恋するおとめ


「おはよっす、青峰」
「よっす」

朝一番、朝礼ぎりぎりに教室に入ってきた栄坂まな。俺の隣の席に座りながら「来る途中で雨降ってきて大変だったよー。こりゃ、長距離中止だな」なんて話しかけられた。俺が「ブラ透けてるぞ」と言うと「青峰は社会の窓開いてるぞ」と言われた。(まじかよ!)

「…開いてねーし!」
「あはは!嘘でした」

思わず確認した俺を見て栄坂は可笑しそうに笑った。濡れた前髪がおでこに張り付いている。(…あれ、かわいいかも?)いや、ない。こいつに限ってそれはない。

「そんな格好してると赤司が怒るだろ」
「もうさっき怒られたよ」

「でもタオル貸してもらったの!」なんて俺に自慢されても困る。「あーはいはい」なんて適当にいなすが、それでも栄坂は随分嬉しそうだった。

そんなこんなでチャイムが鳴って、担任が朝礼を始める。隣で栄坂が赤司のタオルを顔に近づけて、すうっと匂いを吸い込んだ。途端に、幸せそうに、今度はまるでとろけるようにふにゃっと笑う。

「きめえよ」
「君にどう思われようがどうでもいいね」
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