×徳川家康

※ 主人公は三成に瓜二つ。
※ 家三注意。ちょい暗め黒いです。




民の平和を願い、友と戦ったあの日から、どれだけの月日が経っただろうか..あの日の出来事を忘れられるはずも、忘れるわけもなく、今でも鮮明に覚えている。
無惨にも横たわり、冷たくなった友の姿を......この変わった世の中でも、ワシだけは覚えていた。しっかりと、その光景を。

「......三成...?」

そんな、平和な日ノ本で......なんてことないいつも通りの景色の中で、一つだけいつもと違った陰が目に入った。
居るはずのない人物。ああ、だって、あいつはワシがあの時に......分かってはいたことであった。
でも、見覚えのある背中を見つけた瞬間、気づいた時には、すでにワシは考えもなしにその背中へと声をかけてしまっていた。

「三成..!」
「............は?」
「あ......いや、え、あ......す!すまない、間違いであった!」

案の定、帰ってきた不審がった声。
当たり前だ。いきなり知らない顔の人物に知らない名前で呼ばれたのだから、そう反応されてしまうのも無理はない。
しかし、ワシは振り返った顔を見て、一瞬..心臓が止まるかと思うくらいに驚き、言葉を発するのを忘れてしまった。

だって、後ろ姿だけではなく、その人物は顔まで、あの頃の彼と変わりない程に、そっくりだったのだから。

その人物のなにか?という問いかけでハッとして、たどたどしく人違いであったことをワシは謝罪する。まだ、心臓がばくばくと煩い。
そんな不自然な態度のワシに対し、その青年は眉を寄せ、首を傾けた。

「引き止めてしまい、すまない。貴方があまりにも..知り合いに似ていたから、つい.........いや、本当に申し訳ない」
「あ、ああ...急に肩を掴まれたもんだから何事かと驚いたが......そういうことなら、別に構わない。怒ってなどはいないから...顔を上げてくれないか?」
「.........ああ、ありがとう」
「......感謝されるほどのことをした覚えはないんだがな..」

おかしな奴だと思われたのだろうか、青年はワシのこと見ながら困った顔をしている。
顔をあげ、青年の顔を改めて見ても...ああ、やはり似ているなとワシは思い返した。
しかし、当の本人はワシが最後を看取っているし、なによりワシがこの手で殺したのだから..もしも再会したとして、あいつならこんな態度は絶対にとらないだろう。この人物はたまたまよく似ていただけの他人なのだ。
そう、ただ、偶然にもよく似てしまっているだけの。
マジマジと顔を見つめていたら、困り顔をしていた彼は視線を泳がし、最終的にワシから目をそらした。

「.........あまり見られるのは、いい気はしないのだが...」
「は..!あ、重ね重ねすまない!」
「いや、別に謝られるほどのことでも......なんていうか、先ほどから謝ってばかりだな、君は」
「え、あ..はは、そうだな......そういえば」

若干呆れたように笑う彼に言われ、ワシは納得しつつ苦笑う。
あまり人との関わりに..というか見られ慣れていないのか、彼は先ほどからほとんど視線をそらしたままで、ワシの目から逃れるようにたどたどしくしていた。
彼に似た透き通るほどに白い肌からも、あまり外に出るタイプではないのかそれかそういった環境で育った者だと言うことはすぐに分かる。
そんな、照れたようにワシから目を逸らす青年の姿すらも、なんだかとても愛おしく感じ...ワシは無意識のうちに自然と笑みをこぼした。



ここで会ったのも何かの縁だと理由をこじつけて、ワシは問う。
名前はなんだ?と、聞かずにはいられなかった。
返された名はやはり知らないもので、違うとは分かっていても、やはり、少しだけその事実にワシは落胆する。
ワシの態度に、青年は不安そうな顔を浮かべ、しまったと感じたワシは、なんでもないんだとごまかすように笑う。
笑かけたワシに対して、青年はまたきごちない表情で苦笑いをした。



「家康.........え、まさか、徳川家康?.........え?」
「あ、ああ......ワシの名は、徳川家康だが..」
「...............今、ものすごく失礼なことをした感があるのだが......え、本当に徳川...あの徳川家康?なんでこんなところに..!?」


聞いた以上こちらも名乗らないわけにはいかず、いや、きっとこの青年ならそんなことを気にしないだろうが、ワシがそうしたかったから、名を名乗り返せば、案の定青年からは驚きと焦りの声が飛び出した。

「なぜと言われても.......な?」
「あ......ああ」

半信半疑で聞き返してくる青年に、事情というよりは諭すように言葉を返すと、青年は納得はしていないながらも事情を察したのか深く追求することはやめた。
容姿は似ているが、性格は逆でとても素直な人らしい。

「まさか、アンタみたいな有名人に会うことになるとは......えっと、なんか..すまない」
「謝らないでくれ、元はと言えばワシから声をかけたのだ。それに...出来れば、お前には素で話して欲しい..そう思っている」

えっ、と返ってくる声。
当たり前だといえば当たり前だが、青年は困ったように視線をキョロキョロとさせた後、ワシの顔を見て分かったとは言わずともそうかと曖昧な返事をした。
可愛いと感じたそんな自分に、ワシは笑う。

またこうして話をしたいな。
ここでお別れというのはもったいない。
もっと、もっと、こうしていたい。
ずっと、一緒に居たい。

ワシのものにしたい。


独占欲にも似た、そんな感情が、ワシの中で膨れて行った。
たわい無い会話をして、笑いあって、そんな時間ももう終わりに近づいている。
会釈をして、もうしわけなさそうに謝り、帰ろうとする青年の腕を、ワシは掴んだ。
強く握ったそれからは軋む骨の音がなる。
青年の身体がびくりと跳ね、揺れた。
痛みと驚きに青年の顔がゆがむ。
振り向いた顔からは、分かりやすいくらいに恐怖が見て取れた。


「なあ、成二......もし、お前が良ければ......また、ワシと会ってはくれぬか?」
「え、そ.........それは、構わないが..」
「............ありがとう」
「............あ、ああ..」

それは、お願いと言うには力が篭っていて、青年は頷くことしかできなかった。
口元は笑っているのに、目は青年を睨みつけていて、青年の答えを聞いて、ワシは震える腕から手を離した。
ありがとう、と嬉しそうに言葉を漏らしながら。



<友によく似た彼と、悲しげな顔をした青年>

まずは、またお前に会えたことに感謝を..
そんな、気を張らなくともいいと思うんだが..

ギクシャクした関係のまま、結局何事もなく時間は過ぎて行った。けれど、それでも''彼''と過ごせた時間はとても充実していて、ワシにとってはそれだけでとても幸せだった。
笑わずとも泣こうとも、今この場に''彼''が居てくれるのだから、それだけで。








(゚д゚)

主人公を三成の代わりにしちゃってる家康さんのお話し。最初は幸せそうなオチにしてたのにいつのまにか監禁してそうなオチになってましt
家康相手になるとどうしてもシリアスっぽくなっちゃいます(´・ω・`)
このあと長い付き合いの末に恋人(笑)になってから本当の三成と再会しちゃって主人公捨てて三成の方に行っちゃう系ゲス康とかになると思う(え

これまた現代でも戦国でもどちらとも読めるように書きましたのでお好きな解釈でどうぞ...と言いたいんですが、戦国だとちょっと無理があるかも..です。




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