携帯電話 ぼんやりと天井を見ていた。
やけに煩いなと思ったら、いつもの癖で換気扇を回していたらしい。
携帯も持ち込んでいた。
癖って怖いな、と思った。
癖ついでに、メールでも打とうか。それとも電話にしようか。ひどくアイツの声が聞きたいと思った。
なんだこれ。未練ていうやつなのか。
何で俺がアイツに未練なんか。
そう思いながら無意識に右手でキーを押していた。いつもとは逆の手のせいか早く打てない。それとも力が出ないからか。ひどく億劫だった。
打ち終えたメールを送信した。正直アイツからの返事があるとは思えない。着信拒否されてるかも知れない。最悪解約してるかも。
まあ、別にどうでも良いんだけど。
バスタブの縁に載せていた右腕が滑って、携帯ごと湯の中に落ちた。
しまった、防水仕様じゃないのに。
バスタブの底に沈んだ携帯は、赤い色に遮られて見えない。
携帯なんて壊れてしまっても良いけれど、アイツが万に一つ返事をくれたとしても見れないんだなあ、と思うと。
少し胸が痛んで、俺は目を閉じた。
END