初恋は実らない/4000Hit記念
※アニメ派の方にはネタバレを含むお話です。



小学校の時からずっと好きだった。
中学生になって、やっと気持ちを伝えて。
それでも、想いは伝わらなかった。
”自転車に全力を注ぎたい”
そんなこと言われたら、何も言い返せないじゃない。
真面目で努力惜しまない、あなたが自転車に乗る姿が何より好きだったんだから。




振られたのが気まずくて、距離を置きたくて。
わざと遠い学校を選んで進学した。
だけど自転車に乗る彼を忘れることが出来なくて、私は自転車競技部のある学校を選んだ。
おかげで寮生活になって不便も多いけど、朝が苦手な私には良かったと思う。
初めに隣の席に座った結月とは部屋が隣だったこともあって、親友になった。
自転車競技部のマネージャーになった結月を手伝うことも多くて、私は結局自転車から離れられないんだと思った。
そうして一年が過ぎて、私は二年生になった。






「おい小鳥遊!ドリンク足りてねェぞ!」

荒北先輩は外周から戻るなり、私の所へやってきた。
汗びっしょりなのにタオルも使わず歩いてきて私の頭にコツンとボトルをぶつける。

「す、すみません!今すぐ持ってきます!」
「テメーの補充はおっせぇんだよ、バァカ!」
「まぁまぁ、靖友。雛美ちゃんはマネじゃないんだからそう怒るなよ。」

走り出そうとした私を制止して、新開先輩が頭を撫でてくれる。
そこへ結月がタオルを持って走ってきた。

「雛美ごめん!ドリンク頼んだ一年の子、数間違えたらしくて足りないの!急いで作ってくれる?」
「うん、すぐ行ってくる。 荒北先輩、新開先輩すみません、すぐ作りますから!」
「ンだよ、小鳥遊が作ったんじゃねーのかよ。」

道理で薄いわけだ、と二人が口を揃えて言う。
まだ慣れてない一年生に任せて、確認しなかった私のミスだ。
私は2人に頭を下げ、その場を後にした。





ドリンク用のタンクに水を入れていると、一年生の子が謝りに来た。
泣きそうな顔で謝っているから、私のミスであることも伝えると頭を下げてマネの仕事に戻っていった。
素直に謝れる、とてもいい子だ。
部活やめたりしないといいなぁ、そう思っていると後ろで砂利を踏む音が聞こえてきた。
戻ってきたのかもしれない、そう思って振り向くと荒北先輩がそこにいた。

「あ、すみません!ドリンク今できた分お持ちします!」
「アー、勝手に入れるし気にすんな。」
「そういうわけには……あ、私が入れますから!」

荒北先輩の持っていたボトルを受け取って、ドリンクを入れる。
その動作をずっと見られていて、妙に緊張した。

「お待たせしてすみません。」
「アンガトネェ。」

荒北先輩はボトルを受け取ると、近くの石段に腰掛けた。
休憩中かな?
私は会釈して作業に戻った。
するとふっと影が出来て、振り返ると荒北先輩が後ろに立っていた。

「どうかされましたか?」
「小鳥遊って何でチャリ部のマネになんねェのォ?」

やってること変わらねぇだろ、そう付け加えた荒北先輩は私を見下ろしている。
短いけど黒くてサラサラした髪が太陽に当たってキラキラ見えて、ふっと彼のことを思い出した。
パーマっぽい黒髪が、自転車に乗る度風に少しなびいてそれを見るのが大好きだった。
心がずきりと痛む。
何も言えずにいると、荒北先輩は私の前にしゃがみ込んだ。

「マネやりたくねぇ理由って何ィ?」
「……試合、とか見に行くのが嫌で。マネじゃなくてお手伝いなら、校内だけでも何も言われないですから。」
「ハッ、なにそれ。」

荒北先輩はだんだん俯いてしまった私の頭に、そっと手を置いた。
ごつごつした手が、少し乱暴に撫でてくれる。
それが何だか心地よくて、ポロポロと涙が頬を伝った。
きっと荒北先輩は呆れているんだろう。
みっともない所ばかり見せていられない。
涙をぐいっと拭って顔を上げると、荒北先輩と目が合った。
ほんのり赤いその頬は、外周に行っていたせいだろうか。
ふっと目を逸らした荒北先輩は、首に手を当てて何か言っている。
でもその声は小さくて良く聞こえない。

