アリスちゃんとリルト 2/13 14:56 アリスちゃんとリルトで力についての見え方の違い。ラタインリルト。 一人称二人称は雰囲気ですごめんなさい。 「なあ、なんでキミは力を求めるんだ」 「今更、なんでそんなこと聞くの?力がなかったらただ制されるだけ。力があれば、なんだってできるじゃない。アリスちゃんは、やられっぱなしっていうのが、いやなだけよ」 「死にたくないから力を、欲するか…そうか……知らないから言えることだな」 「なに?何か文句でもあるわけ?ていうか、あんたまであのバカみたいなこと言うのね。顔だけじゃなく、言うことまでそっくり。なんでそこまで力を求めるんだって、私の勝手でしょ」 「……そうだな、オレは別に否定したいわけじゃないから。ただ気になっただけだ。気分を害したなら謝るよ」 「…ねぇ、逆に聞いていい?あんたは力があるのに、なんで使わないの。あれだけ強いなら、なんだってできるはずでしょ。私に逆らうことだってね」 「え?いや、だってキミに逆らう理由ないし、それにオレは強くなんて…」 「強くもないなら側に置いてないわ。あんたは護衛。あいつだけじゃ信用ならないもの。あいつがダメになった時の保険なんだから」 「力なんて、あってもいいことなんてなにもないと思うけどなぁ…」 「それはリルトくんに力があるから言えることじゃない」 「オレは力を持って生まれてきたことを、良かったなんて思ったことはないけど…むしろ、力なんてなく普通に生まれたかったよ、オレは」 「もったいない。あれだけのことができて使わないなんて。アリスちゃん意味わかんなーい。ていうかあいついつまでかかってんのよ…」 「力、ね…」 勇者さま、 救世主さま、 ディセンダーさま、 どうかお助けください! さすが救世主様だ!! ああ...ディセンダーさま..! 期待の目を向けられ、 弱り、怯えた人間共は、救世主と縋った相手を化け物だと罵倒し、最終的に恐怖の矛先をその救世主と呼んでいた彼へと向けた。 この厄病神! あんたさえ生まれてこなければ! 何が救世主よ! 消えてよ!化け物!! 勝手に救世主と呼んだくせに、 歴然としたその力の違いに、恐怖の対象を世界を脅かす存在から、人間共は彼に変えた。 身勝手なことに。 力、それは恐怖の対象だ。 人は自分よりも強い者を見ると、少なからず心のどこかで恐怖を感じるものだ。 たとえその存在に敵意がなくても、 たとえその力が世界を救うものだとしても、 人間は自分の恐怖を拭うために、 自分を守ると称して、 その存在から、恐れから、人は逃げようとするのだ。 それを、オレはよく知っている。 力は、何かを押さえつけるためだけに存在するものだ。 力のないものは力のあるものを恐れる。 悪、場所、地位、感情。 力さえあれば、なんだって出来るのも確かだ。 だから、それを欲する者がいるのも、仕方のないこと。 でも、周りはそれを受け入れてはくれない。 力を得ようとすれば、それ相応の対価を必要とするのだ。 それを欲する彼女の気持ちがオレには理解できない。理不尽に迫害される道を自ら歩もうとするその心なんて。 「あー!!!!!オマエ!オレのアリスちゃんにまたー!!!!」 「誰が誰のよ。遅い!どこまで行ってたのよ!相変わらずのグズなんだからっ!」 「ご、ごめんよアリスちゃん…」 「なにもしてないのに理不尽なのは今もか…」 もうダッシュで一直線に彼女のもとへ帰ってきたデクスに怒鳴られ、オレは苦笑う。 こんな彼と少しでも似ていると言われたことには……否定ができない分、困ったものだ。オレも昔は端から見たらこうだったのだろうと思うと少し恥ずかしく思えた。 「似てる……か」 「ちょっと、なに下向いてやってんのよ。デクスも来たことだしそろそろ行くから、準備して」 「あ、ああ……ってオマエ顔こわっ」 「オレのアリスちゃんに…」 「はあ…」 行くといいさっさと先を行くアリスと、 みっちり叱られ、なぜかオレを睨みつけているデクス。 そんな当たり前になった光景にオレは大きくため息を吐いていた。 リルト、ラタ世界へ。アリス編。というか力とは何かを書きたかっただけのお話。 アリスは力があればなんでもできる、リルトの言う恐れの対象になりたいって思ってるけど、恐れは悪にされる現実を知っているからリルトは複雑 レイズ にアリスちゃんデクス参戦嬉しすぎてのテンションでした。 |
