毒姫


「やめろ!」
 組み伏せようとする男を睨み上げる。男は笑っていた。
 どうして。
 男の唇が笑みの形を残したまま降って来る。
 やめろ! やめろ、やめろやめろッ!!
 知っているのに、分かっているなずなのに、どうして。
 死んでしまう。
 殺してしまう。
 嫌なのに、どうして。
(いや、だ――)
「政宗」
 流れた涙を、男の唇が舐めとった。濡れた唇がそのまま俺の息を塞ぐ。
(嗚呼、どうして)
 毒しか知らない俺の舌に、男の舌はまるで極上の蜜のように甘く――。
 そうして男は、微笑んだその唇から赤い血を滴らせ、俺の上で冷たくなっていった。

(酷い男、)
(たとえこの唇が愛を紡いでも)
(愛を望むはずもないと知っていたはずなのに)
(愛がお前を殺した)

END
『毒姫』パロ
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