「すみま、せん。もう一度お願いします。」
「だからァ!俺だけのマネやればつったのォ!」

頬を真っ赤にしながら、荒北先輩が私を見た。
その目は真剣で、冗談を言っているようには思えない。
マネの勧誘にきただけで、こんなに顔を赤くするものだろうか。
……すごくポジティブに受け取ってもいいんだろうか。
私の顔まで、つられて赤くなる。

「……何か言えよ。」
「あの、でも私……中学の時の失恋、引きずってて、その」
「知ってる。」
「え?」
「小鳥遊が好きだったヤツがチャリ乗ってることも、それずっと引きずってることも知ってンだよ。」

頭をがりがりと乱暴にかいて、目を逸らされた。
きっと私のことを話したのは結月だろう。
口止めしなかったのは私だから仕方ないけど、まさかこんなことになるなんて。
少しパニックになった。
荒北先輩が?いつから?どうして?
ぐるぐると頭の中で同じ疑問がループし続ける。
それを遮ったのは、荒北先輩のため息だった。

「俺のこと嫌ェ?」
「いえ!そんなことはないです!」
「じゃぁ付き合えよ。」

真っ直ぐに見つめてくるその目に、私は逆らうことが出来なかった。

「よ、よろしくお願いします。」
「おう。」

荒北先輩の手が、私の頭をポンポンと撫でた。
そこには私たちしかいなくて、タンクから水が零れる音だけが響いていた。









部室に戻ると結月には質問攻めにされたり、部員の人にはからかわれたりして大変だった。
それでも困っていると必ずきてくれる荒北先輩のおかげで、暫くするとそんなこともなくなった。
もうすぐIHなこともあり、色恋沙汰にかまってられるほど余裕がなくなったのもあるだろう。
出場メンバーも決まり、練習はさらに過酷なものになった。
荒北先輩に呼び出されたのは、そんな時だった。
練習後に呼ばれることなんて滅多にない。
急いで向かうと、荒北先輩はジャージのままだった。

「荒北先輩!着替えないと風邪引きます!」
「まだ自主練すっからいんだよ。それより……雛美。」
「何ですか?」

名前を呼ばれて、少し驚いた。
呼び捨てにされることが嫌なわけじゃない、ただ初めてそう呼ばれたことに少し緊張した。
真剣な顔をした荒北先輩は、少し気まずそうだ。

「雛美がレースに来たくねェのは知ってる。けど……最後だ。」

付き合ってからも、一度も荒北先輩のレースを観に行ったことはない。
”こなくていい”そう言ってくれた言葉に甘えていた。
ただ、試合会場で彼に会いたくない私の我儘を聞き入れてくれていた。
まだ彼が自転車に乗っているかどうかは、わからないけど。

「俺は三年、IHが最後のレースになンだよ。だからァ……来てくんねェ?」

お前が来たら俺絶対勝つからァ、なんて言われていかないわけがない。
今まで我儘を聞いてもらった分、荒北先輩のお願いを叶えたい。
わたしはゆっくりと一度だけ頷いた。

「行きます。荒北先輩を応援しに行きます。だから……勝ってくださいね!」

俺はアシストだけどなァ、そう言いながらも嬉しそうに笑う荒北先輩に私もつられて笑った。
いつの間にか、私も荒北先輩に惹かれていた。
ぶっきらぼうだけど優しくて、私を想ってくれているのがちゃんとわかる。
忙しくてデートは出来なくても、メールや電話してくれたり寮まで送ってくれる。
口で伝えることはしなくても、行動でしっかり伝えてくれる。
私は荒北先輩が大好きだ。
そっと距離を詰めて、荒北先輩を見上げた。

