体育祭いち!


ついに待ちに待った体育祭です!

「ヒョエエエ」

テンション上がって変な声出ました!赤司が隣で吹き出しました!



ですが、午後にもなりますと。

「………」
「テンション低!朝あんなに盛り上がってたっスよね?!」

聞いてくれよ黄瀬君。

「私、借り物競争とクラス対抗リレーと総合リレーらしいんだよ…どうしてくれる」
「らしいんだよって自分の出る競技くらい事前に把握しとくのだよ」
「まなっち足速いから別にいいじゃないスか」
「問題は赤司ウォッチングの予定が狂ったことです」
「ああ、そういうこと」

クラス対抗リレーと総合リレーには赤司も出る。私は応援席からゆっくり見たかった。だから玉入れと綱引きを勝ち取ったはずだったのに。

「何が"ごめーん栄坂さん足速いならうちらとリレー変わってくれない?"だ。そんなん言われたら断れないじゃないか」
「まなっち…」

「なんだかんだ良い子っスよね」と、頭をよしよしされた。(やーめーろー)周りの女子からの視線が痛い。黄瀬はただのじゃれ合いのつもりだろうが、その軽さがたまに苦手である。

「…とりあえず借り物競争頑張るわ。緑間、応援よろしく」
「俺もまなっちの応援してあげるっスよ」
「恨まれるからいいです」



スタートラインにたつ。私の右隣には桃井がいる。赤司のいる二年七組に属す桃井が羨ましい。羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい。赤司の声援を受けられる二年七組女子が妬ましい。妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい。左隣は黄瀬のクラス、四組の女の子。名前は知らない。もはやどうでもいい。

「おーい栄坂、頑張れよー」
「一位じゃなきゃ許さないのだよ」

青峰と緑間だ。(体育祭如きではしゃぐ脳筋たちめ)青峰がボルトのポーズをとる。(恥ずかしいやつだ)

無視してお題の乗せられている机を見た。なんとゼッケンをつけた赤司がいた。ものすごく楽しそうな目で私を見ていた。

途端、フラッシュバックする記憶。

刧刧刧刧刧刧
「まな、借り物競争の係になったんだ。一緒にお題を考えてくれないか」
「いいよー、何にする?」
刧刧刧刧刧刧

そうだ。私は少しでも体育祭が盛り上がればいいと思って。自分は出場しないからどうでもいいと思って(こっちが本音)。赤司ときゃいきゃいしながら[ザ・借り物競争〜ハードモード〜]のお題を作り上げたのだった。

思い出したのは、村中の靴下(村中は靴下を履かない主義)教頭の地毛(カツラ部分は不可)校長の入れ歯(ある意味これが一番楽)…エトセトラ。

「(ヒ、ヒョエエエ)」

声にならない声を上げ、心の中で緑間青峰に土下座付きの謝罪をした瞬間、ピストルが鳴った。

「(イヤアアア!)」

身体が反射的に走り出した。100m地点に達し、恐れながらもお題を引く私。それを見て、赤司は声を出して笑った(こうなること知ってたの?!)

(靴下か髪の毛かそれとも入れ歯?!)


[好きな人]


「へ、」

思わず赤司を見た。隣で桃井が「入れ歯?!」と叫んだ。無言で差し出された手。すぐにそれを引いて、私はゴールへと走り出した。
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