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 あなたを想う/リルユウ

懲りずに先走り、RM3のラストの妄想。先走りゆえ中途半端に始まり中途半端に終わります…雰囲気小説。


「誰も、止めないんだな.........コイツが、世界を救おうとすることを」

え?と、リルトがぼそりと呟いた言葉に、隣にいたコハクが声を出した。
「白状な人間だ」「結局、ヒトなんてそんなもんか」
続けて聞こえてきた言葉に、コハクは何か言ったかと聞き返そうとしていたが言葉が詰まって最後まで言えなかった。
だって、最終決戦についての作戦を皆に話していたアンジュに、いつもふざけているリルトからは想像もつかない程に冷たい目を向けていたから。
「それでいいかな?」なんて確認してきたアンジュの言葉に一瞬ドキリとした。
リルトは......否定もしなければ皆みたいに頷きもしないで、唇を噛み締めている。握られている拳は震えていて、顔は無表情なのに、ひどく悔しそうにしているように感じた。

そして、

「リルト..?」

不安げにそんなリルトのコトを見つめていた私に気づくと、リルトはいつもと変わらない顔で、笑いかけてくれた。優しい表情だったけど、確かに感じる違和感。
握られていた拳は、まだ震えていた。





ディセンダーには恐れも、不安もない?
違う。
恐れる気持ちがないわけじゃない、
不安じゃないわけがない。
知らないんだ。ただ、それが怖いという感情だってことを知らないだけなんだ。
だから、
言えない、表せないんだ。

なんで、分からないんだよ。

消えることが分かってて、
それから逃げ出すことも出来ないのも分かっていて、たった一人ディセンダーだからと、任されて。

あの時は…ディセンダーの能力を転写して、カノンノへと力を分け与えることを考えた時は、その行為に驚き、そしてわずかにだが期待していたんだ。重荷を、少しでも減らす、そんな行為に。でも、結局は、ディセンダー任せだと分かって、期待した分、失望感を強く感じてしまった。

怖くないわけない。不安がないわけないじゃないか。
怖くて怖くて、嫌で嫌で、しょうがなかったよ。
それが使命だと分かっていても、ディセンダーは何も知らない、何も分からない。
まだ生まれたばかりの子供なんだ。
誰かが教えてやらなくて、どうする?


ディセンダーだから、なんだっていうんだ。

ディセンダーなら犠牲になってもいいのか。世界が救われるのなら消えたって構わないのか?
何も知らない純粋な子供に、ディセンダーだからって、ただそれだけで、押し付けて、アンタらは何も感じないのか。放っておくっていうのかよ。
世界が救われたら、それで終わりというのか。
今まで散々仲間として一緒に過ごしてきたのに、
そんなのって、あんまりだろ。
そんなの、おかしいだろ。

なんで分かってやれないんだよ。
なんで、分かってやれなかった。

帰ってきてもいいんだよって。
ただ、
気づかせてあげるだけでいい。





オレにはそれが出来なかった。
だからこそ、
コイツには同じ目にはあって欲しくない。

だから、
お願いだから、
誰かこの子に救いを─



オレたちは、世界を救うために生み出された存在。
人々の声、身勝手な欲から、オレたちは作られた。

生まれたばかりのその存在には、記憶もなければ、知識も、意志も、何もない。
世界を救世するという使命だけを背負って、オレたちは生きている。

でも、確かにそこに存在しているんだ。

生まれた理由は決まっていたかもしれない。
でも、望んでそれを受け入れているわけじゃない。
知らないから、分からないから、ただ言われたことをすることしかできないんだ。