「靖友先輩って、呼んでいいですか?」
「ったりめーだろ、バァカ。」

靖友先輩はそう言うと、私の顎を持ち上げた。
まるでそうすることが自然だとでもいうように、私たちはそっと唇を重ねた。
IHは、もうすぐだ。








IH当日。
福富主将と結月の配慮で、私も関係者として動かせてもらえることになった。
私だけ宿には泊まらず通いではあるけど、どうしても無理という距離じゃなくて良かった。
靖友先輩は最後まで泊まることを勧めてくれたけど、部員じゃない私が部費を使うことに気が引けて結局断った。
私だけ公共のバスで行ったため、テントを探していると少し迷ってしまった。
レース前に靖友先輩に会いたかったのに。
携帯を取り出していると、後ろからポンと肩をたたかれて振り返った。

「雛美、久しぶりだな!」
「純太……。」

そこには、昔好きだった手嶋純太がいた。
変わらないその姿に、胸がちくりと痛む。

「レース観に来たのか?」
「あ、うん。先輩たちが出るから。」
「うちもなんだ。俺はサポートだけど。」

そう言って笑う純太が、少し懐かしい。
ドキドキするのはなぜだろう。
それと同時に、やはり胸が少し痛む。

「どこの学校なんだ?うちは総北。」
「箱根学園だよ。」
「箱学、か。」

純太の表情が少し険しくなる。
うちは王者と呼ばれるような学校だ、当然純太も知っているのだろう。
なんだかとても気まずい。

「お互い、頑張ろうね。じゃぁ……」

そう言って立ち去ろうとすると、純太が私の手を掴んだ。
驚いて振り向くと、純太はふわりと微笑んだ。

「携帯、変わってないか?」
「え?あ、うん。変えてないよ。」
「そっか、じゃぁまたあとで連絡するから。」

そう言って手を放した純太に軽く手を振って、私は立ち去った。
純太が何を考えているのかわからない。
振った相手に、どうして笑いかけたり連絡するなんて言うんだろう。
私は行き場のない気持ちを抱えたまま、走り出した。





どれくらい走っただろう。
テントを探すことよりも離れたい気持ちが勝って、私は気づけばさらに迷子になっていた。
すると後ろから私を呼ぶ声がする。
振り返ると、一番会いたかった人がそこにはいた。

「雛美!」
「靖友、せんぱい!」

なぜか私の目からは涙がこぼれ、気づけば泣いていた。
そんな私を靖友先輩は抱きしめてくれる。

「どこ行ってンだよ、探しちまったじゃねーか。」
「ごめ、なさ……。」
「何泣いてンだよ。俺がいなくて寂しかったとかァ?」

そう言いながら頭を撫でてくれる手は、いつもより優しい。
鼻をすすって、私もぎゅっと抱き着いた。

「寂しかったです!会えてよかったです。レース、頑張ってくださいね!」

そう言って顔を上げて笑うと、靖友先輩の頬が少し赤くなる。
こうして照れる靖友先輩はとっても可愛いと思う。
靖友先輩は”おう”とだけ返事をして、にっこり笑った。
大丈夫、私が好きなのは靖友先輩なんだから。
純太になんか揺さぶられたりしない。
そう、心の中でそっと唱えた。







靖友先輩が教えてくれた地点で待っていると、すごいスピードで走ってきた。
二校並んでいる、接戦だ。
私は出せる限りの声で靖友先輩を応援した。
靖友先輩に聞こえているだろうか、私の気持ちは届いているだろうか。
ちらりとこっちを見た靖友先輩と目が合った気がした。
気のせい、じゃないよね?
レースが終わって靖友先輩の所までいくと、ぎゅっと抱きしめられた。

「雛美!聞こえたぞ!」
「あ、あ、アシストお疲れ様でした!」
「アンガトネェ!」

嬉しそうに笑う靖友先輩は、私の頭をぐりぐりと撫でた。
結局3校が同着だったけど、IHはあと二日もある。
大丈夫、靖友先輩がいるんだもん。
箱学が勝つにきまってる。
そういえば、あと2校はどこだったっけ?
その疑問はとても小さくて、すぐに消えてしまった。







