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 キミが料理作りが得意な理由/リルユウ+フレンユ-リ



「リルトの料理って、本当にすごく美味しいよね」
「フレン、お前の味覚での美味いは褒め言葉にはならねぇけどな……まあ、俺も料理だけは認めてやってもいいと思うが」
「自分じゃわからないけど……美味しいって言ってもらえるのは、嬉しいよ。作った甲斐があるし。黒ロン毛、アンタの言い方はともかくな」

食堂で、依頼により食事の遅れた二人…フレンとユーリに当番であったオレの料理を振る舞っていた時のこと、
食堂にいた女性陣は片付けを済ませて今は洗濯物を取り込みに行っていて他には人がおらず片付けなどを引き受けていたオレが二人の食事が終わるのを待っていたら、フレンに唐突というわけではないがたわいない会話の合間にそう話を切りだされたのだった。
フレンの切り出した話題にユーリも乗っかってきたが相変わらずの言い方にオレは静かに怒りを顔に出す。怒鳴りはしなかったがうるせぇと言う意味を込めての言葉を返せばしれっとした顔をしていたユーリをフレンが「君は相変わらず素直じゃないな」と叱りつつそう嘆いた。
ただのたわいない会話だ。
全く君はと叱るフレンの声に、へいへいなんて返すユーリの声。
いつもと変わらない、日常。

そんな会話を聞いていて、ふと、オレは思い出す。普段美味しいなんて言われ慣れているはずなのに、なぜ今そんなことを思い出したのかは自分でも分からなかったけど、急に頭の中に懐かしい光景が流れ込んできて、目の前で笑ったり怒ったりしていた二人の話し声がだんだんと遠ざかっていく。

昔、幸せそうにオレの作った料理を食べてくれた君に、美味しいと言ってもらえた時のこと。
まだ、何も''知らなかった''君が、すごいと言って笑ってくれた、そんな記憶。

料理をまともに作るようになったのは、初めは君のため、だった。ただ、君に笑ってほしい一心で、もっともっと笑ってほしいって今までの経験で手伝うくらいしかしたことがなかった知識のまま作って……君のためのことが、今じゃこんなに上手になった。
ねぇ、オレ、こんなにも、上手に作れるようになったんだよ。きっと、昔よりも美味しいって思えるくらいに、上手に。

でも、食べてくれる君は、今はいない。
どこにも、あの時の君は、もう。

もう一度、また、そう何度思ってきたかな。
まだやってるの、なんて、君は思っているかな……いつまで、待ってるのって、そう君なら言うだろうな。
でも、それでもオレは……忘れたくない。
絶対に。そう、誓ったから。
ずっと。そう、約束したから。
だから、

嬉しい。その時のオレには、まだその感情を言えるほどの心がなかった。でも今ならわかる。君に「美味しい」って笑ってもらえて、オレはすごくすごく、嬉しかったんだ。

懐かしい、君がまだオレのそばにいてくれた時の遠い遠い昔の記憶。
まだ今よりずっと弱かったオレと、いつも優しく微笑んでいてくれた君との、
忘れることのない、大事な、大切な、思い出。





「すごいね」
「え?」

オレの作った料理を目の前に、食堂で座る君が、ぼそりと言葉をこぼす。
その時、オレは君の言葉を聞いて戸惑った。一口口にした君がスプーンを置く動作をとったから、てっきり「もういいや」といつもみたいなつまらなさそうな顔をして、そう言ってくるものだと思っていたから、すごいという言葉に、ただ、ただ、オレはどう返したらいいのか分からず。
そんなオレの戸惑いを知ってか知らずか、君はスプーンを置く動作をとったまま、料理を見つめたまま言葉を続けた。

「これ、キミが作ったんでしょ。僕には料理は作れないし、だから、すごいなって」
「え、あぁ…」
「…食べるって意味が正直ね、僕にはよくわからなかったんだ。僕は食事って、人間が生きるために必要な行為くらいにしか思ってなかったから、周りの人たちが食べてる様子を見て、ずっと、ただただ疑問だった。なんで、今日は何にしようとかただの行為になやんでいるのか、それに欲ってものが存在してるのかとか、

