まじない


 好きな人が出来た。でも怖くて好きだなんて云えない。なのに俺は欲張りだから見てるだけで幸せ、だなんて云える筈もないのだ。君のことを考えるだけでこんなにも苦しい。
 どうにかしてこの想いを発散させてやらなければ自分はおかしくなってしまう。そういえば中学生の頃なんかは女子がよくおまじないだか願掛けだかでおかしなことをやっていたなあと思い出した。今思えばあの子たちのしていたことにも納得出来る。好きで好きで好き過ぎて、何か行動を起こさないとどうにかなってしまいそうなのだ。
 その日、俺は仕事帰りに立ち寄ったコンビニで一冊のノートと緑色のボールペンを買った。風呂上がりにビールの缶を携えてガラステーブルの上にノートを開く。
 まっさらなノートに初めて書き込む感触が君を汚してしまっているようで少し申し訳なく思った。

伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗伊達政宗……

 少しでも多く君の名前を書けるようにと小さな文字でびっしりと書き連ねて行く。これって端から見たら相当ストーカーなんだろうなと思いながら、まだやっと1ページ埋まり切るくらいしか書いてないのにもう痛み始めた手首をさすった。
 このノートを君の名前で埋める頃にはまじないが叶うなんてことは思ってないけど、君に告白する勇気くらいは湧いているかも知れない。
そう思うと不思議と笑いが込み上げた。

END
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