二日目は補給所にこい、そう言われていたので大人しく待機していた。
補給の受け渡しは先輩や結月がするというので、その手伝いを少しさせてもらった。
靖友先輩の分をする?と聞かれたけど、上手く出来る自信がなくて断った。
私のせいで遅れでもしたら大変だ。
その分しっかり応援しよう。
そう思い、補給所のテントから少し進んだあたりで選手が来るのを待った。
暫くすると選手たちが見えてきた。
最初は京都伏見、箱学は2番だった。
暑さのせいだろうか、先輩たちはみんな少し疲れて見えた。
それでも私に出来るのは、応援することだけ。
必死で叫んで、先輩たちを応援した。
その声は届いたのだろうか。
選手たちがちらりとこちらを見てくれて、その姿に心が跳ねた。
もちろん、靖友先輩とも今日はしっかりと目が合った。
私はさらに大きな声で、先輩たちを見送った。
二日目の1位は、箱学だった。
ゴールは見られなかったけど、福富主将が一番でゴールしたそうだ。
それを聞いて、涙が溢れた。
結月と抱き合って喜んだ。
暫くして、選手たちがテントに戻ってきた。
お疲れ様でした、そう言いながら迎え入れていると靖友先輩が指でちょいちょいと私を呼んだ。
私は促されるままに外にでた。

「聞こえたぜェ、雛美の声。」

汗びっしょりで、しんどいはずなのに私にまず声をかけてくれたのがすごく嬉しい。
頭をぐりぐりと撫でて笑う靖友先輩は、とても嬉しそうだから。
私もつられて笑う。

「今日も、お疲れ様でした。靖友先輩すごくかっこよかったです!」
「アンガトネェ。」

いつもは褒めるなって怒るのに、そう思っていると肩に頭を置かれた。
ふわりと靖友先輩の匂いがして、その重みが少し心地いい。

「あと一日。あと一日でIHが終わる。しっかり応援頼むぜぇ。」

靖友先輩それだけ言うと、顔を上げた。
応援することしかできない、でも。
それが靖友先輩の力になれるなら。

「明日も頑張ってください!」
「おう、おめーも頑張れ。」

ポンポンと頭を撫でられて、私たちはテントに戻った。






IH三日目、今日が最後だ。
今日で全てが決まり、全てが終わる。
今日も補給所で待てと言われていたので、昨日と同じようにテントの少し先で待っていた。
昨日とは違う黄色いジャージの学校と同じタイミングで箱学がやってきた。
靖友先輩は昨日より少し疲れて見える、大丈夫だろうか。
それでも私にできることは一つ。
必死に声を張り上げて、応援した。
でもどれだけ声を出しても、靖友先輩はこっちを見ない。
不安に揺さぶられる。
大丈夫だろうか。
嫌な予感がした。
そしてそれは、当たってしまった。
3日目スプリントリザルトの手前で、靖友先輩がリタイアしたと言う。
私は走った。
靖友先輩がいるテントを探して全速力で、走った。
救護テントにたどりついたときには足がガクガクしていて、息も出来ないくらい苦しくて。
テントに入ると、靖友先輩が私をちらりと見た。
口角を少し上げて笑ったけど、その口元は震えていた。

「悪ィ、ゴール……出来なかった。」
「そんなこと!それより体は!?」
「ハッ、見りゃわかんだろォ?ボロボロだっつの……。」

いつもと違う覇気のない声は、少し震えている。
手で顔を覆ってしまったから見えないけど、泣いているんだろうか。
ベッドの横に座って、靖友先輩の手を取った。

「靖友先輩……。」

静かに、靖友先輩は泣いていた。
私も涙が溢れてくる。

「福チャン……頼んだぜェ。」
「福富、主将なら、大丈夫です!きっと、大丈夫です。だから。」
「ハッ。雛美が泣いてどーすんだヨ。」
「ご、ごめ、なさい……。」

そう言って頭を撫でてくれる靖友先輩の手は、やっぱりいつもと同じで優しい。
それにまた涙が出る。
靖友先輩、お疲れ様でした。
先輩が一番、かっこよかったです。
でもそれは、まだ心の中にしまっておこう。
箱学が優勝するその時まで。