見た目ばかりが発達した、子供。
それを救ってあげられるのは、
あの人を救えるのは、
周りの、誰よりもあの人の近くに居る、
君だけなんだよ。


それに、君が気付くだけ。
世界の意思に、願いに。
たったそれだけのことなんだ。

「あの人を、どうか」

僕には叶えられなかったけど、
君ならきっと…



「その手を掴んであげて」

「きっと、今でも待っているはずだから」


誰かに救われる、その日を。
全てを無くしたあの日から、ずっと。

''僕''にはそれが出来なかった。

今だってそれは変わらない。
だって、僕はキミを苦しめた張本人で、縛り付ける理由を作った存在で、
もう、この世には存在していないから。

「もう、いいんだよ」

そう言ってあげられていたら、
でも、今の僕には、できない。

だから、どうか”あの人”のことを。

よろしくね。


僕の生んだ、新しい世界の、ぼく。
もう一人の、もう一つの、無垢な光。
君なら、きっと、

キミを……







ラザリスを倒し、ユウとオレの二人で、結晶に覆われていた大きな木、世界樹の前まで足を運んだ、後のこと。
他のみんなとは、先に分かれ、オレたちは二人だけでこの場に向かった。ラザリスを、光を、胸に抱いた状態で。
その光を、オレは世界樹の前に着いた際にユウから受け取った。
木の葉の揺れる音すらない静かな中で、オレたちの足音だけが響く。
世界樹の目の前まで来てから、オレは足を止め、上を見上げる。
未だ結晶に覆われたままの、木が瞳に映り込む。


「リルト…?」


ラザリスだった光を胸に抱き、急に立ち止まったオレにユウが疑問に思い声をかける。
立ち止まったことに関しては、目的地に着いたのだから疑問に思うことではない。多分そこではなく、ずっと光をオレが持ったままそこで、止まったことに対する疑問、だったのだろう。
立ち止まって上を見上げていたリルトが、名を呼んだ人物のいる方向、後ろへと振り返る。

「なあ、ユウ」

「どうか、したの…?」

「あの時、なんで教えてやらないんだってオレが言った時、全員に口を揃えてこう返されたよ……私たちは誰も犠牲にだなんて考えてない。信じているんだって。あの子は確かにまだ小さな子供かもしれない、でも自分たちが思う以上に強くて誰よりも優しい子なんだって」

振り返りざまに、リルトは問いかける。いつもの、優しげな眼差しをユウに向けて。
急な問いかけにユウは、なに?と首を傾げてみせる。
そんなユウに、リルトは言葉を続けた。それはとても急なお話で、ユウは傾げていた状態のままキョトンとした顔をリルトに向けた。

「ユウ。オマエの周りにはたくさん、信じて待ってくれている人がいる。あの時と同じ、だなんて考えてたのは…信じてなかったのは、オレだけだったみたいだ。いい世界だな、ここは…あたたくて、綺麗で、オレたちも……こんな世界に、生まれていれば、なんて……そんなの、ただの言い訳、か…」

世界樹を前に、ユウの前に立ち、リルトはユウと向き合う形で話続ける。なぜ、急にそんな話を?と、ずっと困惑した様子でいるユウへと優しく微笑みながら。
途中後ろにあった世界樹を再度見上げ、ぼそりとユウには聞こえないくらいの小さな声で呟きを漏らし、そのままユウへと背を向ける形になる。
ユウは、どうしたんだろうと少し不安そうな弱気な表情でリルトの背中を見つめ、
リルトはそんなユウのことをわかっているのか、気づいていないのか、そのまま背を向けた体制のまま、また、話をし始めた。


「オマエは、いい世界に生まれたな…」

もう一度だけ振り返り、微笑んで、リルトはそう口にする。
ユウは、何も返せなかった。何を言っていいのか、返していいのか分からなくて。リルトは、ユウからの返答を待つこともなく、また話を続ける。
振り返っていた視線を世界樹へと戻して。

「せっかく、こんなにも恵まれた世界に、生まれたんだ…だから、オマエには同じ思いをしてほしくはない。これは、オレが、したいってだけのことだ。だから、オマエがなぜって、気にする必要はない。オマエには、待ってくれてる人がいる。だからユウ…オマエは、みんなの元に帰るんだ」


