恋に恋して




甘いルックスに優しい声、私は一目で恋をした。
色素の薄い赤茶色の髪が綺麗で、とても羨ましかった。
好きだと思えば思うほど、私の胸はひどく締め付けられて息苦しくなる。
会いたい、話したいと思うのにいざとなると何一つ声にならない。
それでも新開くんのそばにいたくて、誰よりも近くに行きたくて。
私は告白する決心をした。




ある日の放課後、私は新開くんを呼び出した。
やってきた彼はこんなことに慣れているのかもしれない。
特に緊張する様子もなく、いつも通り優しい笑顔で現れた。

「話ってなんだい?」
「えっと、その……私、新開くんが……」

俯く私に、新開くんはクスリと笑った。
やっぱり私なんて……そう思った時、意外な言葉が降ってきた。

「俺も小鳥遊さんのこと好きだよ。」
「ふぇっ!?」

慌てて顔を上げたら変な声が出てしまった。
口元を抑える私を見て、新開くんはまたクスリと笑った。

「俺でよかったら、付き合う?」
「ぜ、ぜひ!」

思わぬ申し出に浮かれた私は、首をブンブンと振った。
そんな姿も新開くんには可笑しかったのか、クスクスと笑い声が聞こえる。
あぁ、なんて綺麗な光景だろう。
笑う新開くんをぼんやり眺めていると、視線に気づいた彼は私を見て微笑んだ。

「今日はもう部活に行くから。明日からよろしくな。」
「う、うん!部活頑張ってね!」

輝くような笑顔で部活へ向かう新開くんを見送って、私は大きく息を吐いた。
あの新開くんと、付き合うことが出来るなんて。
夢のようで今でも信じられない。
それでも頬をつねれば痛いし、この鼓動はきっと現実のものだ。
私は浮かれながら帰宅した。



翌日から、私は新開くんのそばで過ごした。
休み時間やお昼休みはともに過ごし、部活も見学させてもらったり。
ただ一緒にいる時間か長ければ長いほど、私は違和感を感じていた。
話せることがとても嬉しいのに、話せば話すほど新開くんは私の思っていた人物像と異なっていることを思い知らされた。
彼女がいるからと言って他の女の子からの差し入れを断ったり無下にしたりはしないし、誰とでも仲良く話す。
好意があるとわかっていても、優しく受け入れる。
嬉しいはずの一面が、立場が変わることで一変して見えた。
普通の男の子らしくグラビアだって見るし、好きな芸能人もいる。
男臭さが滲み出るような話には、耳を塞ぎたくなった。
そうして同じ時間を過ごすうち、私は疲れてしまった。
こんなのは新開くんらしくない、そう思えば思うほど目の前の人物がわからなくなってしまう。
そしてとうとう、私は彼にそれを伝えてしまった。

「新開くんが、何を考えてるのかわからないよ。」
「俺はいつだって隠してきたつもりはないんだけどな。」
「それでも、わからないの。苦しい。」
「……別れたいってことか?」

頷いた私に、新開くんはとても哀しい顔をした。
あぁ、こんな顔をする何て思っても見なかった。
黙りこくる私に新開くんは苦笑いして、小さなため息をついた。

「今まで、ありがとな。俺は楽しかったよ。」

それに同意できない自分がとても情けない。
新開くんは優しく微笑んで行ってしまった。
私は別れてから気づいた。
ずっと、新開くんに理想を押し付けていたこと。
新開くんはこうでなくちゃ、違うなんてありえない。
そんな思いがずっと心にあって、現実との違いに混乱していたんだ。
振り回して引っ掻き回した私のことを責めずに受け入れてくれた新開くんに、とても申し訳ない気持ちになった。




それからしばらくして、私はクラスメイトに告白されて付き合うことにした。
別に特別好きだったわけじゃない。
だけど"一ヶ月お試しでいいから"とまで言われれば悪い気はしなかったからだ。
ただ、付き合い始めてからの私は何だか物足りなさを感じていた。
優しさも、思いやりも、気遣いも。
どれを取っても新開くんの方が上で、私はどれだけ愛されていたんだろうと思いを馳せた。
思い出すほど、私の中には新開くんへの思いで溢れてきた。
あぁ、なんだ。
私はこんなにも新開くんを好きだったんだ。
付き合うまで新開くんが見えていなかった私は、付き合ってから自分を見失っていたんだ。
今だって忘れることが出来ないほど、私は新開くんが好きだった。
私はその気持ちをクラスメイトに告げて別れた。
傷つけてしまった私がまた付き合ってもらえるなんて思ってない。
だけど。
まだ好きでいるくらい、優しいあなたなら許してくれるよね。



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