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雛美を膝に乗せたまま、いろんな話をさせた。
この部屋の持ち主の話とか、”トモくん”の話、仕事の話。
聞けばなんでもこたえる雛美が面白くて、元彼の話も聞こうかと思ったけどやめた。
今聞いたら、関係を壊しちまいそうだったから。
どれくらい話をしただろう。
ふっと顔をあげた雛美が、慌てて俺の膝から降りた。

「ごめん!終電もうないよね?」
「ん、そーだネ。」
「タクシー呼ぶ?明日の予定とか大丈夫?」
「始発で帰りゃ問題ねぇよ。」

時計を見るとすでに日付が変わっていて、電車なんてあるはずもない時間だった。
それでもタクシーで帰るなんて選択肢が俺の中にあるわけがない。
慌てる雛美がおかしくて、笑ってしまう。
腕を力任せに引っ張るとよろけた雛美をまた膝に乗せた。

「何もしねぇから泊めくんねぇ?」

何もしない自信なんてねぇけどな。
そう心の中で呟いて、雛美の首に舌を這わせた。
モゾモゾと動く雛美が可愛い。

「う、うん。ベッド使って?私ソファで寝るし。」
「一緒に寝ねぇの?」
「え、でも狭いよ?」
「俺のベッドのが狭くねェ?」

酔ってんのかただ単におバカちゃんなのかはわかんねぇけど、とんちんかんなことをいう。
どうみてもセミダブルありそうなベッドと俺のシングルじゃ比べるまでもないだろう。
あの狭さで寝れて、これで寝れないわけがない。
苛めたくなって、そっと服に手をいれた。
太ももにそっと触れて、そのままわき腹を撫で上げると雛美が仰け反った。
反対の手で逃げないように押さえて、わき腹やへその周りをそっとなぞると雛美が笑い出した。

「やっ……だめぇ、くすぐったいからぁ!」
「色気のねぇ声出してんじゃねぇよ。」

膝の上でジタバタと暴れる雛美は、ケラケラと笑っている。
危ねぇから両手で抱きしめた。
色気ねぇ声出してるくせに、匂いは俺を誘っているかのように強く香っている。
アルコールの匂いがなけりゃ、我慢できなかったかもなぁ。
そう思っていると、雛美と目が合った。
ふにゃりと無防備に笑うのが可愛くて、頭を撫でてやると目を細めた。
気づけばそのままクンクンと匂いなんて嗅ぎやがるから、慌てて鼻をつまんだ。

「汗くせぇから嗅ぐなバァカ。」
「いいにほいらもん。」
「ッセ。シャワー貸してくんねぇ?」

いい匂いなわけがない。
コクコクと頷く雛美の鼻から手を離して、膝から降ろした。
立ち上がって伸びをすると、少し足が痺れている。
ずっと座って乗せたまんまだったもんなぁ。
なんだかその痺れすら心地よくて、満たされた気分だった。






風呂に案内した途端、雛美は逃げるように出て行った。
冗談でも一緒に入ろうなんて言ったのが間違いだったかもしんねぇ。
浴室は雛美の匂いがいっぱいで、雛美から香るシャンプーやボディソープが俺を欲情させまくった。
匂いだけで反応するとか俺が大丈夫か。
長く入るとどうにかなっちまいそうで、急いでシャワーを浴びて出た。





適当に体を拭いて、服を着た。
居間を見渡しても雛美はいなくて、そっと寝室のドアを開けた。
初めて見る明るい寝室は、すっきりとした綺麗な部屋だった。
タンスの前に座ってた雛美と目が合うと、クスクスと笑ってやがる。

「ナァニ笑ってんだよ。」
「いや、髪くらいちゃんと拭きなよ。」
「めんどくせェから雛美チャンがやってヨ。」

近づく口実が欲しかっただけだ。
俺はそっと近寄って屈んで頭を下げた。
視界には白くて柔らかそうな太ももがちらりと見えていて、ごくりと喉が鳴る。
雛美が手を動かす度に、ワンピースのスカートが引っ張られるように少し動いて太ももを露出していく。
それに雛美の匂いも相まって、俺の下半身はしっかり反応してしまった。
慌てて隠すように床に座り込むと、ドライヤーが止まって雛美がこっちを見てきた。

「ンだよ。」

バレてんじゃねぇかって焦ってまたキツい口調になってしまう。
それでも顔を見られるのが恥ずかしくて、目を合わせることが出来ない。

「待ってっからァ。雛美チャンも入ってこいよ。」
「うん。」

雛美を風呂においやって、俺は気を散らすためにスマホのゲームに手を伸ばした。
どれくらいそうしていただろう。
だんだん座っているのがだるくなって、ベッドにごろりと横になった。
雛美の匂いが沁み込んだ布団が気持ちいい。
スマホ片手にスンスンと匂いを堪能していると、雛美が戻ってきた。
隣に寝るように促すと座りやがったから、膝に頭を乗せてやった。
柔らかくて気持ちいい。


「雛美チャンおっせぇ。」
「ご、ごめん。でも……。」

何か言おうとしてる雛美は目が半分くらいしか開いてなくて、すげぇ眠そうだ。
座りなおして頭を撫でてやると、目がしっかりと閉じられていく。

「責めてねぇからァ。つーか眠ィんだろ?横になればァ?」
「う、うん。」

先に寝転ぶと、ちょっと離れて雛美が寝転んだ。
遠いんだよボケナス。
雛美の体を捕まえてそのまま引き寄せた。
さっき言ったのが間違いだったな、そう思いながらも自分に言い聞かせるようにもう一度言う。

「何もしねぇから。」

ぎゅっと抱きしめると、雛美が頭をすりよせてくる。
鼻に抜ける匂いが濃くて、頭がクラクラした。
寝れねぇな、そう思っているとスース―と気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。
安心しきったようなその顔に、何かする気にもなれない。
そっとおでこにキスをして、俺も目を閉じた。



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