なんの話か、わからないまま、リルトを話を進めていく。ぼくの入る隙は、そこにはなく、ぼくには返す言葉もなかった。


「オレは、これでいい…これがいいんだ…きっと、これがオレがここにいる理由だから」

「なんの、はな、し…」

「オマエの代わりに、オレがラザリスと共に、世界樹へと還る。オレには、ラザリスの気持ちもわかるから…世界のことは、心配しないで大丈夫だ。任せてくれ」

自分だけが、話すだけ話して、大丈夫だよと言って、リルトは歩き出す。ユウから受け取った光を手に、ラザリスと共に。
後ろから、足音が聞こえようと、声が聞こえようと、オレは足を止めなかった。

「今からオマエは自由になれる。だから、」

世界樹の前で立ち止まり、リルトはユウに語りかける。振り返ることなく、前を向いたまま、立ち呆けていたユウへと、言葉を。


「だから、オマエは、オマエらしく今をこれからを、どうか生きてくれ」

─オレたちの代わりに、オレたちの分も、自由であってくれ。オレたちの、ディセンダーの、希望として。









光を胸に抱き、リルトはまた背を向けて歩き出す。世界樹に手を触れて、中に、入っていき、姿が、消えていく。
オマエは、自由に、生きて、とそんな言葉だけを残して。
何を言ったら、何をしたら、分からない。
ぼくは、背を向けたまま言葉をかけてくるあなたを見て、ただただ、何かを、今、何かをしなくちゃならないって思った。その気持ちがなんなのか分からなくて、初めて感じたことのあるものですらなかった、だからこそ、もっと分からなくて、なんで、今、それを感じたのかわからなくて、
ぼくは何も分からないまま、ただ駆け出していた。
止まらないあなたを追いかけて、でも追いつけなくて、途中足がもつれかけても、大した距離じゃないはずなのに、なぜかどんなに必死に走っても距離は縮まらなくて、

「う、あ……まっ…まって!!!!」

そう叫んで、ぼくは、手を伸ばした。
消えゆくあなたに、
なぜか、もう、会えない。そんな気がして、胸が苦しくなって、気づいたら、今まで出したことのない大きな声で、裂けるほどの声で、叫んでいた。


「ごめん」


叫んだ、その直後、そんな言葉が、消えゆくあなたから聞こえた気がした。
最後に聞こえた声…いや、それは声として聞こえていたのかさえわからないほどに小さく、か細いもので、

ぼくは、声を上げた。

聞こえるかはわからなかった、でも、飲み込めなくて、消えゆくあなたに吐き出した。

「ぼく、まってる!まってるから!ずっと、またあなたに会えること!!!たくさんたくさんもらったものを、返したいから!!!だから!ずっと──っ」

まっている。
そう、



消えていく、あなたの体を、光を、前に、ただ、叫んだ。あなたの体が、光が、完全に消えるまで。その間、だんだんと胸が苦しくなって、瞳から、ぼくはたくさんの水滴を流していた。

わからないから、わからなくて、
あなたがなぜそうしたのか、今自分が何をしているのか、なぜこんなにも苦しいのか、なにもわからなくて、
ただ、ただ、一人自分を生み出した世界樹を前に、消えたあなたの光にすがって、叫んで、泣くことしかできなかった。

でも、それがなんなのか、すぐにぼくには理解ができた。
以前、みんなが教えてくれたこと。
瞳から水滴が、涙が出るのは、泣く、という行為で、それは悲しいとしてしまうことなんだと。
ぼくは、悲しかった。あなたが消えていく時、そう、思ったんだ。
でも、なぜ、そう思ったのか。
だって、世界樹に帰ることは、悲しいことじゃない。だって、また戻ってくる場所がここにあるのだから、悲しむことはない。
帰ってくる、そう自分は決めていただから帰れない帰らないなんてことは頭になかった。なのに、なぜかとても胸が苦しくなった。これも、今思い返せばわかる。辛い、っていう、不安っていう気持ち。ぼくはその時不安を感じたんだ、あなたの行動に。
だって、あなたは、

その時、ひどく優しげに、今にも消えてしまいそうに、笑っていたから。
なぜ、そう感じたか、わからなくて、ただ、なんとなくそう思った。もう、あなたは、ここには戻る気がないんだと。