リルトとカノンノ RM1後 6/3 17:30 テレジアの世界樹の前、見慣れた後ろ姿。 寂しげに揺れる金色に、私は声をかけた。 「ねぇ、リルト」 「カノンノか…どうかしたのか」 私のことに気づくと、リルトは私の名前を呼び、一息置いてこちらに目を向けることなく空を見上げていた視線を一旦落とし、落ち着いた声色で応えた。 世界樹の幹に腰掛けて、空を見上げていたリルト。いつも、そこから動かない、そんなリルトのことを、みんな、気にしていた。 たまに、リルトのところに顔を出して、話しかけたりしていたのだ。 でも、そんな気にかけていたみんなもいなくなって、何度か景色が移り変わっても、リルトは変わらずそこに居続けていた。 理由は、みんな知っている。 あの人の帰りを、待っているんだ。 私も、待っていないわけではない。あの人の…君のことを、私も今でも待ち続けている。みんなに会いたいって理由で個々にたまに遊びに来ていたけど、あの頃一緒だった仲間のみんながいなくなっても、私は未だにこの大好きなあの人の守った世界にたまに立ち寄っていた。モルモのところにも遊びに行くことはあるけれど、たまにこの世界でも会うことがあるし、一緒に遊びにくることもあったりで…でもリルトの場合は、ずっとこの場所で、君の帰りを待ち続けているのだ。何年も何年も、縋るように、君のこと。 「久しぶり、だね。私の世界はこの前、四度目の実りを迎えたわ…テレジアも、また実りをつけたのね。とっても、綺麗…」 「……そうか」 声をかけて、たわいない会話から、入る。 目も合わせず腰掛けていたリルトの隣に座って。 リルトはまた、気づけば空を見上げており、青々としたその色を瞳に写していた。 出会って、それから──その時と同じ、草花の匂いが乗った心地よい穏やかな風が吹く、世界。私の世界とは違って木々の隙間から木漏れ日が差していて、暖かくて、気持ちがいい。同じく空を見上げれば、私の世界では見れない色が広がっている。どんなに時が流れても、懐かしいと感じる、大切で大好きな、世界の色。 一緒に空を見上げて、話をする。会話というには、一方的だけど…私の世界では、とか、この前モルモに会った、とか、そんなたわいない話。 リルトは、横に腰かけた私に先程の返事から何か言うこともなく、静かに私の話を空を見上げながら聞いていた。聞いて、いたかは、私が勝手にそう思っているだけだけれど、リルトは嫌そうにでも嬉しそうにでもなく、ただただ静かに空を見上げて、私の隣に座っている。 いつも、そう。 あれからリルトは、ずっとここで、こうして、あの人の瞳の色と同じ綺麗な色をした空を、あの人の居なくなった世界樹(場所)のまえで、見上げている。 見た目は変わらない。成長をしない私たちにとって、それは変なことではないけれど、リルトの場合は、見た目だけが、変わっていないようで… いつもあの人が隣にいた時、嬉しそうに笑っていた、そんな昔のリルトの表情を、あれから私は見ていない。愛想笑いすら、見かけない。 最初の頃は振り返ってくれたけれど、話しかけても、今では顔がこちらを向くことはなくて、あの人とはまた違った綺麗な、光るような緑の色をした瞳には私たちの姿は映らない。長い間その瞳の輝きを私は見ることができずにいた。 私が見ることができるのは、風になびく黄色と青を見つめる横顔だけだ。 金色の髪がゆれ、寂しげに見える背中を前に、私は声をかける。名前を呼んで、久しぶりと。 この間はモルモも一緒に遊びに来て、ここに立ち寄った。