「竜の旦那は綺麗だね」
 そう俺が云った時の、彼の表情が忘れられない。


 彼は照れるわけでもなく、馬鹿にするでもなく、ただ、傷付いた顔をした。
 裏切られたような顔をしていた。

 その目が、『 ウ ソ ツ キ 』と云っていた。


 なので。
 ある時、俺は彼に、「醜い」と云った。
 そうすると彼は、『 知 ッ テ イ ル 』という顔をした。
 その表情は、かつて彼を綺麗だと云った時よりもずっと穏やかで、まるで愛を囁かれた人のようだった。


 それが、幼い日に繰り返し唱えられた呪詛の結末なのだとしたら、あまりにも完璧で、それでいて不完全だった。
 彼はもう傷付くことはない。
 ただ受けいれている。
 諦めよりも潔く、自分の中の何かを、過去に置き去りにして。




 そんな君のために、君が心を乱さないために、俺は今日も君に「醜い」と呟く。

END
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