回想


お兄ちゃんがいました。大好きでした。お兄ちゃんも私が大好きでした。でもいなくなりました。事故でふっ飛びました。私のせいです。私が飛び出したのです。お兄ちゃんを確かめたくて。馬鹿でした。本当に本当に馬鹿でした。お兄ちゃんの愛を知るかわりに、お兄ちゃん自身を失いました。可哀想な女の子、だなんて。今まで散々被害者ぶってきましたが、全然そんなことありません。実は加害者です。私が全部悪かったんです。馬鹿な私を、誰も責めなかった。お父さんだって。それが余計に残酷でした。苦しかったです。今も苦しいです。

―――なぜ飛び出したか。お兄ちゃんの彼女より愛されてないと不満だった、んです。知りたかったんです。お兄ちゃんが彼女と私、一体どちらをより愛しているのか。お兄ちゃんが私をほったらかしにするから。私はとても寂しかったのです。それでつい、
「お兄ちゃん、まなのこと好き?」
もちろん事故になるなんてこれっぽっちも思っていませんでした。迫ってくるトラックの存在に気がつきませんでした。

なぜでしょう。常に愛を感じていないと寂しくてたまらないのです。なぜでしょう。一人になるのが怖いのです。でも、人を失うのはもう嫌です。寂しさが、自分の馬鹿な行動が、何を引き起こすのか不安で仕方ありません。だから上手く赤司に導いてもらわないと、だめなんです。だから、赤司がいなくなったら私は一体どうすれば。


うずくまればいいよ。がたがた震えていればいいじゃん。優しい誰かの助けを待つの。可哀想な女の子を演出。あんた得意でしょ?

ほらもう答えは出てるんです。ずるい女でしょう。ええ、最低な女です。だから神様はきっと私を嫌うのでしょう。

常に誰かに愛されてないと嫌なんです。愛を感じてないと不安です。寂しいのは耐えられません。色々思い出してしまいます。だから、一人になるのは怖いです。

「…真太郎、私のこと好き?」
「好きでも嫌いでもない」
「好きって言って」
「SUKI」
「カタコトやめろ」
「………」
「言うだけ。言って」
「すき」
「ありがと」

ああ、またこうやって。

私は真太郎の歩みを止めてしまうのか。もう頼らないと決めていたのに。

(赤司、赤司。私、寂しさでまた何かやってしまいそうだよ)

―――赤司がいなかったら、私は。
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