眠り姫


 綺麗な、綺麗な人。
 俺の恋人はとても綺麗だ。心も、身体も。綺麗で、綺麗で、綺麗過ぎて、穢れを受け入れることが出来ない。
 綺麗だね、とても綺麗だ。
 眠る恋人を抱き締め、しみひとつない滑らかな肌をなぞる。意識のある時は決して出来ない行為。一度だけ試したことがあるがあれは悲惨だった。悲鳴を上げのたうつ恋人を殴りつけて馬乗りになり着衣を破り捨てて強姦する羽目になった。あの時は可哀想なことをした。行為が終わった後が一番大変だったように思う。
 錯乱する彼もまた可愛かったのだけれど。
 それでも俺は恋人を愛しているから、痛みも哀しみも与えず、俺の想いを受け止められる方法はないかと考えた。
 そうして、彼は眠り姫になった。
 俺は意識のない身体を優しく抱き締め、愛撫し、揺さぶり、頂きへと導く。その間、声を上げもしなければ抵抗することもない。その身の奥に俺の想いを受け入れ、ただ横たわる――彼は綺麗だ。
 俺は彼を抱き締め、愛を囁き、共に眠る。
 彼の眠りが覚める、その許された間際まで。

END
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