01

私と真ちゃんは従兄弟で幼馴染だった。
小さい時から、いつも一緒だった。
お母さんがいなくなったあの日も、真ちゃんはずっと私のそばにいてくれた。
なのに、離れる日が来るなんてーーー。


私のお父さんが仕事バカなのは、小さい時から知っていた。
お母さんが救急車で運ばれた時も、お父さんは仕事が終わるまでこなかった。
でもまさか、ここまでバカだったなんて…。

「雛美、すまない。ベトナムへ転勤になった。」
「…ナニソレ。」
「あっちの支社の幹部を任された。父さんしかできない仕事なんだ。わかってくれるよな?」
「いや、わかんないし。っていうか私もすぐ高3だし転勤になんてついていかないからね!」
「そう言うと思って、箱根の叔父さんにお前の世話は頼んだよ。箱根学園という学校に転校しなさい。そこなら叔父さんの家のすぐそばだから。」
「なっ…嫌よ!私は今の学校が好きなの!別に一人でも生活に困らないし。
もう何年も会ってない叔父さんのところなんて…。
第一、新しいところに行くより真ちゃんの家も近いここで十分じゃない!」
「お前は昔から真ちゃん真ちゃんと…真護くんも男の子だろう。お父さんは安心できないから箱根の叔父さんに頼んだんだぞ。」
「お父さんはいっつもそう…私の気持ちなんでこれっぽっちも考えてない。いつも私を振り回す!」
「そんなことはない、雛美のことを考え」
「うそつき!」

そう言うと私は家を飛び出した。
歩きながら携帯を取り出し、リダイヤルを押す。

「もしもし」
「真ちゃん、今から行くぅ…」
「どうした」

真ちゃんの声を聞いたら、ホッとした。
そして驚きと悲しみで涙が出てきた。
お父さんなんて…

「迎えに行こうか」
「ううん…でももうすぐ着くから、お迎えして」
「わかった。気をつけてな」

電話を切って、涙を拭う。
私は真ちゃんの家に向かって走った。



真ちゃんの家に着くと、門のところで待っていてくれた。
両手を広げて駆け寄る。

「真ちゃん!」

真ちゃんの逞しい体は私をしっかりと受け止めてくれた。
頭を軽く撫で、手をひいてくれる。
いつもと変わらぬその態度に、私は安心した。


真ちゃんの部屋に入ると、ホットココアとタオルが用意されていた。

「私の今欲しいもの、よくわかったね」
「長い付き合いだからな」

そう言うと、隣へ座ってくれた。
私は真ちゃんにもたれかかると、さっき喧嘩したことを話した。
話している途中で、涙が溢れる。

「それで、出てきたの。」
「雛美の親父さんは、心配性だからな。」
「だからって!真ちゃんを疑うとかどうかしてるよ!こんなに優しいのに。」

差し出されたココアをのみながらそう言うと、真ちゃんは苦笑いした。

「なぁ、雛美。」
「ふぇ?」
「お前は聡い、親父さんの気持ちがわからないわけじゃないだろう。」
「…」
「俺も、雛美を1人暮らしさせるくらいなら箱学への転校も悪くないと思うぞ。」
「…!真ちゃんまで私を邪魔者扱いするの!?なんで!どうして!」
「雛美、話を聞くんだ。」

暴れる私を抱きしめて、真ちゃんは背中をトントンしてくれた。
小さい子がお母さんにしてもらうように、ゆっくりと優しく。

「箱根学園には、学生寮がある。」
「…うん?」
「そこに入るのなら、親父さんも安心だろうし、雛美も叔父さんの家よりいいんじゃないか。」
「でも、私…真ちゃんがいない所でやってく自信がないよ。
困った時や辛いときに一体誰に相談すればいいの?」
「いつでも電話してくればいい。…それに箱学には何人か知り合いもいる。雛美のことを話しておこう。」
「それって、真ちゃんの部活の友達?」
「あぁ。」
「…ぅー…」
「俺も親父さんの説得は手伝うから、雛美も少し折れろ」
「…わかった…」

昔から、真ちゃんはいつも正しい。
いい子だ、と言いながら撫でてくれる手が心地良くて、私は真ちゃんの胸や肩にスリスリと頭を擦り付けた。
箱根学園、か…。


私の好きな人/next→
story.top
Top




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -