この静かな夜 君を好きだと自覚して、世界が変わった。
毎朝の通学が楽しくて苦しくて堪らない。
いつもの座席でいつものように本を開く君。
ちらりと見えるタイトルは、ほとんど毎日のように変わる。
俺はそれを頭に叩き込んで、帰宅途中に本屋に寄る。
君が読む本は小難しい文学作品だったり流行りの小説だったり、およそ学生には関係ないと思うような専門書だったりして、俺を驚かせる。
俺にも読めそうだと思ったものは買ってみて、君はこれをどんな風に感じたのかだとか、感動で涙を流したりしたのだろうかと考えながら、貪るように読み耽った。
それが君の心に多少であろうと影響を及ぼすものであるのなら、俺はすべてを吸収してしまいたい。
君と分かち合いたい。
退屈な世界が色を変えてゆく。
静かな夜、君はもう眠ったろうか、それとも――
君を思いながらそっとページを捲る。
この静かな夜。
END