その時もリルトは振り返ってはくれなかったけれど、横に座って話をする私と、周りを飛び回り語り出すモルモに、小さく短く、相槌をうってくれて、モルモが居た分賑やかな時間を過ごすことができたっけ。モルモでさえ、と言ってしまったら怒られてしまうかもしれないけれど、リルトのことに関しては慎重に言葉を選んでいる節を感じることもあって、あの人の話を、私たちはいつしかこの世界の思い出として語ることはあっても、あまり触れないようになって、話すのは自分の世界や他の世界のことばかりになっていた。 ずっと、このままなのか、私たちには、聞けなくて、ただ心配で。 リルトは話に来る私たちのことをどう思っているのか、わからない。表情が、見えないから。でも受け答えをしてくれているから、嫌ってわけではないのだと私たちは勝手にそう、思っている。 それを、聞くことも、私たちにはできない。リルトに、何かを求めることが、私たちにはできなかった。リルトは、普段口は悪いけど、根はとても優しいから…私たちが気を遣っているってそう思って欲しくなくて、だから、ただ話をしたいという、これはそんな自分たちのわがままなのだと、そう思っていてもらえたらって……といっても、リルトなら、そんな私たちの気持ちにすら気づいているんだと思うけれど… 木々の揺れる音、草花の匂いを感じながら、私は一人、苦笑う。 リルトは、依然と空を見上げたままだ。 その横顔を見て、私ももう一度空を見る。 あの人が…君が残してくれた世界の色。君の瞳の色に似た、とても綺麗な青空。ふと、君の色を思い出して、私の世界の花の色を思い浮かべた。 月光を浴びて淡く光る、君の髪の色に似た白い花を。 「ねぇ、リルト」 短い沈黙のあと、なんだ、とリルトは聞いてくれる。 隣で空を見上げたままでいるリルトに、私も空を見つめたまま、言葉を続けた。 「今度、私の世界にも遊びに来て。この世界の空のように澄んだ青い色ではないけれど、とっても綺麗なお花があるの…昔も、大好きだったけれど、あの人と私の世界に咲いた花…とっても綺麗で、貴方にもいつか……」 あの人と私の世界を、見て欲しい。そんな、私の気持ちを、リルトに伝える。 「………ああ、」 ただ、それだけ、リルトは返す。いつか、という私の言葉に、応える。 そっけないような返事、だけど私にはその声がすごく懐かしく聞こえて、 穏やかさを含む声に、視線を落として、リルトの方を見た。 リルトの、光を浴びると濃く浮き出る緑色の瞳と、目があって、 「…ありがとう」 目を合わせて、リルトは、ぎこちなくだけど、ほんの少しだけ…笑って、そう言った。そして、また、リルトは視線を空へと戻す。 すぐに視線はもどされた。だから、これは微かに、そう見えただけだから、思い過ごしかもしれない。でも、その顔とともに向けられた言葉に、私も、自然と笑みが零れて、ただ気持ちを伝えただけで、何かをしたって気持ちはないけれど…リルトの言葉に「うん」とただそれだけを、私は返し、一緒に空を見上げた。 青い空に、輝く光。私の世界にはない、眩しい輝き。 太陽の陽を浴びて、あの人の…君の残した世界の光を感じて、目を閉じて、思い出す。 大好きだったあの人の、 大切だった君の、 カオ─笑顔を。 いつか、リルトと、モルモと、そして君と、私の世界に…… (いや、みんなでまた笑って過ごせるなら、どこだっていい…) いつか叶うなら、 みんなで、他の世界に行って、見てみたいな… ルミナシアで会いましょう的なテレジアその後のリルトとカノンノのお話。 |