そう思ったら、耐えられなかった。
だから、叫んだ。力一杯、叫んだ。今の、ぼくの気持ちを。
あなたに届けばいい、届けと、そう、思って。

また会いたいと、ぼくの精一杯の気持ちを。












─こうすることが、オレの望み。これは、身勝手な行為だと、分かっている。それでも、オレは君を選んだ。

─同じ名前、似た顔。全くの別物だと分かっていて、でも、オレにはそれを受け止めきれなかった。

─何も知らず、誰かの面影を重ねられ、それはとても醜い行為だと、自分ですら思う。それでもオレはそれをやめられなかった。たとえ、止められたとしても。

─これは、罪滅ぼしだと言われれば、そうだとも捉えられることだろう。だがこれはそんな綺麗なものじゃない。ただ、オレは、自分のために、今ここでこうしているのだから。

─ただ、帰りたい会いたい、君の居ない”こんな世界”から、はやく消えたいというそんな願いのために。

─謝る気持ちすら、身勝手で、全てが勝手なことはわかっている。わかっていて、オレはここにいる。


だから、

ごめん。



─こんなにも、綺麗な世界に生まれたんだ。だから、せめて、オマエは自由に生きてくれ。なにものにも縛られず、今を、未来を。


身勝手な気持ち。
それを、思って、最後にオレは謝った。
なにを言われようと、帰る気は無いと思っていたから、そうした。
だから、オレは聞こえてきた声に、驚いた。

「まってるから、ずっと」

そんな、純粋な気持ちに、ただただ、驚いて──オレはただ、羨ましかったんだって、気がついた。
愛されていた、オマエの、ことが、この世界の暖かさが─そして、その、強くなっていく輝きが。

「ああ、本当に、オマエは…オレたちにとっての……」

勝手に、子供だと決めつけていた存在は、オレなんかよりも、よっぽど──
この子は、ディセンダーにとって、世界にとって、全ての、希望だと、そう思った。
だから、せめて、と光を抱いたまま、オレは願う。

そして、思った。


─どうか、この世界に、長きにわたる平穏を。

─オマエが…いや、キミが意思を持っていれば、いつかまた、会える時が来るかもしれない。いや、きっと、絶対に、また、会える。
─ディセンダーは自由の灯。キミは、希望の光。
─ずっとずっと、忘れていた…オレたちが、なんであったかを。


ごめんなんて、身勝手な言葉より、
今は、次は、

─ありがとう。
─次に会った時は、その言葉を、キミに、言わせてくれ。


そう、
想った。





ユウ…キミに会えて、良かった。
ルミナシアは、本当に、綺麗で、あたたかくて、
もし叶うのなら、今度は、

”こんな世界”に、生まれてみたいって、そう、思ったよ。







また、会えるその日まで。
さようなら。
無垢な、オレたちの希望の灯‐ヒカリ‐







───────あとがき
自己満足先走りラストパート2。マイソロ3で、ユウの代わりにリルトが世界樹へと還る、そんな話。無駄に書きたいところを詰め込んだので、意味が多分わからない…
リルトは、嫌いな相手をオマエと呼ぶ。そして気に入った信頼している相手はキミと呼ぶ。そんな感じでやりたくて、あえてそうしたっていうのと、あとは散々醜い部分を見てきて世界はそういうものだと思っていたリルトがこんなにも綺麗な世界が、こんな世界もあったのか、と知る、んで自分にはできなかった事をできたユウにすごいよキミはってなる話。ユウは愛されていた、きちんと、だから、よかったねっていう。

オリジナル設定でつけたテレジアの因子を受け継いでいるというそれで、3ユウはいわばユウとリルトの、ユーシャとユーカの子供。ゆえに、知らないけど、リルトのことをよく知っている。そして世界樹も、テレジアの子供だから、リルトのことをよく知っていて助けたいと思っている、という自分が楽しければなやつ。テレジアから産まれた世界がこんなにも綺麗に育ったっていうあの、自分でもわかってないです(?)


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