「お母さん、秘密だよ。僕、バスケがしたい」
「きゃあ!征ちゃん聞いた?!征太君バスケがしたいって!」
「それは本当か!」
「秘密だよって言ったのに何で言っちゃうんだ」

そろそろ何か習い事とかしたくない?とお母さんに聞かれた時、僕は何故かこっぱずかしかったからこっそりとお母さんにだけ聞こえるように内緒話をした。はずなのに。お母さんのばか。



「お母さんね、お父さんと結婚した時、二人分の洗濯物を見て泣いちゃったの」
「どうして?」
「嬉し過ぎたのよ、色々と」

お母さんは過去を思い返すように宙を見上げた。

「あの頃は、若かった…」
「お母さーん、芹那のパンツがなーい!」
「タンスの上から四番目!……それが今や小さいお洋服が二つも増えて、お母さん、もう、」
「まなー!ポチの玩具どこにあるか知らんかー?」
「あ、ここにあるよー!……そしてさらに、」
「お母さーん、これじゃなくてドラえもんのがいい!」
「ドラちゃんは洗濯中!オバキューで我慢して!……えっと、征太君何だっけ?…あ、そうそう」

さらに、とお母さんは勿体ぶって僕を見た。

「…小さなトレーナー、小さなバッシュ…!また我が家に可愛い洗濯物が増えた!もー感謝感激雨嵐!」

お母さんは手に持っていた洗濯物を全て宙に投げ捨てて、んんん〜!とダンスを踊るように地団駄を踏み出した。それから部屋に入ってきたお父さんに不意に抱き付いて、

「泣きそう、」

と報告してから、オバキューのパンツを捜索中の芹那を抱き上げた。お顔スリスリされた芹那が嫌がると、

「芹ちゃんはお歌の教室に通おうか?ごめんね嫌なところばかり遺伝させちゃって、ふふふっ!」

なんて泣きそうじゃなくて本当に涙をぽろぽろさせながら言っていた。お父さんはそんなお母さんを見て呆れている。だけどその顔はどこか柔らかく優しい。お母さんはおかしな人だ、と言いながらも大きな手で僕の頭をくしゃくしゃに撫で回してくる。どうして。痛いからやめて。

「血は争えないわ。征太がバスケしたいとこっそり教えてくれた時、お母さんは頭が爆発するんじゃないかと思うくらいに興奮しちゃった。それにスポーツ用品店に行った時は鼻血出しそうになったしミニバスに電話する時なんか卒倒しそうになった!征太の初試合の日が来たら冷静にいられる自信がないわ!」

るるるるるーと何やら踊り出してしまったお母さん。お父さんはそんなお母さんが踏まないようにと床に散らばる洗濯物を全て除けた。それから、「ははっ」と笑いながらお母さんの手を取った。二人で踊っている。あのお父さんが、珍しい。

僕は驚きながらも、胸に何か暖かいものがじわりじわり広がっていくのを感じた。そして、どうしてお父さんとお母さんはそんなに喜んでいるのとふてぶてしくも聞いてみたんだ。





不意に期待に応えた幼子
(それはね、…ふふふっ!)




実は征太が自分から言い出すのをずっと待ってた二人。
こっぱずかしい、ふてぶてしく、は幼児特有の照れ隠し。
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