夜半の体温 不意に目が覚めた。低血圧の自分にしてはやけにはっきりとした目覚めだった。周囲の暗さと静けさに今が夜中なのだと気付く。それから唐突に思い出した。今日はやけに疲れていて、帰宅するなり転寝をしてしまったのだ。電気も点けっ放しでクーラーを25度に設定したままソファに寝転がった。
さすがに風邪を引く、と思ったが、暗闇の中で感じる空気は暖かかった。空調は弱められ、身体は肩口まですっぽりとふかふかのタオルケットが掛けられている。背中に感じるのはソファではなく、最近買い替えたちょっと値の張るベッドだ。
隣に人の気配を感じた。暗闇の中で自分以外の呼吸を感じることに安堵することがあるとは思わなかった。
一体どんな顔をしながら自分をここまで運んで来たのかと思いながら、自然に浮かぶ笑みを抑えられない。
手探りで恋人の腕を探し、甘えるように擦り寄った。
残暑の夜の体温は熱くもなく、ただ優しく温かかった。
END