リルト RM1〜2 4/29 17:38 ここに前に書いたRM1から2までの空白の時間の闇堕ちかけリルトの話。 「人をいたぶるのって楽しい?」 「寂しい人なんだね、そんなコトしてないと生きられないんだ」 何年も何年も、救世主として世界を救うコトだけをして生きてきたオレには、 オレには、世界を救えるだけの力しかなかった。 趣味なんてものもない、オレにはこれしない。 だから、倒す。 敵を倒すだけ。 そんなコトばっかりしていたら、 何時の日か、何かを傷つけるコトで優越を覚える身体になっていた。 血を見るコトが唯一の喜び。必死に逃げ惑う相手の顔が面白い。 自分には力しかない。 その結果が人やモノをいたぶるコトだった。 切りつけるとスッキリする。救うだけの人生を忘れられる。 その時は、自由になれた気がしていたんだ。 そんな時だ。 「もっと、有意義に生きたら?」 「特になんないことをしてたって、つまらないよ」 今は、君と居るコトが唯一の喜びだ。 君の居る間だけは、人間として楽しみを覚えていこう。昔みたいに。 そう、思っていた。だけど、ユウは─ ユウが居なくなってから数千年。 君をなくした代償に、またオレは人殺しをするようになった。 つまらない、あいたい。 苦しみを埋めるように、街にでては人を傷つける。 ギルドとかいうチームはどの世界にもあった。昔に見た奴らも何人かいた。 それじゃ意味がない。 「最近、街中で傷害事件が多発しているみたいよ」 「怖いなあ」 「皆も気をつけてね」 「特にお前とかな、ヘタレ」 「ヘタレ言うなし!」 傷害事件?ああ、オレのことか。 バレたらどんな反応するかな、こいつらは。なんでと問うか、それとも─ オレが何ものかも知らずに、とってつけたような作られた態度で、どうでもいい奴らをあしらう。そんなオレの態度に笑っていた奴ら。その時には一緒には、オレは笑わなかった。 それから数日後、赤く染まった世界の中央、見慣れた姿ではなくなった奴らがたくさん転がっているその傍で、一人静かにオレは嗤う。 最後の一人は、オレに憎しみの目を向けていた。 「なぜか」と問う暇もなく、倒れて行く。 オレが犯人であったと知った奴らのほとんどは、絶望した顔をしていた。 それが、バレた時の反応の答えだった。 君がいない世界にいる意味はない。 そう告げて、リルトは今を捨て次を求めて、荒れ果てた大地を背に世界樹の中へと消えて行った。 ───────── ふとメール見てたらメールに色々保存してた時代のが出て来たので。テレジアからの、ユウを探す間のリルトの話。闇落ちしててもいいよなぁって昔の作品読んでちょっと原文からは修正しました。キャラは覚えてないけど多分話してるのはアンジュユーリリルト辺り最後の一人もユーリのはず。でもご想像にお任せ。 ユウのいない世界には容赦はなさそうだよなって。仲間にならないパターンもあるしこのリルトにとっては救済=存続ではないから時間かけて救うより早く次に行くためにうわべだけで滅ぶきっかけを消して一時的な救いをするから敵対することの方が多い。楽しい闇堕ち。 |
もしもの派生 RM3後 3/19 15:57 派生リルトの語り。 これは、夢の一つ、 これは、もしもから続く物語。 「オレはオマエが選ばなかった選択を選んだ存在だ」 「アイツの手をつかまず、そして、記憶にすらすがらなかった、何もかもを投げ出した、そんな選択を選んだオマエだ」 「オレは間に合わなかったんだ。アイツを、救ってやれなかった」 「人間共に嫌気がさして、アイツは─世界を捨てた。救世主という存在すらも、投げ捨てて」 「気付いた時には、アイツはもう、オレの前からいなくなっていた。なんの言葉もなく、アイツは姿を消した。オレに、オレたちに世界を託して」 「託された世界すら救えなくて、何も、出来なくて、オレは全てを消す選択を選んだ。オマエだった頃の記憶も、アイツの存在も、全て」 これは、夢物語。 もしもの、その、お話し。 「そう、オマエにとったら、これはいわゆる、ただの夢だ」 「そして、オレにとってはオマエが、夢だ」 どちらが正しいなんて答えはない。もしも、や、もしかしたら、を探し出したら、救い出せていたそんな結末だってあったかもしれない。だが、それは、オレたちにとってはなんの意味もない。ただの、願望に過ぎない。