04

6人で近所のファミレスに入った。
私の左側には真ちゃんが、右側には茶髪の人が座る。
私は真ちゃんにぴったりとくっついて座った。

「雛美ちゃんは、何がいい?」

そうにっこり笑ってメニューをくれるこの人は、もしかしたら怖くない人かもしれない。
そう思いつつ受け取ったメニューを開くと、地域限定パフェが目に入る。
私は真ちゃんの服を少し引っ張った。

「真ちゃん、クレープやめてこっちがいい」
「抹茶のパフェか?」
「うん。これ食べたい。」
「食べ切れるのか。小豆が乗っているぞ、嫌いだろう」
「残ったら真ちゃんが食べて。」
「…わかった」

私は真ちゃんが断らないのを知っている。
いつだって私の願いは無理のない程度なら聞き入れられてきた。
真ちゃんは私にとても甘いのだ。



注文を済ますと、真ちゃんは咳払いをした。

「今日はわざわざ集まってもらってすまない。雛美、きちんと自分で話せ。」
「…小鳥遊雛美、です。春から3年生で、箱学に通うことになりました。よろしくお願いします…」
「見ての踊り人見知りでな。仲良くしてやって欲しい。」
「俺は新開隼人、よろしくな。雛美ちゃん」
「眠れる美形こと東堂尽八だ!この切れるトー」
「箱学3年、福富寿一だ。」
「フク!俺の邪魔をするな!」

真ちゃんは、私のために友達を集めてくれたらしい。
茶髪が新開くん、カチューシャが東堂くん、金髪が福富くん…
頭に刻みつつ聞いていると、一人名乗っていないことに気づく。
あの怖い人だ。

「荒北」
「ンだヨ、福ちゃん」
「お前の番だ」
「…ンなもん別にいいじゃねーか」
「オーダーだ」
「……チッ。荒北靖友だよ」

福富くんに促される様がまるで飼い犬のようだ、なんてふと思う。
あながちハスキー犬と言ったところだろうか。
自己紹介が終わると、パフェが運ばれてきた。
3つ…?と思っていると、私の以外は新開くんの前に置かれる。

「俺、甘いもの好きなんだ。美味いよな」

そう言いながら新開くんは二つのパフェを食べ始めた。
その姿に呆気にとられていると、食べないの?と言われてしまい、私は慌ててパフェにスプーンを指した。
抹茶アイスがほろ苦で、生クリームとの相性が絶妙だ。

「真ちゃん!これすっごく美味しい!」
「そうか、良かったな」
「一口たべる?」
「あぁ」

そう言って口を開けた真ちゃんの口に、私はスプーンを突っ込んだ。

「ヒュゥ!おめさんたちちょっとは俺たちにも気を使ってくれよ」
「そうだぞ金城!俺に見せつけに来たのか!」
「? なんのことだ」

それぞれに運ばれてきた料理を受け取りながら、私と真ちゃんは首を傾げる。
新開くんは指でピストルポーズを取ってウィンクした。

「おめさんたち付き合ってるんだろう?言わなくてもわかるぜ。」
「全く金城もすみにおけんな!一体いつから付き合っているのだ!」
「む、そうだったのか金城」

あ、金髪の人久々にしゃべったな、なんて思いながら真ちゃんと顔を見合わせた。
私と真ちゃんが付き合ってる…?
少しして、笑いがこみ上げてくる。

「違いますよぉー、付き合ってないです」
「「「え?」」」
「従兄弟で幼馴染だから仲良いだけですよ。ね、真ちゃん?」

そう聞くと、真ちゃんはクスッと笑った。
そうだな、と短く答えて私の前にお皿を置いてくれる。
お皿には真ちゃんが頼んだハンバーグとポテトが少しずつ盛り付けられていた。

「雛美も食べるだろう」
「うん!食べるー。あとその付け合わせのミニグラタンも一口欲しいー。」
「食べ切れるのか?」
「一口なら!あ、あとこのあんこ食べてー。」

そんなやり取りをしていると、新開くんは苺を、東堂くんはパスタを一口お皿に入れてくれた。
二人にお礼を言うと、それを見た福富くんもアップルパイを一口乗せてくれる。

「うん?食べていいんですか?」
「嫌いじゃなければ食べるといい」
「ありがとうございますっ。」

表情は一切変わらないけど、意外と悪い人じゃないのかもしれない。
そう思いながらパイを口に入れた瞬間、ガタッと音がして荒北くんが立ち上がった。

「福チャァン!こんな女に餌付けする必要ないんじゃナァイ!?」
「…? 荒北も欲しいのか?」
「ちっげーよ、福チャン!てか東堂も新開もなんでこいつに餌付けしてんだよ!」
「いやー、だって何だか」
「なンだよ」
「うさ吉に似てないか?」
「うさ吉に似ているだろう!」
「うさ吉に見えてな」

3人の声が綺麗にハモる。
それと同時に、荒北くんに睨まれる。
っていうかうさ吉って誰…。

「こいつのどこがうさ吉に見えンだよ!お前ら何かおかしいんじゃナァイ?」
「荒北、雛美を悪く言うのはやめてくれ」
「ンだよ、金城。雛美雛美ってうっせーンだよ、」
「荒北、やめろ。」

福富くんがそういうと、荒北くんは舌打ちをしてどかっと座り直した。
本当に、飼い犬みたいだな。
っていうか、私って悪く言われてたの?
男の子の会話はよくわかんないな、と思いながらもみんなにもらったご飯を食べた。
パフェは結局食べきれなくて、真ちゃんが食べてくれた。


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