霧鐘一打


「政宗殿……貴殿には迷いというものがないのだろうか……?」
 その決断に、幸村は畏れと僅かな憧憬を以て眼前の政宗を見た。
 歳としては僅かばかりの差であるはずが、目に見えぬ何かが確かに己の前に立ち塞がっているように感じた。
 政宗は笑う。
「No、それは違う」
 俺は迷う。
 あちらか、こちらか。はたまた別の手か。
 迷って迷って迷い抜いて。
 最後に小十郎が背中を押す。
 己の信ずる道を往けと。
 迷いはすべて引き受けると。
「だから俺は、強い」
 この魂は己ひとりのものではないから。
「You see?」

END
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