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その日から、靖友くんから毎日アプリのメッセが届いた。
起きた時だったり、部活が終わった後だったり、寝る前だったり。
時間があるときは電話もくれた。
私が金曜は早く上がれることもあり、金曜や土曜の夜はうちで一緒にご飯を食べるのがいつしか習慣になった。
平日はもちろん休みの日も部活で忙しい靖友くんと外でデートすることは殆どなかったけど、代わりにDVDを観たり体の硬い私の為にストレッチに付き合ってもらったりした。
おかげで、私はずいぶん体が柔らかくなった。
靖友くんが帰った後の筋肉痛も次第になくなっていった。
そんな時、優衣から久々に電話がかかってきた。
来週月曜に遊びに行こうという。
確かその日は祝日で、靖友くんは合宿に行くらしくくる予定もない。
私は二つ返事で快諾した。







土曜日から始まった合宿は忙しいようで、靖友くんからのメッセが殆どこなかった。
邪魔してしまいそうで私からも連絡するのを控えると、することがなくなってしまった。
私のプライベートの殆どを靖友くんが占めていたのだと思い知らされる。
未だに”アキチャン”が誰か確認できずにいるのは、失うのが怖いからだ。
もしかしたら”アキチャン”は元カノとかかもしれない。
でももし、靖友くんの彼女で私がセフレなんだとしたら……。
嫌な予想ばかりが渦巻いて、私は結局それを口にするのをやめてしまった。
今その瞬間、靖友くんが私を見ていてくれればそれでいい。
そうして出来上がった関係は、こういう時とても不安にさせられる。
私はスマホを握りしめ、ただひたすら時間が過ぎるのを待った。







やっとの思いで迎えた月曜日。
今日は優衣と過ごすから、きっと寂しさも紛れるだろう。
待ち合わせ場所に向かうと5分前だというのに優衣は待っていてくれた。
私と目が合うと駆けてきて抱き着いてきた。
学祭以来の再開に、私も抱きしめかえす。
何やらとても嬉しそうにしている優衣に理由を聞くと、どうやら今年で卒業する彼氏との同棲話が出ているらしい。
”今日は惚気を聞いて欲しい”と隠さずに言う優衣はキラキラしていてとても可愛い。
私たちは近くのカフェに入り、暫く優衣の彼氏の話で盛り上がった。

「そういえば、雛美はどうなの?彼氏とかいるの?」
「んー、彼氏じゃないけど。気になる人はいるかな。」

靖友くんの顔が浮かび、ちくりと胸が痛んだ。
”彼氏じゃない”と思っていても、口にするのは少し辛い。

「えーどんな人?会社の人?」
「目つきも口も悪いけど……すっごく優しい人だよ。」
「ちょっと、それって相反するものじゃないの?」
「そうでもないんじゃないかなぁ。」

首をかしげる優衣に、私は笑って誤魔化した。
あの時、少しだけだったけど優衣と靖友くんは会っている。
あまり話すと色々問い詰められかねないので、私は優衣の彼氏の話に戻した。

「それよりさ。彼氏とはどんな部屋にするか話してるの?」
「うん!とりあえずキッチンとリビングが広いとこがいいよねって話しててー。」

優衣は待ってましたとばかりに賃貸情報のチラシを広げて、楽しそうに話し始めた。
これでもう優衣の頭から靖友くんのことは消えただろう。
私は優衣に部屋探しのアドバイスをしながら、たっぷり惚気を聞かせてもらった。






結局、場所を変えながらも私は一日中優衣の惚気に付き合っていた。
そのおかげで寂しさは少し癒え、帰る頃には寂しさよりも疲労が勝っていた。
聞くばかりも楽じゃないな、そう思いながらソファに腰を下ろしてスマホを確認すると靖友くんからメッセがきていた。
送られてきたのは、一時間半前。
気づかなかったことに落ち込みつつも返事をすると、すぐに電話がかかってきた。

「アー、雛美チャン?」
「うん、ごめんね。気づかなくて……合宿お疲れ様、おかえりなさい。」
「ン、タダイマ。あんがとねェ。スゲー疲れたァ。」

靖友くんの声は少し元気がなくて、合宿が相当しんどかったのかもしれない。
それでも電話をくれたことが嬉しい反面、無理をさせてしまっている気がしてしまう。

「明日も講義だよね?今日は早めに休んでしっかり眠ってね。」
「ナニ、雛美チャン忙しいのォ?」
「え、ううん?靖友くん疲れてるでしょ?」
「疲れてっけどォ……声聞きたくて電話したンだけど。」

その言葉に、耳が熱くなる。
熱はだんだん顔中に広がって、きっと今真っ赤になっているだろう。
嬉しさと、会えない寂しさが混ざって自分でもよくわからない。
ただ胸がきゅーっと苦しくなる。

「わ、私も。声、聞きたかったよ。」
「ほんとかよ。」
「本当だよ!今すっごく、嬉しいし!」
「ハッ、素直じゃナァイ。」

電話口から聞こえる笑った声に、また胸が苦しくなる。
靖友くんが好きだと体が訴えているようだ。
でもこの気持ちを私はどう言葉にしていいかわからない。
週末何をしていたのか聞く靖友くんに優衣の話をすると、学祭の日のことを覚えているらしい。
”優衣サンね”なんて言うから、少し胸がチクリと痛んだ。
私以外を名前で呼んでいることに、図々しくもヤキモチを妬いたらしい。
靖友くんは優衣の苗字を知らないのだから仕方ないはずなのに、モヤモヤしてしまう。

「私のことはチャンなのに、優衣はサンなんだね。」
「アー……気に入ったヤツしかそう呼ばねェからァ。」
「……私は気に入られてるってこと?」
「気に入ってなかったら連絡しねェよ、バァカ。」

クツクツと笑う靖友くんに、私は心がふわりと暖かくなった。
さっきまでトゲトゲとささくれ立っていたはずなのに、今は嬉しさで溢れている。

「ありがとう、また一週間頑張れそうだよ。」
「おう。金曜の夜にはメシ食いに行くからァ。」

”肉食わせて”なんていつもと同じ言葉に私は頬が緩む。
一週間……ううん、4日頑張れば会えるんだ。
私の心は弾んでいた。
今日はいい夢が見れそうだ。



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