28





少し歩けばちょっと良い飯屋もあった。
でもそこまで我慢できるとは思えない程腹が減っていたのもあって、結局俺たちは近くのファミレスで済ませることにした。
よく行くファミレスでも雛美は飽きないのか、いつも何にしようか悩んでいる。
そんな姿が可愛くて、つい口元が緩む。
さっきまでの着物姿も妖艶で良かったが、いつもの雛美はホッとした。

「ごめんね、せっかくのお正月だったのに。」
「別に一緒に食えりゃ何でもいいよォ。」
「じゃぁさ、夜は美味しいもの食べに行こうよ。この年だけど、お父さんがお年玉くれたんだ。」
「んーじゃぁさァ。」
「うん?」
「スーパー寄って帰ろうぜ。雛美の飯が食いてェ。」

嬉しそうに”お年玉”という姿が年下なんじゃないかと錯覚させる。
にこにこと嬉しそうに笑う雛美と飯を食いに行くのもいいけど、今はそれよりも…。
ニッと笑ってそう強請れば、雛美は少し照れたように笑う。
いつも自信のない雛美がそんな顔をしてくれることが俺は嬉しかった。

「そんなのでいいの?コース料理とか食べに行けるよ?」
「明日から箱根だろ?出かけるよりゆっくりしようぜ。」

そう言って腰に手を回すと、俺は雛美を引き寄せた。
外に出るより、触れたい。
その想いは伝わったようで、頬を染めた雛美はにっこりと笑う。
それを合図にするかのように俺は手を放すと、雛美の手を掴んだ。

「じゃ、とりあえずスーパーな。」

楽しみで足早に歩き出した俺に引っ張られるように雛美も少し後ろをついてくる。
その顔がふにゃふにゃと嬉しそうに笑っていて、俺の口元も緩む。
早く家に帰ろうぜ。




買い物を済ませてアパートに戻ると、俺はダウンを脱ぎ捨てた。
そしてそのまま雛美をぎゅっと抱きしめる。
首のあたりに顔を埋めて匂いを嗅ぐと、愛しい匂いに頭がふわりとした。
たった1日ですらこんなに恋しくなるなんて。
これでは休み明けが思いやられる。
そう思いながらも這うように鼻をこすりつけると、雛美は避けようと身を捩った。
その手首を掴んでこちらを向かせると、そのふっくらとした唇に口づける。
冷たい唇から漏れる熱い吐息がくすぐったい。
するりと滑り込ませた舌に遠慮がちに絡めてくる仕草がたまらない。
もっと深く口づけようとすると、雛美がバランスを崩してしまった。
慌てて腰を捕まえたおかげで支えてやることはできたが、先ほどよりもぐっと距離が近づいた。
ふと雛美を見ればさっきより紅く染まった頬の理由は自分のソレにあるんだろう。
キスだけで十分な硬度になったソレはぴったりと雛美にくっ付いている。
顔を伏せてしまった雛美に押し当てるようにさらに腰を引き寄せた。
ドキドキと自分とは違う早い鼓動が伝わってくるのが心地いい。

「や、靖友くっ。」
「我慢できねェンだけど。」

元より2人っきりになって我慢できる自信なんかあるわけない。
それでも甘えたようにそう囁けば、雛美が嫌がらないのは知っていた。
首に手を回してしがみ付いてきた雛美は俺の顔を引き寄せて唇に噛みつくようなキスをしてきた。
珍しく情熱的なそれに驚いたが、必死な姿がたまらなく可愛い。

「雛美。」

そう呼ぶだけでふわりと笑う。
ベッドに座らせて衣類を剥ぎ取りながら、そっとその白い肌に触れる。
外が寒かったせいか少し冷えていた肌は次第に火をともしたように熱くなり、体全体が潤ったように紅潮していく。
名前を呼ぶたびに俺の方へ顔を向けるその姿に興奮しながらも、その肌へ唇を寄せた。
頬から首、鎖骨と肩を通って腕へ降りる。
そしてわき腹から胸へと上がる頃には、雛美の体はすっかりピンクに染まっていた。
時折吸いついて付けた痕が雛美の色気を増していく。
めちゃくちゃにしてやりてェ。
そう思いながらも、ゆっくりと先へと進めていく。
次第に息が上がる雛美からは嬌声が漏れ、それを抑えようと眉間に皺を寄せている。
それを無駄だとでも言うように責め上げれば、諦めたのか素直に鳴き続ける姿が俺の欲望を掻きたてる。

「やす、ともくっ。やすと、もくんっ。」
「ナァニ?」

快感に顔を歪めながらも必死に呼ぶその声が愛しい。
我慢の限界も近づき、俺は雛美の頭を撫でて立ち上がった。
近くの引き出しからゴムを一枚取り出すと、雛美の手が腕に掠る。
俺に向かって真っすぐ伸ばされた手を繋ぐと、ふにゃりと笑った。
それ、マジずりィから。
クスリと笑ってゴムを着けると俺は雛美の元へ戻った。
寒くて着ていたはずの服は興奮した俺には邪魔にしかならず、適当に脱ぎ捨てた。
白い雛美の足を持ち上げて自分のソレをあてがうと、首筋に強く噛みついた。
雛美からは喘ぎ声だけが漏れ、俺を絡め取るように腕が伸びてくる。
そのままソレを雛美の中へ押し込むと、狭いそこは俺を拒むように固く閉じる。

「ふぁっ、んっ。あっ、、、」
「痛ェ?」

そう聞けば雛美の体が跳ねてビクビクと中が軽く痙攣する。
痛いわけではないらしいことに安堵して、ゆっくりと押し進めた。

「そんなに締めんなって。」

押しだすように締め付けてくるそこに何度も腰を打ち付けて、快感を貪る。
雛美からは絶えず嬌声が漏れて身を捩る姿がたまらない。
少しすると表情が少し緩み、ぼんやりとし始めた。
終わりが近いことを告げるそれに俺はさらに動きを速める。
もう俺の声も届いていないだろうか。

「雛美っ。」

ふわりと笑った雛美を抱きしめて、俺は一際大きく腰を打ち付けた。
達したと同時に中が痙攣するように動いて雛美もそうなのだと知る。
何とか息を整えて雛美を見れば、もう夢の中だった。
つい出来心で頬をつつけばにこりと笑う。
そしてふにふにと言いながら擦り寄ってきて、気持ちよさそうに寝息をたてはじめた。
そんな雛美を見ながら、俺も目を閉じた。




随分眠ってしまったらしい。
目が覚めるともう夜になっていて、飯を食う頃にはあと少しで日付が変わりそうになっていた。
明日は早いというのに、この後眠れるだろうか。
少し不安に思いながらも軽く準備を済ませて布団に入ると、隣に遠慮がちに雛美がもぐりこんでくる。
何だかソワソワしている雛美は何度も寝返りを打っては呻っている。
ふっと目が合うと、困ったように口をへの字に曲げている姿がおかしくてつい笑ってしまった。

「眠れねェの?」
「うん……。」
「こっちこいよ。」

雛美を引き寄せて腕の中に閉じ込めると、雛美のドキドキと言う俺より少し早い鼓動が伝わってくる。
明日のことでも考えてンだろなァ。
勝手に決めて悪いことをしたかもしれない。
そう思いながらもそっと頭を撫でれば、小さなあくびが聞こえる。

「オヤスミィ。」
「ん、おやすみ。また明日ね。」

背中を軽く撫でるようにトントンとしていると、すぐにスース―という気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。
その寝息に安堵して、俺もそっと目を閉じた。


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