気まぐれに、世界の結末など変わる。でも、受けた結果は、変わらない。 「こうしてオレが語っているのも、ただの気まぐれの一つさ」 誰かの望んだ、そんな夢物語。 ─────── マイソロ4を妄想していた時にできた話し。 リルトの派生↓ リルトがテレジアもユウも救えなかった世界線からの存在。 記憶を消す選択をして、その後何回かディセンダーとして生まれ変わっていくうちにルミナシア後のアストのいる世界へと偶然かはちあい、そのあと何度か世界を共にした。アストと出会う前からも一度消してからは記憶はその後保持しており、アストは派生リルトをリルトと理解はしているがあったことのない存在として最初はそう認識した(そもそもルミナシアでのリルトがルミナシアの存在ではなかったことから、ここにいるリルトは自分があったことがない時期のリルトだと思ったらしいが付き合いが増えていくにつれてリルトだが別のものだと認識を変えている) 名前は、メサイア。リルトという名は捨てているため、救世主として降り立った場所でその名をもらったのが由来。自分ではイアと名乗っている。 リルトに顔立ちは似ているが髪は赤い。髪も短い。 アスト。アストという名はリルトからもらったものだが、今は親愛なる世界の名を刻むように、ディアと名乗っている。以前よりも髪が伸びた。 二人ともマイソロ4軸ではディセンダーではない。ディセンダーは別にいる。 いつからかディセンダーとしてではなく、二人はディセンダーを補助する役割を持って世界を巡っている存在になっていて、今回もそのために動いている。 |
リルトとアスト RM3 3/15 13:04 ジルディアから生まれた憎しみしか知らない出来損ないなディセンダーアストに色々教えるリルトな話し。 「ヒトは、なんて愚かな生命なんだ」 あの方は、いつもそんなことを言っていた。 「おお!ディセンダー様だ!我らがディセンダー様が降臨なされたぞ!!」 自分の弱さを棚に上げ、何かにすがりつこうとし、 「病気をなおしてください!お願いします、ディセンダー様!!」 都合のいいように神だと崇めたてて、好き勝手な理想を語り、 「こ、こんなこと望んでない!誰か、助けてくれ!」 「化け物!俺たちを騙しやがったな!!」 ふざけるな、と その理想が現実ではないことを知った途端、手のひらを返したように争いを始める。 あの方は、いつも言っていた。 「争いのない世界にしたい」 「ヒトが居なければ、きっと誰も傷つかずに済む世界になる」 いつも、一人で、そう呟かれていた。 美しい顔を歪め、苦しそうにしていた姿を見て、おれは初めて「憎む」という感情を知った。 「ヒトは醜い生物だ、おれはその考え方を変えるつもりはない。おまえは何故、そんな人間共相手に..笑っていられる」 「オレはさ......いくつもの世界を巡ってきた。争いの絶えない世界ももちろん、たくさん見てきた。確かに否定は出来ない、人間は哀れな生き物だよ。何回殺されたかも分かんないし..疫病神だとか言われたりもしたっけな」 「否定はしない?わかっているのなら、そんな仕打ちを受けてもなお、なぜおまえは......っ」 「それがオレの..救世主の使命だからだ」 だって、それがオレたちの使命だから。 それがオレの存在する理由だから。 それは、オレたちが救世主(ディセンダー)だから。 「救世主..?使命?...そんなもの、理由になんてならないだろう!!ヒトを守って、いったいなんになる!?」 「守るべきものは人間じゃない。オレたち救世主は、世界を守るために生まれてきた存在だ、それを忘れるな。たかが人間のために犠牲になったりしねえよ、人間は動物と変わらないただの生物だ。世界を救うためだというなら、好きなように切り捨てればいい。だが、それは人間だけに限らない…争いを生むのは、思いだ。だから、人間を、どうにかしても、何も変わらないぞ」 「そん、なこと…」 「なら、アンタの今の、その思いはなんだ?