破壊衝動


 時折、恋人は癇癪を起こす。そして力任せに暴力を振るうのだ。俺は抵抗出来ない、する気もない。そんなところも含めて彼を愛しているからだ。
 ひとしきり暴力を振るうと途端に恋人は後悔の念に駆られてごめんごめんと泣いて謝る。謝るくらいなら最初からしなければ良いのに、とは思わない。彼の身の内に抱えて来たどうにもならない感情が俺には分かるから。俺を殴ることで一時でも彼の寂しさや怒りや孤独感が薄れるなら俺にはそれが至上の喜びに思えてならない。
 泣きじゃくる恋人をそっと抱き寄せて慰める。大丈夫だよ痛くないよ平気だよ。それは嘘だと俺も恋人も知っているが、その言葉で彼は赦された気持ちになる。救われる。まだ自分は愛されているのだと安堵する。
 そう、愛しているよ政宗、他の誰もお前を知らなくていい。俺だけが知っていれば良いんだ。
 そう思って嗤う俺を、お前は知らない。

END
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