空耳
「え?」
空耳か、と思って聞き返した。
旦那は笑って、俯いただけだった。
沈黙の後、旦那が普段通りの声で面倒くさそうに「早く帰れって云ったんだ」と、虫を払うように手を振った。
すっきりしない気持ちのまま頷く。
「それじゃあ、ね。旦那」
明日は、戦場で。
(愛御中、だなんて。云うわけがない)
END
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