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「好きだって云え」
 好きだって云えよ。
 そう云いながら、彼は今にも泣きそうな眼で俺を見下ろす。
「好きだって云え!」
 指に一層力が篭り、いよいよ脳に酸素が回らなくなった頭がくらりと揺れた気がした。
 こんなんで云うもなにも、空気の漏れる『ひゅぅ』というおかしな音しか漏れない。
 それともホントは云わせたくないの?
「好きって……云えよぉ」
 ぱたり、と。
 温かいものが頬に落下した。
 泣きたいのは俺様だよ……。
 好い加減死ぬ。
 だけど。
「好きって……云って……ッ」
 しゃくりあげる彼の顔があまりにも愛おしすぎて、果たして俺は絶命するまでの短い間に、望む言葉を返してやれる自信はなかった。

END
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