ジーザス!!


 ホスピスなんて仕事を選んだのは、記憶の中の俺があまりにも人を殺し過ぎたからかも知れない。別に贖罪のつもりはない。ただ救えるかも知れない命を殺してしまう危険のある職業よりは、死ぬと分かっていて見ているだけのこの仕事の方がいざ死んだ時に自分に責任を感じなくて済む、それだけのこと。自分の弱さを笑わないでもない――ただラクだと思っているだけかも――実際、にこにことお得意の愛想笑いを振り撒いていれば喜んで貰えることが多い――お気楽な世の中になったもんだと思う。あの血で血を洗った乱世の後に、どうやればこんな世界が構築されるのか。
 今日もまたひとり。まだ十七歳の高校生。末期癌。可哀相に、と思ってあげられるくらいの人間性はある。もうセックスは済ませただろうか。済ませていたとしても子供はいないだろう。子孫を残せないという悲しみまでは分からない。興味がないから。
「はじめまして、これから(死ぬまで)どうぞよろしく」
 死を迎える少年が云う。アンタの存在は一度だって感じたことはなかったが、今はっきりとわかったよ、地獄へ堕ちろ、ジーザス。「はじめまして、」なんて云えるわけがない。俺はまた君が死に逝くのを見るだけなのか。これは俺への罰なのか。あの日、アンタを殺した罪の、贖罪は叶わない。嗚呼!

END
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