でも、今、少しだけわかった気がするよ」

間をおいて、君はオレの方へと顔を向ける。
目を細めて、君はオレの目を見つめながら、優しく微笑んで、

「……美味しいね、すごく」

幸せそうに、そう、オレに笑いかけて、口にした。
幸せそうに、そう見えたのは、オレの想いから見えたことなのかも知れないけれど、それでも、そんな君の表情に、言葉に、胸が熱くなった。
胸の中の熱を感じつつ呆然としていたオレから君はすぐに視線をそらし、またオレの作った料理を食べ始めてしまったが、一口一口を噛みしめるように、美味しそうに食べる姿に、ハッとしてその胸の内の熱を吐き出すように声を出す。

「………!あっ、そ、そうか!?あ、はは…あぁ〜、よかった…オレてっきり……そっか、うん…君にそう思ってもらえるなら、オレ……君のためになら!料理くらいいくらでも作るぜ!」
「……そう、」

オレのテンションに、声に押されたのか引いたのか、先ほどまでの優しげな声とは裏腹な、いつもと変わらぬ落ち着いた冷たいとも取れる声で帰ってきた返事に、オレは抱きつきたい気持ちを必死に抑えながら顔を両手で覆い、内心で床をのたうちまわり転げていたのだった。最中、刺さるほどに痛い視線を感じていたので、それは内心ではなかったのかもしれないが…

「ありがとう」

そう、君が''さいご''に呟いた言葉は、オレの想いからのまやかしではない。
悲しげに呟かれたそれは、君にとって、どんな意味があった言葉だったのか、オレには分からない。でも、いつかきっとわかる日が来るとオレは願い続けて今を生きている。



「………リルト?」
「え?あ……ごめん、うん……美味しいって言ってくれて、ありがとう。そんなふうに笑ってもらえるなら、料理くらいいくらでも作るよ」
「え…いや、こっちこそ美味しいご飯をいつもありがとう、リルト」

急に黙り込んだオレを不審に思ったのか、フレンが心配そうに俺の顔を覗き込みながら、オレに声をかけていた。
ハッとしたオレはオレを見つめるフレンに、とっさに言葉を返す。ほんの少し、いやかなりずれた返答になってしまったとフレンたちの表情を見てから思ったが、急に黙り込んだあとの急な真面目な態度に、フレンも先ほどまでユーリに対して説教じみた態度をとっていたが、ほんの少し戸惑った表情をした後にオレに合わせてか本気で心配した様子でオレに微笑みかけて大丈夫?と口にする。

「…でも無理はしないでね?当番制なのに結局いつもリルトにてつだわせてしまっているようだから…船には僕たちも、たくさんの仲間がいるんだからね」
「ま、美味い飯がくえるにこしたことはねぇし、せいぜい頑張れよ料理人。どうせ料理くらいしか取り柄がねぇんだから(フレンたちに任せる日が減るに越したことはねぇし)」
「アンタはいちいち口が悪いんだよ!!!悪かったな弱くて!!!?(それにはまあ力になれるならなるに越したことはないけど!!!)」

ああ、この人はそういうたいぷだった、と真面目に心配されてちょっと申し訳なくなりにが笑ったところで、ユーリはそんなリルトの心境を知ってか知らずかいつもの様子で茶々をいれてくる。
それにオレが声をあげ、フレンがユーリに呆れた様子でオレをあやしに入り、ユーリを叱りつけた。
そこでそんないつも通りの日常に戻る。



君のいない世界で、君を待つ生活で、バカをして笑われる、そんな日常に。








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終わり方!雑!!!(ただユウの回想を書きたかった)
ここで裏設定(?)リルトはセルシウス同様精霊に近いという設定にしているため作るけど基本食べないしユウとは違い美味しいとかの感覚感情はないため食に興味はない。なので同じディセンダーであるユウに食べてみたいと言われて作ってあげたさい、どうせ何も感じないだろうなぁって心配してたが故に美味しいと笑ってくれたことに驚いた、ユウが食により美味しいって少しの幸福感、感情を覚えたことに超喜んだというあれそれ(表しきれなかった…)
ユウが美味しいと食べてくれたから今も作ってるんだよそして上手いんだよという……あと付けがしたかったが故に書いた小ネタ。久しぶりにフレン、ユーリと原キャラたちと絡ませられて楽しかった…


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