唯我独尊松永様☆と、気の毒な筆頭 襖の向こうは異次元でした☆
「………」
「どうしたね独眼竜、卿のために特別に用意させたのだが?」
「っ、ど、どうしたもこうしたもねぇっ! どういう心算だ松永ぁ!」
政宗の目の前に用意されたもの、それはいかがわしい色合いの照明に彩られた一つの部屋。敷かれた布団は紅く、枕の数と布団の枚数が一致していない。なにやら甘い香りまで漂ってくる。
これはどういうつもりかと問い質せば、たいする松永の態度は実に飄々としたものであった。
「どういう心算? こういう心算だが」
「なん………ふくっ!」
気づくと口が塞がれていた。気を抜いていたつもりもない政宗の咥内を、松永の舌が蹂躙する。半時遅れて政宗は慌てて松永を突き飛ばす。口を手で塞ぐ。その顔は怒りと羞恥とが混ざって見事に真っ赤であった。
「竜よ………奥州よりひとり連れられてきて、まさかこのような事態は想定していなかったのかね?」
「ばっ………! こんな事態を想定できてたまるか!」
そうなのだ、今この場に奥州の人間、政宗の家臣は一人もいない。
ことの次第は奥州伊達領、米澤城。本丸にていつもどうり執務に励んでいた政宗の目の前が突然、火薬三割増しで爆破されたのだ。
「なっ………!」
「いや、失礼、少々火薬の量が多すぎたようだ」
少しも悪びれた様子もなく現れた人物に、政宗は嫌悪の感情を隠そうとは思わなかった。
松永は睨まれてどこか楽しげに、小歌を口ずさみながら政宗のもとに近づいてきた。
「♪嫌よ嫌よ、そんなにみつめちゃ嫌ぁ〜♪」
「は………? アレ? 俺、耳おかしくなった? なんか異次元から変な歌がぁ………」
「気にするな、欲っすればよいのだ」
「え? いやいやいやわかんないから。意味不明だし。てかてめぇ何しにきやがった?」
「愚問だな竜よ。私はただ、己が欲のままに動いている」
松永が政宗の間近にまで近づいた。そっと手を伸ばし頬に触れかける。だがそれより先に鬼の顔をした右目が現れて松永の動きがとまった。
「まぁあああさむねさまぁ!!!!! ご無事か!!!!」
「おやおや、思わぬ邪魔が入ったな」
「! 小十郎! 刀を持て! 城内に鼠がいるぞ!」
「やれやれ………卿らは早急にすぎる。もう少し過程を楽しみたまえ。このようにして」
松永の指が音を鳴らす。それを合図に再び爆風が巻き起こる。部屋はさらに破壊されて分断される。
「ま、政宗様!! 政宗様………!」
「小十郎! おい小十郎!!」
「さて、ではそろそろ参ろうか竜よ」
「なっ、くっ、離せ!」
ぎちり、と捕まれた腕が鳴った。政宗の腕を掴む松永の力は強く、逃れられない。簡単に捩伏せられて抱え上げられてしまう。
「やれやれ、力仕事は本意ではないのだが………卿は軽くて助かるよ」
「ふざけるなっ! 離せ! くっ、小十郎! 小十郎ぉっ!」
「政宗様! 政宗様ぁっ!」
悲痛な双竜の叫び声。松永はそれを心地よさげに聞いていた。
そうして松永の本拠地に一人連れ去られた政宗が通されたのは、ちょっとどころではなくアレでアレな部屋だった、という次第である。
「ふ、ふざけてんだろ? なぁ、ふざけてるだけだろてめぇ? ふざけてるだけと言ってくれ………」
「そう怯える必要はない。私はこう見えて初めての相手には優しいのだ」
「………っ!」
政宗は顔から血の気がひくのを感じた。松永から逃れようと思わず駆け出す。無駄と分かっていた。この男が一度捕らえた獲物を逃すような人間ではないと知っていた。
それでも逃げた。そして捕まった。政宗は松永に腕を捕まれ布団の上に引き倒された。松永はその上からのしかかり政宗の身動きを封じる。
「やめろやめろやめろ………やめやがれっ………」
「ここまで来てやめる人間がいるとでも? ………力を抜くといい。今からそう気を張っていては朝までもたんよ?」
「shit! ………朝までって…………っ!」
べろり、松永の舌が政宗の首筋を這う。ぞくりと感じる寒気。舌の感触。松永は政宗の着物の合わせを開けさせながら徐々に全身に至る。
「ふっ………くっ、ぁ」
「もっと卿の鳴く声を響かせようか」
「てめっ、何を………っぁっぁあっ!?」
びくんっと政宗の身体が跳ねた。
松永の指は政宗の秘所を突き当てていた。今まで当てられたことのないソコへの刺激に、政宗の身体は過敏なほど反応を示していた。
「これは驚いた………卿は本当に初めてなのか。私はてっきりあの右目に暴かれてたのかと思っていたが」
「………俺と小十郎はそんなんじゃねぇ…………」
「そうか、これは失礼。いやなに、卿らの様子を見ているとついそんなやっかみを入れたくなるのでね」
「殺してやる………」
政宗は松永を殺意を持って睨んだ。しかし涙目で睨んでもこの男を煽る結果にしかならなかった。
「っ………ぁっ!」
「まったく、卿はどこまでも私を飽きさせない」
松永はにぃっと、口元を歪めさせた。
だが彼の思惑がまかり通るのもここまで、襖の向こうから伝えられた声に松永の眉間が寄せられた。
「屋敷の外に伊達の兵三千! 囲まれてます!」
「無粋な………」
「だ、て、………小十郎っ?!」
政宗の表情が途端に明るくなる。松永は気に入らぬ、とばかりに、彼の急所をわざと握りしめた。
「っつ…………ぅ!」
「もしあの男の前で卿の淫らな姿をさらせば、はたしてあの男はどんな反応を見せるのだろうな…………?」
「…………くそっ」
「さて、どうしたものか、
な?」
攻め入られているというのに松永はまるでどこ吹く風、動揺のかけらも見せなかった。政宗はようやく松永の本当に恐ろしい所を垣間見た気がした。
彼方からは戦の始まる音がすでに聞こえてきていた。
END
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えろす様より頂きました。えろす様、ありがとうございました。