その鏡は誰のため?/2000Hit記念
彼氏である靖友くんから、姿見を買ったと言われたのはつい二時間ほど前だ。
泊まる時に毎回私が洗面所で服装チェックするのにぶつくさ言っていたから、私のために買ってくれたんだろう。
さっそく許可をもらい、遊びに行くことにしたのだけど。
まさかこんなことになるなんて。
「雛美チャン、立ちバック好きじゃナァイ?」
思ったより大きくて素敵な壁がけの姿見に感動していたら、靖友くんはニヤニヤしてそう言った。
すっと伸びてきた手を払いつつ、私は少し距離を取る。
「そんなことない、けど?」
「嘘つくんじゃねぇよ。」
クツクツと笑う靖友くんは、たちが悪い。
逃げようにも両手を掴まれ、簡単に組み敷かれてしまった。
両手を頭上に上げたままひとまとめにされ、反対の手が私のニットの中にするりと侵入する。
ひやりと冷たい手に、体が跳ねた。
「やっ。」
「悪ィ、冷たかったァ?」
そう頬ずりしながら囁かれれば、先ほどの冷たさなど吹き飛んでしまう。
耳に持った熱に嫌でもその気にさせられる。
耳元でスンスンと鼻を鳴らしながら匂いを嗅いでいたかと思えば、ペロリと首筋を舐められた。
「んんっ、そこ、やぁ……。」
「スキ、の間違いじゃナァイ?」
靖友くんの吐息が熱くて、触れたところから熱を持つ。
肩に強く歯を立てたかと思えば優しく舐め上げられ、痛みと快感にクラクラする。
「いたっ…んぁ、ひぅっ。」
「その気になってきたァ?」
「その気どころじゃないよ、バカッ。」
キッと睨むと、なんとも意地悪そうに笑う。
休んでいた手がまたニットの中を進み、ブラのホックをいとも簡単に外される。
最初はあんなに手こずってたのに、どんどん慣れているのがまた悔しい。
靖友くんが舌を出して私を見ているから、真似して出したら噛みつかれた。
「いひゃい」
「うまそーだったからァ。」
かなり強く噛まれたのかジンジンとする舌を引っ込めれば、追うようにキスされた。
口をこじ開けて侵入してくるそれは私のそれにねっとりと絡みついてくる。
手は躊躇いなく胸の突起をつまみ上げながらやわやわと全体を包み込んだ。
我慢できない声が、靖友くんの口に消えて行く。
息をしようにも離してくれなくて、軽く酸欠になる。
離れてくれた時にはもう、すっかり息が上がっていた。
それを見て靖友くんは満足そうに笑って、思わずその顔にゾクゾクした。
下腹部にきゅっと力が入る。
つられて足が動いたのに靖友くんが気付いた。
くすりと笑って、手が解放される。
「雛美チャン、今日はずいぶん誘ってくれるじゃナァイ。」
「えっ?」
「疼いてんだろ。」
そう言って下腹部触れたかと思うと、スカートの中に手が入ってくる。
つい体を捩ると、靖友くんの手が止まる。
じっとこっちを見つめたかと思うと、またにやりと笑った。
「鏡の前、立って。」
「な、なんで?」
「いいからァ。ホラ、立てよ。」
手を引っ張られ、鏡の前に立たされる。
鏡に映った、中途半端な姿の自分に恥ずかしくなる。
ニットはめくれあがっているし、ブラは落ちかけているし、靴下だって半分ずり落ちていた。
慌てて身なりを直そうとすれば、靖友くんに止められてしまう。
「着てどーすんだよ、脱ぐんだろーが。」
「いや、ちょ!鏡の前とかなし!」
「ッセ、黙って脱げ。」
するすると私の服や下着を剥ぎ取られ、スカートとショーツとかろうじて靴下をはいているくらいだ。
それに引き替え、まったく着衣を乱していない靖友くんはずるい。
私は振り返って、靖友くんのシャツを引っ張った。
「私だけずるい!靖友くんも脱いでよ。」
「へいへい。」
脱いだ靖友くんの体は、私と違って筋肉質でプニプニしたところなんてなくて余計恥ずかしくなった。
鏡の前から逃げるように靖友くんを後ろから抱きしめると、そっと頭を撫でられた。
