04


目を覚ますと、空はもう白み始めて始めていた。
隣でまだ寝ている雛美のおでこにそっと口付ける。

「昨日はごめんな」

そう呟いても全く起きる気配はなく、スースーと寝息が聞こえる。
惚れた女に無理強いしてヤるとか俺どんだけサイテーなんだよ。
情けねェ。
頭を冷やしたくて、雛美を起こさないようにそっと外に出た。




家に帰ると布団がもぞもぞと動いている。
起きたか、と思いながら少し離れて座る。
どれくらいそうしていたかはわからないが、ふっと目があった。

「目ェ覚めたァ?」
「う、うん…」
「一応拭いたけどォ…風呂、入るゥ?」
「入る…」

昨日のことの手前、一緒にいるのが気まずい。
湯船に湯を張りながら、何て謝るかな、なんて考えていた。
謝って許されるようなことじゃねェのにな…。
風呂から戻ると、俺にも気づかないほど雛美は慌てていた。
脅かさないようにそっと声を掛ける。

「風呂、貯めてるからちょっと待ってナ」
「や、靖友くん!ごめんなさい、私布団を…!」
「布団?アァー、いいヨ。動きすぎた俺のせいだしィ。 それより体、大丈夫ゥ?」
「…痛い、です…」
「だろーナ。今日はうちでゆっくりしてけばァ?俺も休みだしィ。」
「いや、お風呂終わったら帰る…」
「警戒してんノ?」
「…」

布団なんていくらでも汚せばいいヨ。
だから帰んなヨ。
そんなこと言える訳がねェ。
うつむいて黙ってしまう雛美を見ていられなくて、背を向けるように部屋の隅へ座った。

「ま、いいけどォ。昨日はアンガトネェ。」

謝るつもりだったはずなのに、拒絶されたダメージでパニックになっていた。
なんで礼言ってんだヨ、俺…。
それから話しかけることもできず、時間だけが過ぎて行った。


目を合わせられないまま、雛美は帰り支度を始めてしまった。
なんとか引き止めたくて、まだ手放したくなくて、必死に言葉を探す。

「雛美チャン、もぉ帰んのォ?」
「うん、お風呂ありがとう。お邪魔しました。」
「…送ってこーかぁ?腰、まだ痛ぇんダロ?」
「大丈夫、家そんなに遠くないし…。」
「…また警戒してんのォ?」
「ううん、悪いから。大丈夫だよ」
「昨日はアンガトネェ。またおいでヨ」

結局、謝ることも引き止めることもできなかった。
ごめんな、の一言が言えずに意味のわからない礼だけ伝えると、雛美は困ったように微笑んでいた。
もう2度とくることはないとわかりつつも、そう言わずにはいられなかった。
お邪魔しました、そう小さく呟いて、雛美は出て行った。



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