憎しみだとかいうそれは、人間どもの思いと何が違う?」 生命なんてものは皆、身勝手な生き物なんだよ。 だから、だったら、世界を救うためなら、脅威になるというなら─ ─なんて、 「前のオレなら、説いていただろうなぁ……今のオレは、守るべきもの、いや、守りたいもののためにこうしてここにいる。使命だとかなんだとか、ほんと糞食らえだって思ってるよ。オレたちは、オレは確かにここに存在している。世界を守るなんてものは生まれた理由ひとつで、生まれた理由以外、何も人間と変わらない」 命あるものは、皆、同じ─ 「笑って、泣いて、憎んで、想って、何も…持てるものは、変わらない」 そう、オレたちだって。 「人間だって、同じだよ。生まれたいと願って生まれてきたものなんかきっといない。うまれたばかりでは、何も知らない。同じなんだ」 「同じ……ちが、う、おれは…」 「アンタのその気持ちも、ラザリスを想ってのことだろう。生まれてからずっと、側で見てきた、そんなラザリスの痛みを、癒したいって、そう思ってるその気持ちは、れっきとした想いだ」 「ラザリス、様…」 「憎む気持ちを、オレも持ってしまった。たくさんたくさん、壊してきた。感情任せに、たくさんのものを。それは、争いだった。自ら争いを生む人間を憎んで、壊して、そして同じことをしていたんだと気付いた時、なんでこんなにも憎んでいたのか、憎む相手は誰だったのか、わからなくなったんだ」 苦笑って、リルトはそう告げる。困惑した様子のアストに。 きっと、アストも気づいているのだろう。ラザリスがルミナシアという世界と和解し、共に歩む道を取った時に。ただ自分の唯一知っているこの感情の矛先を、見つけられずにいたのだろう。生まれたばかりの、まだ小さな子供が、唯一覚えてしまった『憎む』という気持ちを。 ラザリスは、確かに、ずっと、争いのない世界にとそれを望んでいた。勝手なヒトの欲から生み出され、そしてそんな身勝手な存在により滅ぼされかけた、ラザリスが、憎む先を何かに向けてしまうのは…その気持ちは、わからないわけではないから、仕方ないとすら、思う。 でも、ラザリスも、今は救いを、居場所を得ることが出来たのだ。手を伸ばしてくれた存在がいたから。 そしてオレにも、そんな存在がいた。だから、今、こうして存在出来ているんだ。 こいつは、わからないんだ。行くべき場所が。 だったら、 ラザリスの時のように、 オレのように、 「ラザリスは、今、誰かを憎んでなんかいないよ。ルミナシアと手を取り合って、より良い世界にしようって、そう思ってるはずだ」 オレの時は、君が手を差し出してくれた。何もかもに絶望していたオレに、生きる理由じゃなくて、意味をくれた。 「なんでそう言えるって言いたいんだろ?オレがそうだったから、なんてそんなの証拠にも何にもならないんだけどさ、世界を見れば、わかるよ。ルミナシアとジルディアの匂いが、マナが、混じり合ってる。支え合って、生きている。共存を望んでいる。すごく綺麗で、暖かい、二つの世界の混ざった匂いがするんだ」 「あたたかい…きれい……?」 「アンタにもわかるだろ。ラザリスの…ジルディアの匂いは」 わかる。ずっとずっとそばにいた、大切な、方の匂いなのだから。 アストは、リルトの言葉に静かに空を見上げる。 木々が揺れる、その中に、ラザリス様の残したものが、ある。ラザリス様は消えたわけではない、それは、分かっていた。ラザリス様は救われた、それも、わかっていた。ただ、自分が生まれた意味がわからなくて、おれにはこの感情しかわからなくて、認めることができなかった。本当なら"嬉しい"ことのはずなのに、おれは、それを知らないから。 「オレも最初は何も知らなかった。行く道も、行く先も分からなかった。だけど、手を差し伸べてくれたひとがいた。そのおかげで、今、ここにこうしていられてるんだ。だから─ ─今度はオレがアンタに手を差し出してやるよ」 立っている、そいつに、掌を上に向け、手を向けた。 