優勝したのは、総北という高校だと放送で知らされた。
それを靖友先輩とテントの中で聞いて、二人で泣いた。
あんなに練習したのに。
あんなに頑張ったのに。
優勝には、届かなかった。
私の言葉は、行き場を失ってしまった。

「雛美。」
「は、はい?」
「応援、ありがとなァ。勝てなくて、悪ィ……。」
「そんな……。」

そう言って項垂れる靖友先輩に、私はかける言葉が見つからなかった。







レースが終わり、表彰式も終わった。
会場全体が片付けに入っている頃、携帯が鳴った。
ディスプレイには純太と書かれている。

「……もしもし?」
「あ、雛美?俺だけど……今ちょっと会えないか。」
「え?」
「IH、終わったらまたあんまり会えなくなるだろ。最後に会えないか?」
「……ん、わかった。」

電話を切って言われた場所に行くと、純太が私に気づいてひらひらと手を振っていた。
にこやかなその顔を見て思い出す。
優勝したのは総北……純太のいる、学校だ。
頭がズキズキと痛んだ。

「雛美、呼び出してごめんな。」
「ううん、どうかしたの?」
「その……さ。IH終わったら言おうと思ってたんだ。」

純太は一歩私に近づいて、にこりと笑う。
何だろう、胸騒ぎがする。
純太はすっと頭を下げた。

「あの時はごめん。俺、本当は雛美のことが好きだったんだ。」

だから俺と、純太がそう言いかけた時私は体を後ろに引っ張られた。
首に回された手が靖友先輩の物だとすぐに気付いた。

「靖友、先輩っ。」
「雛美が好きだったヤツってこいつかァ?」

不機嫌そうにそう言う靖友先輩は、純太をジロリと睨みつけた。
純太は少し後ずさって押し黙る。
私は頷くことしかできなかった。

「雛美。俺とこいつ、どっちにすンだよ。」
「え?」
「な、どういうことだ?」
「俺やめてコイツと付き合うのかって聞いてンだよ。」

靖友先輩と、純太が私を見る。
純太の目には、困惑の色。
靖友先輩の目には不安の色。
二人の視線が、私に突き刺さる。
でも、どっちが好きかなんて。
聞かれなくたって決まっている。

「ごめん純太。私が今好きなのは、靖友先輩だから。」
「そっ……か。もう2年だもんな、他に好きな人くらい……。」

遅かったよな、そう言って純太は靖友先輩に手を差し出した。
靖友先輩は、その手をしっかりと握る。

「IHお疲れ様でした。」
「総北もなァ。」
「じゃぁ、俺はこれで。」

純太は軽く手を振って行ってしまった。
残された靖友先輩は、向き直ると私の頭を抱えるようにして抱きしめてくれた。

「どっかいっちまうかと思ったじゃねぇか。」

ぼそりと零した靖友先輩は、ため息をついた。
心配かけてしまった申し訳なさと同時に、自分がいかに気持ちを伝えられてなかったかということを思い知らされた。

「靖友先輩。」
「んだよ。」
「IHお疲れ様でした。靖友先輩が1番かっこよかったです。私、靖友先輩が大好きです。」

そう言って顔を上げると、靖友先輩は目を見開いている。
変なことを言っただろうかと少し不安になる。
でもその不安は、だんだん赤くなる靖友先輩の顔を見て吹き飛んだ。

「バッ…バァカ!俺のが好きに決まってんだろーが!」

そう言って、またぐりぐりと頭を撫でられた。
抱きつくと、靖友先輩の胸の音が気持ちいい。
きっと今、私も同じくらいドキドキしてる。
ねぇ、靖友先輩。
これから先、靖友先輩が出るレースは必ず応援しに行きますね。
それで誰よりも大きな声で応援します。
だからまた、私を見つけてくださいね。




カウンター記念


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