体育祭に!


「栄坂よくやったのだよ」
「この調子で次のクラス対抗も頼むぜ!」
「お前らこそ足引っ張んなよ」

冗談言うと叩かれた。(いったーい)



クラス対抗リレーは各クラス男女二人ずつ。三組からは私、緑間、南十字さん、青峰が出場する。ちなみに他クラスからは赤司や黄瀬も出る。女子がかなーり騒いでた。

「まなちゃん、一走よろしくね」
「え、私が一走?」
「実はあたし、青峰君のこと好きなんだ。だからバトン渡したいの。ね、お願い」
「あーそういうことか!任せてね!南十字さん!」

まさか青峰に恋する女の子がこの世にいるとは。びっくりである。少し不安はあるが、恋するおとめの願いを無碍にするほど私の性格は悪くないので快諾する。

「あれ、俺に渡すのってお前じゃねーの?」
「私は早く走って、アンカーの赤司をじっくりゆっくり見なければならないの」
「けっ(俺だってアンカーだよ)」

帝光中のクラス対抗リレーは、一走は100m、二走は300m、三走は200m、四走は400mを走らされる。だから、必然的に足が早い方が走順は遅くなる(女から始まり男女交互に走る)青峰は南十字さんがあまり速くないのを心配しているようだ。私も心配だが、本人が三走200mを走ると言っているのだから仕方がない。

四人で円陣を組んで気合いを入れる。「やるからには一位をとるのだよ」「おおー!」そして緑間に「栄坂、一番内側で待ってるのだよ」と言われた。(期待に応えなきゃ、ね!)


「位置について、」

「よーい」

「ドン!」

始まった。スタートダッシュとともに飛び出した。ぐんぐん差をつける。

難なく一位で緑間にバトンを渡した。スムーズなバトンパスが気持ち良かった。私と緑間はこういうときだけは息が合うんだ。

眼鏡の緑間もバスケ部レギュラーなだけあってなかなか足が速い。一位で南十字さんにバトンが渡る。二位との差はかなりある!南十字さん、逃げ切って!

「頑張れ〜!」

「…頑張れ!」

「……頑張れ」

「……頑張ってください」

南十字さんが頑張ってくれているのはすごく分かる。しかし、遅い。緑間が舌打ちした。(こら!)二位に抜かれ、三位にも抜かれていく。青峰も言葉をなくしているようだ。今にも「本気でやれ!」と怒鳴るんじゃないかと冷や冷やした。

なんとかバトンが渡った。現在三位。青峰は南十字さんに「気にすんな!任せろ!」と言って走り出す。

(…あらら、青峰にしてはなかなか良いこと言うじゃないの)

現在三組は三位。四位の七組も赤司にバトンが渡った。一位、二位との差は結構あるが、400mなのでまだ勝負は分からない。

「赤司頑張れ!」と声を大にして張り上げたいのは山々だが、気づけば私の隣に、緑間、南十字さんと三組メンバーが集合していたので出来なかった。しかも南十字さん半泣き。

「青峰頑張れ〜…」

(ここだけの話、私の目は赤司のみに釘付けである)

だけど、目の端に映る青峰もなかなか速い。二位を抜いた。沸き上がる歓声。それに赤司もついて行く。(やば、超かっこいい)現在のトップは四組の黄瀬だ。青峰が並んだ。赤司も並ぶ。三つ巴の状態に入った。ゴール目前、一位で入るのは、

「…赤司」

呟いた瞬間、私の予想通り赤司がテープを切った。
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