左側の温度変化
朝は小ぶりだった雨が、昼になると威力を増して大雨に。雷もなりはじめ、隣の栄坂が「うおー」と喜んだ。そんな保健体育の時間。
予定されていた長距離が保健体育に変わった。栄坂は長距離が嫌いだから喜んでいたが、俺は座学より実技の方が得意なので少し不満だった。体育教師村中の話なんてちっとも耳に入ってきやしない。暇だから一番後ろの席の特権を利用して堀北マイちゃん写真集を眺めていると、隣の席の栄坂が面白そうに覗いてきたので、少し見せてやった。
なんちゅー巨乳だ
だろ?たまんねーよな
女子から見てもこれは素晴らしい。しかもプリケツ
わかってるじゃねーか
なんて筆談をする。生徒から恐れられている村中の授業中に私語をする馬鹿はいない。
はさまれたい?
たりめーだろ
変態。
うるせー
机の下で栄坂の足を軽く蹴った。栄坂がしししっと笑う。
青峰に質問。赤司は巨乳派ですか
しらねーよ
内緒で聞いといて
聞いてどうすんだ?
返答しだいでは私のプロポーションが変わることになる
お前じゃCが門の山
関の山だよアホ峰君
「ずいぶん楽しそうだな」
「!」
うわやっべ!!と思うと同時にパーン!!
(痛っ!!)
心地よい音が頭上で響いた。目の前に星が飛ぶ。村中に教科書で叩かれたと認識するまで少し時間がかかった。
「青峰、反省文五枚。そしてこれは没収」
(なっ…!!俺の掘北マイちゃんが!!)手を伸ばせど届かない。(くそっ!!)ていうか何で俺だけ?お前もだろ!と栄坂の方を向くとつーんと顔を背けられた。(ふざけんなよ!)
「ちなみに栄坂の方は放課後俺のところに来い」
と言われて隣の栄坂の雰囲気が一気にずーんと沈んだのが分かった。さすがに村中とマンツーマンはかわいそうだと思った。