。

午前の授業が終わり、各々が自由に過ごす。いつもはヘッドホンして好きな曲を聞きながら片手で食べられるものを食べて、本を読んで終わり。そのルーティンは目の前の男によって断ち切られた。

「……」
「なぁなぁ、お前いつもどんな曲聞いてるんだ?」
「……いろいろ」
「おすすめとかあるか?」
「五条の趣味がわかんないからすすめられない」
「えっ」
「は?」
「俺のために曲を選んでくれるのか?」
「マジで意味わかんない、なんかすすめろって意味だったんじゃないの」
「いや、そうに違いないが…」

ひとりでうつむきながら唸る五条。もう満足したかな、と思い、首に控えるヘッドホンに手をかけるとかけた手首をつかまれた。

「なに?」
「また、こうやって話していいか……?」
「話したきゃ話せばよくね?俺は別にいいよ」

捨てられた子犬のような表情から一転、ひまわりのような表情になる。なるほど、これはおもしろいかもしれない。
ヘッドホンから手を離し、目の前にある表情がころころ変わる小奇麗な顔を両手で挟む。

「は、ぶっさいく」

次はどんな表情をするのかな。



(中身は似たもの同士!)

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