ごめんなさい
雨が降ってきた。
傘はない。しかし帰るわけにもいかなかった。さすがにもう赤司に言わねばならない。これを隠せば、それこそ裏切りだ。
大きな雨粒が私の頭を叩く。馬鹿だ、と言われているような気がした。
髪の毛が制服が濡れていく。ぐるぐるぐるぐる頭の中が渦巻いている。どうして?その一言だけが。あんなに優しかったのにどうして。
でも、
どうせまた、私が全ていけないのだろう。
自分の唇に触れてみる。また涙が出て来た。(お前ってほんとよく泣くよな)本当にそうだ。ごめんなさい。
「…!」
向こうから歩いてくる人の姿が見えた。赤司だ。駆け寄る。「赤司っ…!」辺りが暗くて、表情は見えない。
「ごめんなさい急にごめんなさい赤司に聞いてほしいことがあるの」
赤司の顔を真っ直ぐに見れなかった。地面と雨に跳ねる水溜まり、しか。
「ごめんなさい…ほんと、こんな大事なときに…っ」
頭上の雨が止んだ。パラパラ、と雨が布にぶつかる音がして、ああ傘をかざされたんだとわかった。
赤司は何も言わなかった。それが私には怖かった。
急に手を引かれ、赤司の家へと連れ込まれる。促されるまま靴を脱ぎ、そのままシャワー室へ。ここまでずっと無言。床に垂れる雫が申し訳なかった。
「…温まってこい」
怒っている声だった。ああ全部知ってるんだね。ごめんなさい。
どうか嫌いにならないで。