そっと顔を上げるとそのままキスされて、あろうことか鏡の前に戻される。
せっかく逃げられたと思ったのに……。
「そのまま、鏡に手ェついて。」
「手?」
「ん、両手。」
逆らっても勝てるわけがないので、素直に言うことを聞く。
すると靖友くんは私の後ろに屈み、足を開かせた。
「ちょ、まって!それは恥ずかしい!」
「しっかり見とけよ。」
私の制止はもはや聞こえてないのだろう。
そっとショーツの隙間から指が入ってきて、敏感なところをくちゅくちゅと掻き回される。
突然与えられた快感に足がフラフラし始めると、ペチンとお尻を叩かれた。
「座るにはまだ早ェんじゃねぇの。」
「で、でもっ……それ何かダメ。」
「キモチイイ?」
「……うん。」
素直に返せば機嫌もよくなったようで、そっとショーツを脱がされた。
足をつーっと液体が流れていき、靖友くんがそれをぺろりと舐めとった。
普段は見えない部分が、鏡のせいですべて見えてしまい何だか変な感じだ。
靖友くんは足で私を支えながら、器用にゴムを着けていく。
敏感なところに当たるか当たらないかで添えられた足がもどかしくて、腰が動いてしまった。
それを目ざとく見つけた靖友くんに、後ろから囁かれる。
「待ちきれねぇの?やーらしぃ。」
「ち、ちがっ……」
「あ、そう。じゃぁやめとくゥ?」
そう言って足をどけられ、私から一歩下がった。
ここまでされてお預けはさすがにつらい。
「ごめんなさい、違わない、です……。」
「よくできましたァ。」
にやりと笑って、後ろから靖友くんのそれが添えられる。
「鏡、ちゃんと見てろよ。」
私が鏡の方を向いたのを確認してから、ゆっくりと入ってきた。
心なしかいつもより大きいそれは、私の中でさらに大きくなった気がする。
少し苦しくて目を閉じれば、靖友くんに耳を噛まれた。
「ちゃんと見てろって。」
「う、うん……。」
吐息が熱くて、ドキドキする。
腰と体を支えてくれている手が熱くて、そこから溶けてしまいそうだ。
全部入ったかな、そう思った時に大きく一度打ち付けられた。
「んぁっ。」
「ハッ、締めすぎだからァ。」
「し、しめてなっい……」
意地悪そうに笑う靖友くんの顔は少し赤みを帯びていてそれがさらに私を興奮させた。
無意識のうちに下腹部に力が入り、奥がムズムズする。
「しっかり手ェついとけよ。」
「うん……あっ、んんっ。」
靖友くんはゆるゆると動き始めて、最初は小刻みだったのがだんだん大きくなっていく。
奥に当たる度に何とも言えない快感に襲われて、思わず目を閉じると今度は首を噛まれた。
「目ェ閉じてんじゃねぇよ。」
「ひゃい……。」
「しっかり見とけ。」
そう言って腰を振る靖友くんも、それに喘いでいる自分の姿も鏡にすべてが写し出され、誰かに見られているようですごく恥ずかしい。
そのせいかいつもより興奮してしまい、靖友くんが支えてくれなければ立っていることすらままならない。
「や、んっ、そこだっめ……んんっ」
「奥いいのォ?かーわいい。」
意識が飛びそうになったところで、首の付け根に噛みつかれる。
痛みと快感で頭がおかしくなりそうだ。
「やぁぁっ、噛んだらだめっ、変なる、から!」
「なっちまえよ。」
一際強く噛まれて、靖友くんに奥を刺激されて、私は全身が痙攣したように体から力が抜けていく。
支えてくれてた靖友くんの手にすら感じすぎて、体が変になったみたいだ。
靖友くんは嬉しそうに笑いながら、私を抱きかかえてベッドまで運んでくれた。
「やっぱ雛美チャン、立ちバック好きだよね。」
そう言ってキスされて、それにもまた体が震えるほど感じてしまう。
私には言い返す気力なんて、残ってなかった。
優しく囁いて嬉しそうに笑う靖友くんには、私はまだ当分敵いそうにない。
カウンター記念