Significance of existence※騎士(複数)×ネロ/過去捏造話/情緒不安定 ぐらぐら揺れる視界が鬱陶しくて、目を閉じた。
それでもぐらぐら揺れるのは変わらなくて、いっそ気でも失えばいいのに、と思った。嫌なところで頑丈な自分が恨めしい。
「うっ、いいぜ、たまんねえなっ」
黙れ、下衆が。
たまんねえのは、こっちだ。
見なくても分かる。男はだらしない顔をして腰を振っている。しかもヘタクソと来たもんだ。どうせ彼女のひとりもいやしないんだろう。いたところで一度こいつとセックスしたらみんなサヨナラするに決まってる。自分勝手で、これじゃオナニーと変わらない。
いや、オナニーみたいなもんか。別にこいつらは俺であろうが別のだれであろうが構わないんだ。
「おい、ネロ。上のお口が暇そうだなぁ」
「……ッ」
顎を掴まれ、首を真横に捻られる。反射的に開いた目に飛び込んで来たのは薄汚いブツで、俺は開けなきゃ良かったと後悔した。
すぐに喉の奥までグロテスクなペニスが突き入れられて、臭いと感触に嘔吐きそうになる。無理矢理向きを変えられているせいで、余計に気道が狭まって上手く呼吸が出来ない。しかも、マトモに呼吸が出来そうなタイミングがあっても、絶えず揺さぶられているせいで、呼吸は乱れる一方だった。
息苦しさに生理的な涙が込み上げて来ると、奴らは一層下卑た笑い声を上げて、頭の悪そうなことを捲し立てた。
こんな奴らが普段は神を敬う品行方正な騎士だとは笑える。
過度な野心と卑屈さと、他人を見下すことでしか存在意義を見出せない下衆が。
ああ、でも。
そんな下衆どもに好き勝手にさせている俺は何なんだろうな。
とにかく、この下らないお遊びが早く終われば良いと思った。
「ネロ?」
背後からした声に、足を止めた。
振り返ると、キリエが笑顔で手を振っている。朝陽の中で彼女そのものが太陽のように輝いていた。
「キリエ、どうしたんだ、こんな朝早くから」
「お祈りの前に済ませておきたい用事があって」
「そうか」
「ネロこそ早いじゃない。もうお祈りに行くの?」
そんなわけがないと分かっているくせに、キリエはくすくすと笑う。
「仕事帰りだよ」
「まあ……怪我はなかった?」
途端に心配げな顔になるキリエに、癒される気がした。
俺は。キリエ。
君の為なら何だって出来ると思う。
「当然。俺を誰だと思ってるんだ?」
「もう、ネロったら」
そう。
君が笑っていられるなら、それで良い。
「じゃあ、行くわね、ネロ。また後で会いましょう」
「ああ」
擦れ違いざま流れた風に、饐えた精液の臭いがした。
キリエは気付いただろうか。いや、ほんの僅かだ。気付かないだろう。それに臭いそのものに気付いたとしても、それが何であるかなど彼女が知る筈もない。
綺麗なキリエ。
穢れなど知らないキリエ。
いつまでも綺麗でいてくれ。
君が笑っている限り、俺は俺の存在する意味を感じることが出来るから。
Significance of existence今更、自分の幸せなど望まない。
ただ、泥のように眠りたいと思った。
END