こんにちは、ヒーロー
体育の時間だから、と外しておいたのがいけなかった。宝物はいつも身に付けておくべきなのだ。
授業が終わると、なぜか置いておいたはずのところにそれは無かった。誰かに盗まれたのかもしれない。しかし万が一自分の不注意でどこかに落とした可能性を考慮し、一人で学校中を探し回っていた。その時、急に初対面の灰崎に話しかけられたのだ。私は適当にあしらったが、灰崎はその態度が気に入らなかったらしく、そしてなぜか探し物のネックレスを持っており…。
あとは察してほしい。
「でも、いくら頭に血が上ったからと言ってもあれはさすがにやり過ぎたと思う。どうしよう、絶対に怒らせた。怖い、灰崎怖いよ。どうしよう」
どうしよう、どうしよう。
いくら自問自答しても答えは出ない。
(喧嘩に勝ったまでは良かった。でも、勝った後のことは考えてなかったんだ)
私にはこういうところがある。後先考えずに行動してしまうところ。いつも、やった後に後悔する。失敗からじゃないと学べない。そんな不器用な自分がすごく嫌いだった。
(…どうしよう。誰か、)
しかし、赤司に相談するわけにはいかなかった。もちろん私をこっぴどく叱りつけた後は私のために最善を尽くそうとしてくれるだろう。しかし、それでは私が赤司の心労を増やしてしまうことになる。
それに今は大事な時期だ。最後の全中も迫っている。「気がついたら灰崎に馬乗りでした。てへ」という馬鹿の相手をさせるわけにはいかない。
しかしこのままではどうなる?遅かれ早かれ灰崎による私への報復が為されることは間違いないだろう。灰崎みたいなのはプライドが高く自分を貶めた相手を許さない。それに、赤司がよく愚痴をこぼすほど灰崎の日頃の行いは誉められたものではない。
突如、全身包帯だらけの私が現れたら赤司はどう思うだろうか。
ものすごく怒るに決まっている。なぜ事前に言わなかったのか、と。
というより、全身包帯だらけで済むのだろうか。灰崎という不良にストッパが存在するのかどうかさえも怪しい。
「あー…」
堂々巡りが続く。
赤司は私の隠し事を嫌う。でも、今はさすがに相談出来なかった。
「…青峰、ちょっといい?」
いつからか、
こういうとき、不思議と頼ってしまう人が出来た。
まあ、
(緑間は論外だ。最近の行動を見る限り何をしでかすか分からない。桃井は私のためを思って赤司に話してしまうだろうし、黄瀬は元から灰崎と折り合いがよくない。…青峰!)
という消去法があったことも確かだが。
(おまけ!)