素直にただ、やれるべきことがあるなら、してやるのも悪くないなと思って、自分に対して漏れた笑みを、そいつに向けながら、手を。 そんな気持ちを向けられたアストは、 「……?」 ポカンと、なにやってんだこいつと言いたげな顔で首を傾げていた。 「いや、え?じゃないよ!!?ここは感動するところだろ!?」 「…そんなもの知らん」 「はあああ…本当アンタってやつは……まあ、もしアンタが間違った道に進もうってんなら、手を掴んで止めてやるから、分からなくなったなら引っ張ってやるから、だから、気楽に生きろよ」 「………」 「うん、えっと、あー…拒否しないってことは、肯定と受け取っとくわ…」 少し呆れた様子で、笑うリルトに、アストは特に何か反応するわけでもなく、そっけない態度でそっぽを向く。 好きにしろ、という意味なのか全く関心がないのか。 それは分からない、 だが、アストの態度の中からはもう、先程までの憎しみを向けていた感情は感じられなくなっていた。 ─────── アスリルの関係が書きたかったそんな、やつ。ただ書いてて楽しかった。 |
ユウ語り RM2 3/15 12:43 「やっぱり、ディセンダーだったんだ…!」 「あなたがディセンダーだったのね」 「すごいよ、まさか本当にディセンダーだったなんて!」 (ディセンダー)(すごい)(ディセンダー)(やっぱり)(救世主)(世界を救って) ─世界を救うために生まれた存在 みんなから、口々にそう言われた。 あなたにしかできないことだと、 あなたにはそれをする使命があると、 俺には分からなかった。 世界を救う、ということがなんなのか。 ディセンダーのお話はイアハートから聞いていたから、知っている。 世界を救って消えた救世主の物語。 俺が、その、ディセンダー? すごいと言われても今までと変わらないから、実感がなくて、流石ね!と普段から言われていた言葉すらなぜか苦しく感じた。 頑張ってと言われるたびに、なぜか、ズキリと胸のあたりが痛むんだ。 「ディセンダー」「救世主」 そう言われるたびに、痛くていたくて、 痛む理由もわからない。 何も俺はわからない。 ディセンダーだから、 だから、 そう言われたって、 ディセンダーであることも、よく、わからないから、 みんなから、ディセンダーだと見られることが、 ひどく、 すごく、 (辛くて、) (苦しくて、) (嫌で嫌で、) (僕は大嫌いだった) 「ユウ」 廊下で一人、立ち呆けて。 握りしめていた拳。力が入っていた肩。 苦しくて、痛くて、何もかもがわからなくなっていた時、不意に後ろから、俺の名前を呼ぶ声がした。 聞き慣れた、優しい声が。 「大丈夫か?」 振り返った俺の前にいたのは、弱気な…?顔をしていたリルトだった。 振り返った位置、少し離れた位置に君がいる。 「あ、えっと…」 「ご、ごめん!気のせいなら、なんだけど、なんか……いや、何でもないんなら、いいんだ」 とっさのことで、何を返したらいいかわからずにいたら、少し困ったような、そんな態度にみえたらしい。少し離れた位置のまま、踏み込んで来たりはしないで、リルトは俺の返答を聞くよりも先になぜか勢いよく謝ってから、髪を触り少し迷った仕草を取った後…優しく笑った。 いつもと変わらない、ずっとずっと変わらない、カオで。 笑う君の顔を見て、俺からも気づけば小さな笑みがこぼれていた。 ふふ、と笑った俺を見て、リルトは今度は無邪気な顔で笑って、また、 「ユウ」 と俺の名前を呼んだ。 笑う君を見ると、君に名前を呼ばれると、なぜか、ぽかぽかと温かくなって、胸の奥から熱が込み上げてくるような、そんな感覚になる。 その感覚が、何だかもどかしくもあったけど、とても心地が良くて、 いつの間にか、力の入っていた体から、その力は抜けていた。 ─────── 記憶がなくても変わらず二人はラブラ…必要な存在だよっていう。 |