28




何を食べようか暫く悩んでいたけど、お昼は結局近くのファミレスで済ませてしまった。
あちこち歩き回るにはお腹が空き過ぎていたからだ。

「ごめんね、せっかくのお正月だったのに。」
「別に一緒に食えりゃ何でもいいよォ。」
「じゃぁさ、夜は美味しいもの食べに行こうよ。この年だけど、お父さんがお年玉くれたんだ。」
「んーじゃぁさァ。」
「うん?」
「スーパー寄って帰ろうぜ。雛美の飯が食いてェ。」

ニッと口角を上げて笑う靖友くんの笑顔は、私の胸を鷲掴みにする。
この笑顔のためだったら本当に何でもできる気がする。

「そんなのでいいの?コース料理とか食べに行けるよ?」
「明日から箱根だろ?出かけるよりゆっくりしようぜ。」

そう言って腰に手を回してきた靖友くんの頬は少し赤い。
それが寒さのせいだけじゃないのは、鈍い私にも伝わる。
返事をするかのように微笑み返すと腰にあった手は私の手をまえた。

「じゃ、とりあえずスーパーな。」

そう言って歩き出す靖友くんに手を引かれて、私も歩き出した。
どうかこの幸せがずっと続きますように。




アパートへ帰り、コートを脱ぐと靖友くんが後ろから抱きしめてくれた。
首筋のあたりをスンスンと音をさせながら嗅がれて、何だかとてもくすぐったい。
身を捩ればそのまま手首を掴まれて、靖友くんの唇で口をふさがれた。
まだ少し冷たさの残る唇から、暖かい舌が滑り込んでくる。
短めの吐息が漏れて、背筋がゾクゾクした。
バランスを崩しそうになった私の腰を靖友くんが支えてくれたおかげでなんとか倒れ込まずには済んだが、先ほどより密着した私の体には靖友くんのそれが当たっている。
その硬さが布越しでもわかってしまって、私は恥ずかしいながらも少し興奮してしまう。
顔を伏せた私に靖友くんはそれを擦りつけるように私の腰をさらに引き寄せた。
嫌でもぴったりとくっついた体から、私の鼓動が伝わってしまいそうだ。

「や、靖友くっ。」
「我慢できねェンだけど。」

熱い吐息でそう囁かれては抵抗なんて出来るわけがない。
私は自分を支えきれなくなった足を恨めしく思いながらも靖友くんにしがみつくように首に手を回した。
私たち以外誰もいないこの部屋で、我慢何てする必要はない。
靖友くんの顔を引き寄せるようにして、私はその唇に噛みついた。
一瞬目を見開いた靖友くんは、次第に嬉しそうな顔に変わっていく。

「雛美。」

優しくそう呼ぶ声に、私は身を任せた。
触れる手は熱くて、そこから全て溶けてしまいそうだ。
名前を呼ぶ声は艶やかで、囁かれれば私は体を震わせる。
いつもより紅潮した頬は色っぽくて、私をさらに興奮させる。
靖友くんが自分に欲情してくれるということが嬉しくて堪らない。
時折肌に歯を立てながら降りていく靖友くんの手は気持ち良くて、触れてほしい所がわかっているようだ。
次第に何も考えられなくなる私は、ただひたすら彼の名前を呼ぶ。

「やす、ともくっ。やすと、もくんっ。」
「ナァニ?」

その度に嬉しそうな顔でそう聞いてくれるのがゾクゾクさせられる。
もうただ喘ぐだけしか出来なくなった私の頭を軽く撫でると、靖友くんは立ち上がった。
触れられないことが寂しくて手を伸ばすとぎゅっと繋いでくれる。
これはあの日から、ずっと変わらない。
少しして戻ってきた靖友くんは服を脱ぎ捨てて私の足を持ち上げた。
首に埋められた頭からはふわりと彼の香りがして、次の瞬間強く歯を立てられた。
その痛みすら今の私には快感として訪れる。
靖友くんは私に噛みついたままゆっくりと腰をすすめ、それを私の中に押し込んでいく。

「ふぁっ、んっ。あっ、、、」
「痛ェ?」

心配そうに聞くその声と共に吐かれた吐息によって、私は身を震わせた。
ゾクゾクと背中に何かが駆け抜ける。
先ほどの答えを告げるより先に、体から伝わってしまったらしい。
靖友くんは嬉しそうにニヤリと笑う。

「そんなに締めんなって。」

意地悪そうなその姿に私はさらに興奮した。
それでも触れる手はいつも優しくて、その体は私を包み込む。
次第に何もかもがぼんやりとしてきて、何も考えられなくなる。
意識を手放す前に、優しく名前を呼ぶ声が聞こえた。
私はその声に、答えることができたんだろうか。





目が覚めるとすっかり日は暮れていて、食事を作り終えるころには夜食のような時間になっていた。
それでも美味しそうにたくさん食べてくれる靖友くんは、本当に作り甲斐があると思う。
明日は朝から出ると言うので、食事を済ませると軽く準備をして布団に入った。
箱根で靖友くんの友達に会うんだとおもうと、緊張してきて眠れそうにない。
ちらりと横を見ると靖友くんと目があって、クスッと笑われた。

「眠れねェの?」
「うん……。」
「こっちこいよ。」

そう言って私を引き寄せると、その腕で包み込んでくれた。
ドキドキと私の早い鼓動とは別に、少しだけゆっくりな鼓動が伝わってくる。
その音が心地よくて目を閉じれば、ふわっとあくびが出た。

「オヤスミィ。」
「ん、おやすみ。また明日ね。」

靖友くんは私の頭を軽く撫でてそう言った。
その手が気持ち良くて、さらに私の睡魔を強める。
靖友くんの匂い、鼓動、そして体温。
全てが私を夢の中へと誘い込んでいく。
その心地よさに、私は落ちて行った。


←prev/目次/next→
story.top
Top




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -