偽善、隷属を誓い


「お前の髪見てたらイライラする」
 オレンジ色の髪を鷲掴んで引きずり倒した。尻餅を突いた佐助がへらりと笑って「ごめんね」と呟く。
「……なんだよ、それ」
 次の日、オレンジ頭はいなくなっていた。
 違う。そうじゃない。ここにいるのに、違う。お前は誰だ。黒い髪、短くなった髪。そうじゃないんだ。
「似合わないかな」
 へらりと笑った顔さえ違って見える。お前は誰だ。そうじゃないんだ。
「似合わねえよ」
 そう云えば、明日にはまた変わるのか。昨日のお前が戻るのか。違うんだ。昨日のお前はもういない。
「え、ちょっ……ッ伊達ちゃん!?」
 ごめん、ごめん、ごめん、俺は知ってたのに、お前のオレンジ色は産まれた時にはもうそこにあったのに、俺は一時の感情でそれを否定した。お前の存在を否定した。
「佐助、俺を詰ってくれ」
 蔑んでくれ。嘲ってくれ。そうでないと嫌悪感に死んでしまいそうだ。せめて、もう一度あのオレンジ色を目にする日まで。
 俺をお前の足元に、跪かせてくれ。

END
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